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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼15 長尾和宏・長尾クリニック院長(1)


長尾
「まさにそれに象徴される、行政の指示って後手後手になるんですよね。こんなの待ってたら現場では手遅れになるんで、やはり自分である程度動かないとダメだなと強く思ったんですね。今回のインフルエンザの時もそうで、ハッキリ言って分からないことだらけで、自分たちで考えて情報を集約してやっていくし、やはり地域地域で違うわけです。たとえば尼崎市と西宮市と神戸市で全く考え方もやり方も違う」

村重
「当然ですね」

長尾
「しょうがないと思うんですよ。先生のおっしゃるように現場に任すというのが非常に大事なことで、具体的にはやっはり医師会だと思うんですね。医師会というのは開業医だけじゃなくて勤務医も入っていて、やっぱり日本医師会となると難しいけど、郡市地区医師会となると本当に機能していたんで、そこを何というかな、機能を最大限に生かして、政治で言うと地方分権みたいになるんでしょうか、そうするべきかなあと改めて思って、そんな中で国の役割って何やろうって考えたら、僕は診療報酬規則をもっとシンプルにしてほしい。というのは僕らは毎日、朝から晩まで診療報酬の規則に振り回されて医療ができないでいる、早く言えばね。たとえば何でもいいですけど、CKDが大事だということになります、じゃあ尿の沈渣でも測ろうかと思うとダメですと言われる、レセプト病名はダメだとか近畿厚生局から言われて、そう言うように国の強い指導が入ってますね。もうまともな医療をできなくなっているという感がありまして、もう少し医者を信頼してほしいなあと。今は医者は悪だと思われている、問題のある医者がいるのも事実だとは思いますがそこは医師会がもう少し自律を発揮するように変わって行かないといけない。だから医師会と厚生労働省がもう少し手を組むべきじゃないか、と本当は思うんです。でも実際には何の連絡もないでしょう。たとえば先生自身が、医師会がどういうようなものかご存じでしょうか」

村重
「私が知る限りのイメージでは、昔は日本医師会が割と機能していて、医系技官がこういう政策をしようと思いますと、オープンにする前に日本医師会には持って行くわけですよね、そこで日本医師会がきちんと見て判断してこんなんじゃダメだと直したりノーと言える存在だった時代があるんだろうと思うんです。でも今は現場も知らない専門性もよく分からない医系技官が、あるいはたとえどんなに専門性があったとしても全国一律のルールを決めるというのは、たぶん誰がやってもうまくいかないと思うんですよね、そんなルールをどんどん細かくしていく現在の方針というのは、誰がやっても国民は不幸になると思うんです。そういう案を日本医師会に持って行ってもきちんと読んでない理解してないノーと言えない、そのままザルのように呑みこんでしまって、そのまま実現してしまうというようなのが、今のイメージです」

長尾
「基本的に日本の医療の場合、国民皆保険制度になってるんで、診療報酬ということになりますね。で規則でがんじがらめになって閉塞感があって、思うように診療できないという声が上がっていて、やはり規則とたとえば学会のガイドラインが食い違っていて、ガイドライン通りにやると極端なことを言うとみんな捕まっちゃうわけですね。たとえば尿のアルブミン測りましょうとか病院ではやりますよね、でも開業医でやったら、すぐ呼び出し喰らったり警告喰らったりします。そういうところを、国と医師会と学会でうまく調節する機能を持たないと、バラバラにやっている印象があるんです」

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