イレッサ和解勧告で、国立がん研究センターが緊急会見
■ 「医療、医学、自然科学が成り立たなくなる」 ─ 嘉山理事長
[嘉山孝正・国立がん研究センター理事長]
(資料)6ページを見てください。(現行の医薬品副作用被害)救済制度が書いてあります。(図の)右上に(厚労省の)「薬事・食品衛生審議会」というのがあります。
ここに「副作用部会」というのがあります。私も、教授になったばかりのころに3年間......、このお薬で「受認」かどうか、つまり、誰が悪いわけでもなくて、どんなお薬でも、ある確率で副作用が起きますので、「受認」に価することが絶対に起きるんですね。
私はこの部会に出ていましたので、日本国中から誰が悪いわけでもないお薬の副作用で亡くなったり、障害が出た方々に......(被害救済を)認めるよ、ということをやっておりましたが......。
がんが入っていなかったんですね。やはり、(医薬品副作用被害救済制度に)がんを入れる制度をつくるべきだ。
最近では、(脳性まひの)赤ちゃんが生まれた場合の給付制度がありますが、あのような制度をつくればですね、今度のような患者さんを救えるのに、今度のような裁判所の判断をされてしまいますと、医療界が......。
世界で日本だけが唯一、このようなことで裁判所がこのような判断をする。副作用まで誰かのせいにすることになるので、非常に危惧しています。世界からまた、文化程度が低いということで笑われてしまうのではないかと考えています。
(資料)4ページにですね、薬害エイズとイレッサの相違が出ています。これはもう、「リスク」ですね。今回(のイレッサ)が薬害ではないということの証明は、「リスク」という項目に......。
イレッサの場合には、「明記した副作用」なんですよ。当然、受認というか、分かっている。起きる確率はあるよ、ということで、がんセンターの説明文書......。
(職員に)がんセンターの説明文書も回してください。
この薬が販売されたのは平成14年ですが、がんセンターでそのころから使っている説明文書......。これにも患者さんへのインフォームド・コンセントとして間質性肺炎のことは書いてあって......。
「こういうことが起きる可能性がありますがいかがですか」ということはもちろん、患者さんに説明責任を果たしていました。従いまして、薬害エイズではHIV混入による感染リスクの隠蔽があったわけですが、今度はそういうことではなくて、明らかに分かっている副作用のことなんです。
従いまして、いわゆる人為的な薬害ではありません。ということで、私どもは今回のことに関して......。
裁判所が和解勧告をしましたが、国がどういう反応を取るか私どもには分かりませんが、医学者として、あるいは医療人として、これを原理的に見てみると、医療、医学が、自然科学が成り立たなくなるということで非常に危惧したので、今日、見解を発表させていただきました。
[加藤雅志・国立がん研究センター広報室室長]
では患者さんの立場から、よろしくお願いいたします。
【目次】
P2 → 国立がん研究センターの見解
P3 → 薬剤性急性肺障害・間質性肺炎について
P4 → 「副作用を誰かの責任、医療が成り立たない」 ─ 嘉山理事長
P5 → 「裁判所の判断は自然界を全く理解していない」 ─ 嘉山理事長
P6 → 「医療、医学、自然科学が成り立たなくなる」 ─ 嘉山理事長
P7 → 「私たちは決して対立軸ではない」 ─ 片木代表
P8 → 「リスクと利益を知った上で患者は闘っている」 ─ 天野理事長
P9 → 「いかに国民が納得する制度をつくるか」 ─ 嘉山理事長