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ニュース〜医療の今がわかる

医師の不足数は2.4万人? 5.2万人? 12.5万人?

■ 「シンプルに計算すると12.5万人不足」 ─ 本田副院長
 

[本田宏・済生会栗橋病院副院長]
 皆さん、こんにちは。恐らく今日のような機会は......、私にとって最初で最後の機会になるんじゃないかという気合を入れてまいりました。

 私のような一勤務医がこのような場所で、入ってくるのも大変でしたが、いくつか関門がありまして......。話をさせていただく機会は二度とないことだと思いまして、努めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 私は32年ぐらい外科医をやっておりまして、最近の22年間は一箇所の病院で、地方の外科医として働いております。今でも患者さんを診察して若手も指導しておりますので、そういう一勤務医の心からの叫びということで聴いていただければありがたいと思います。(中略)

 まず私はこの10年間、なぜ日本は医師不足で医療が崩壊してしまったかを考えてまいりました。やっと、だんだん分かりました。

 日本の国には「社会保障基本法」、つまり憲法25条を守る基本法もないし、患者の権利基本法がないんですね。イコール、グランドデザインがないんです。

 グランドデザインがないんだから、医師をどれだけ増やすとか、どれぐらいの医療・福祉体制を取るかを決めようとしても、決めようがないんですよ。枠がないんですから。

 そして、その次に問題なのは、甘い情報分析、遅い基本方針転換。そして、我々医療関係者に「患者の権利」を守る精神が不足していると思います。私から見れば、これ程......。

 昨日、実は埼玉で勤務医部会があったんです。埼玉の三次救急病院が患者さんを受け入れない。救急車から電話が来た。心肺停止の人が50分、現場で待っていると言うんですよ。これが日本ですよ。日本です。50分間、心肺停止の人を待たせているのが日本。

 ところが、医療関係者の責任者の人たちが「医者をあんまし増やす必要はないんじゃないの?」とか、「余っちゃうんじゃないの?」とか......。

 何を考えてんだよ、と私は思うんですけれども......。そういうことを言っていると、国民からそっぽを向かれるんじゃないかというのが私は本当に心配でございます。 

 そして、甘い情報分析、遅い基本方針転換というのは明治維新からずっとつながっているんですね。(中略)

 皆さんご存知のように、日本の医師数は1960年ごろはまだ世界と比べてそんなに差がありませんでした。OECDの平均をご覧ください。(医師数が)どんどん増えています。そして細かいことは時間の関係で省略しますが、「一県一医大」で、とりあえず医師を増やそうという時代がありました。

 ところが、日本の特徴は初めに方針を決めちゃうんですね。「人口10万当たりの医師数は150人でいいんじゃない?」って。世界がどんどん増やしているのに150人が目標で......、決まったらもう減らそうってなるんですよ。

 よくご覧ください。最近もいろんな団体が「15年したら追い付く」って......。世界は増えてますよ。大丈夫なんですか? 医療がどんどん進歩すると、もっと増やすんですよ。それを大きな団体の人が真面目に「15年したら今のレベルに追い付く」って、だいじょぶ? っていう感じでございます。

 医療が複雑になれば医者が必要なんです。(中略)医療の質の進歩を考えないで医師の数だけ、頭数だけ考えるのは本当にセンスがないですね。(中略)

 皆さんご存知のように、日本の人口当たり医師数は63位ですよ。経済大国日本で人口当たり医師数が63位なのに、世界に比べ(今後)どうするんだ?

