がん治療の救世主となるか、「ホウ素中性子捕捉療法」
■ 「ホウ素を集積したがん細胞だけ死滅」 ─ 伊丹科長
[伊丹純・国立がん研究センター中央病院放射線治療科科長]
(スライドの)ポンチ絵をご覧ください。中性子が出てきて、ホウ素がない所だと通り抜けちゃうんですね。それに対して、ホウ素が非常に集積されているがん細胞だけ核反応が起こって死んでいくということです。
通常、がんというのは塊で見えますけれども、その周りは正常な細胞とがん細胞が入り混ざっていることがほとんどです。普通の放射線治療ではそれを区別することはできませんから、正常な細胞も全部死んじゃうわけです。そうするとそれが放射線の副作用につながります。
それに対して、この「ホウ素中性子捕捉療法」では、ホウ素を集積したがん細胞だけを死滅させるので、究極的な選択ができるわけです。ですから、がんに対する選択的な治療法であることが大きな特長です。
そこで、「どの腫瘍がホウ素を取り込むの?」ということが非常に重要になってきます。
「ホウ素中性子捕捉療法」は非常に長い歴史があります。では、どうして今までやらなかったのかと言うと、まず原子炉という欠点があったこと。それとともに、「どの腫瘍がホウ素を集積するか」ということが分からなかったわけです。
ところが、ここにいらっしゃる(CICS社長の)今堀先生が最初に発表なさったデータですけれども......。
▼ 今堀社長の経歴はこちら。「ホウ素中性子捕捉療法」の歴史については、こちらを参照。
ホウ素の化合物に「F-18」......。「FBPA-PET」の短半減期の放射性核種をくっつけて、これを患者さんに投与すると、ホウ素化合物が脳腫瘍に入っているのが分かる。そうすると、こういう人はまさに「ホウ素中性子捕捉療法」でうまく治療できる。
これ(スライド)は京大の原子炉実験所で行ったデータですが......。脳腫瘍でこのような効果があるということは普通の放射線治療ではまず無理で、まさに劇的な効果だと思います。
劇的効果の背景は、ホウ素が集積することを定量的に測れたからです。ということで、「ホウ素中性子捕捉療法」にPETは不可欠な検査であります。
【目次】
P2 → 「標準的医療ではなく先進医療をやる」 ─ 嘉山理事長
P3 → 「世界初、日本初をがんの領域で行う」 ─ 嘉山理事長
P4 → 「病院設置型、加速器、BNCTで世界初」 ─ 伊丹科長
P5 → 「ホウ素を集積したがん細胞だけ死滅」 ─ 伊丹科長
P6 → 「病院設置型加速器の最先端として確立したい」 ─ 伊丹科長
P7 → 「我が国初の技術として世界の市場に」 ─ 伊丹科長
P8 → 「対象はホウ素が集積する悪性腫瘍」 ─ 伊丹科長
P9 → 「国立がん研究センター以外ではできない」 ─ 伊丹科長
P10 → 「バラバラを横つなぎにした第一歩の研究成果」 ─ 嘉山理事長
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