イレッサ和解勧告で、国立がん研究センターが緊急会見
■ 「いかに国民が納得する制度をつくるか」 ─ 嘉山理事長
[嘉山孝正・国立がん研究センター理事長]
片木さんと天野さんは、新しい治療、特にドラッグ・ラグのことでご努力されています。本当に尊敬申し上げます。
我々としては、なるべく安全な医療を考えておりますので、ただ単に受認しろという意味ではなくて、やはり救済制度を国民的レベルできちんと冷静に議論する時期に来たんだと思います。
ですから、何か結果が悪いとそれを誰かのせいにするのではなくて、国民の合意の下で補償制度をつくることを私は提案したいと思います。
今回の裁判所の判断というのは、国のどこそこが悪いとか......。ちょっと細かいことは(和解勧告書が)手に入っていないので分かりませんが......。
(資料)5ページ(イレッサの承認時からの安全対策)に書いてあります。承認時からの安全対策はですね、特別、誰かが、どこかの組織が間違いを犯したお薬の1つということではありません。
片木さんも天野さんもおっしゃったように、「夢のようなお薬だ」ということをメディアもですね、報道しすぎたということもあるのかなと......。
私自身は脳腫瘍の専門家ですので、この薬は使いませんけれども、確かに効果があることは事実なんですが、副作用もきちんと述べていますので......。その反動で、風が吹いて......。
ですから、この場では科学的に、今後の医療をですね、この辺でそろそろ......。
今、片木さんが「対立軸(ではない)」っておっしゃいましたけれども、対立軸ではなくて、患者側も医療側も、あるいは病気ではない一般市民も国民も共にですね、この国で医療をつくっていくんだと、健全な......。
そういう時期になっているし、その1つの提案としてやはり国民がみんなで議論して、救済をどうするのかと。これは難しい問題ですよね。
例えば、100万人に1人、どんな薬でもアナフィラキシーショックを起こします。そうすると、その薬で治る99万9999人を犠牲にしていいのか。でも、その亡くなった方はやっぱり大変な命を失っているので、そういう人たちをどうするのか......。
という議論が今まできちんとされてきていません、この国は。そして曖昧に、ずーっとこの国は過ごしてきて、対立をつくって、そこですごくステレオタイプな、シンプルな考え方で乗り切ろうとしてきたんですが、もはやそういう時代ではない。
お薬もこれからいろんな遺伝子のターゲットを狙わなければいけない。複雑な時代になります。治療法もですね。そういう中で、結果的に受認の患者さんが出ますので、受認の患者さんをどうやって救済するかという制度を......。
「いかに国民が納得する制度をつくるか」という方が私は建設的であると思うし、今度のような勧告案は非常に......、私としては投げやりというか、先送りして問題を曖昧にしてきちんと整理されていない勧告案だと考えています。
[加藤雅志・国立がん研究センター広報室室長]
ありがとうございました。(以下略)
【目次】
P2 → 国立がん研究センターの見解
P3 → 薬剤性急性肺障害・間質性肺炎について
P4 → 「副作用を誰かの責任、医療が成り立たない」 ─ 嘉山理事長
P5 → 「裁判所の判断は自然界を全く理解していない」 ─ 嘉山理事長
P6 → 「医療、医学、自然科学が成り立たなくなる」 ─ 嘉山理事長
P7 → 「私たちは決して対立軸ではない」 ─ 片木代表
P8 → 「リスクと利益を知った上で患者は闘っている」 ─ 天野理事長
P9 → 「いかに国民が納得する制度をつくるか」 ─ 嘉山理事長