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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼15 長尾和宏・長尾クリニック院長(1)


長尾
「この現場との乖離が、僕らには一番不思議というかね、お上の雲の上の上の上で何か決められていて、それに振り回されていると。それが一番はっきりしたのはインフルエンザでもあるし、診療報酬体系でもあるし、結局大きな枠組みが見えない中で本当に振り回されているという表現が本当にピッタリで、一体どうなっているのか本当に顔が見えない。先生がそう思われたのも分かる気はするけど、厚労省も大臣とか三役とか政治家が全部分かっているわけじゃないし、本当に難しいですね。医療も縦割りだったりして、連携連携と言われるけど、厚労省の中でも連携はなくて、省の改革とかすごい大変なことだと思うんですけどね。ですが、やはり厚労省が変われば日本の医療が変わるし」

村重
「厚労省が介入しないのが一番よくなる方法だと思います」

長尾
「現場のことは現場に任せる」

村重
「医療ではお金を完全に資本主義経済にはしないという国民のコンセンサスがあるなら、お金の配分の面では国の介入はゼロにはならないと思うんですけど、でも医療の中身まで、患者さんの治療方針とか選択肢とかまで国が介入するのはおかしいし、壊すばかりですよね。国民が不幸になるばかりだと思うんです。すみません私ばかり喋って、先生のお話になりたいことを伺いたいと思っているんですけど」

長尾
「僕の話したいことはいっぱいあって、結局ね僕らにとっては、阪神大震災があって、新型インフルエンザがあって、突発的な未曾有の事態が2回あったわけです。阪神大震災の時に、僕は芦屋病院という所にいたんですけど、ヒドイ状態になって誰も助けてくれない。チリで穴の中に取り残された人たちがいましたけれど、あんな気分で、どうなっていくんだろう、このまま死んじゃうのかなという、そのぐらいの気分でやっていた時に、電話も通じない時に、どこかでテレビを見たら相撲をやってまして、こんなに人が大変な時に相撲をやってるわーというのがあったんです。それと、一番おかしかったのは一週間目にヘリコプターが飛んだんですけど、裏に警察学校があって、それまでにヘリコプターを飛ばしてくれたらどれだけの人を助けられたかという状況で、実際に全部トリアージが終わって、トリアージという言葉は当時なかったけれど、全部終わって搬送も終わった時にヘリコプターを飛ばすぞ、自衛隊の出動がOKだということになって、その時に搬送患者がちょうどゼロになった時だったわけね、それで格好つかないから誰でもいいから乗れという指令が上から出て、用事もないのに、僕じゃないけど、乗ってたわけですよ」

村重
「それが現場から見た事実ですね」

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