 じゃ、日本はグローバルの社会で生きていかないの? こういう話でございます。困ったもんですね。これが日本です。(中略)

 皆さんご存知のように、日本の人口当たり医師数はOECDの平均以下でございます。ビリから3番目。「OECDと比べるんじゃない!」って怒る方もいらっしゃるんですけれども、シンプルに計算すると12.5万人不足です。

 ところが、この間の厚生労働省調査では2.4万人不足でした。あれを見た時は私はショックでした。しばらく立ち直れませんでした。ここまでせっかく頑張って10万人不足ってなったのに、2.4万人不足ですよ。(中略)

 2年に1回、保健所に出す調査、これもビックリなんですよ。この調査は私も書いているんですが、「週の労働時間」とか、「常勤か非常勤か」、「当直しているか」とか、一切きいていませんから......。だから、実働数の把握は無理です。

 例えば、週の実働時間の確認がないですので、 週に半日(4時間)だけ外来をやっていても、これに書けば一人前になるんですよ。こういう調査でいいんですか?(中略)

 アメリカは医師数をフルタイム勤務の医師1人で数えています。実働数。だから、週に半日しか働いていない医師は1人として数えません。

 あの......。寝たきりになった人も入っていません。亡くなった人も入っていません。場合によってはそういう人も入っていたら......。あまりいろんなことを言うと......、ちょっとこの場ではマズイですから遠慮しておきますけれども......。

 (医師数に)高齢者が入っていることの証明でございます。病院勤務医、大学勤務医、開業の先生......。皆さん見てください、これ。90歳の人も入ってるでしょ。

 あの有名な先生も入ってるでしょ。(委員ら、笑い) 誰とは私は一切言っておりませんので、ご想像にお任せします。

 65歳以上の人まで入っているんですよ。他の国はこういう高齢者は入っていないんですよ。全部ぶっこんでおいて、「多くて将来余る」っていうのは、あまりにも国民の命軽視ではないですか? と私は思っています。

 ちなみにこの図から大体で計算しますと、27.2万人の医師数が......。65歳以上が4万人いますから、実働数は23.2万人しかいません。(中略)

 ちなみに、「医師が多い」「少ない」って言いますけれど、専門医がポイントです。(中略)日本の場合には救急があまりにも少ない。(中略)救急の非専門医が全国で救急を担当しているんです。地方では俗に言う「マイナー」という、ほとんど全身を診ない先生も救急をしているんですよ。(中略)

 麻酔科医不足の現状です。皆さんご存知のように当時のデータでは、院内に麻酔科医が常勤しているのは3~4割です。(中略)

 がん専門医の比較です。日本で「がん対策基本法」という法律を作りました。ところが、皆さんご存知のように、がん専門医がおりません。腫瘍内科医もおりません。放射線腫瘍医もおりません。(中略)

 がん関連の専門医の数だけで8万3000人足りないですから......。先ほどの厚労省調査では2万4000人ですから......。もうめまいがしてきます。これが日本の実態でございます。(中略)

 システムを整えないと強くならないんですよ、いくら素質が良くても。(中略)能力もあってやる気もある。世界で一番働いてるんだから。ところが、システムが悪すぎるのね。そして最後は「医療事故だ」なんて、「逮捕しろ」とか言われちゃったりして......。

 まずくないですか、これ? それで医療イノベーションって何? って質問してみたいですよ、私は。

 なんで医療イノベーションするの? 現場に余裕がないのに、普通の医療をやる余裕もないのに......って、そういう感じでございます。教育、研究、臨床の充実のためにはマンパワー充実が必須、急務でございます。(中略)

 外国には、医師、看護師以外に医療秘書さん、NP、PAがこんなに一杯いるんですね。静脈ラインを確保する人、患者さんを運ぶ人......。(中略)

 だから、医師を増やすだけじゃなくて、こういう人もガツーン!と増やせば......。それでなくても、大学生が就職できないんだから病院に就職してはどうでしょうか? 病院じゃマズイんですか? そういう話でございます。(中略)

 日本の場合は多くの職種がないですから、1人の外科医が......。(中略)例えば、手術をする前の検査をして、手術をして、極端に言えば病理も診て、抗がん剤の治療も当たり前。(中略)1人の医者がやってるんですよ。過重労働で、こういうのを1人でやって質が上がるわけがない。(中略)

 世界最高の高齢化で病院で亡くなる人が増えている。つまり、病院で亡くなるということは、主治医がその方を看取るということがよくあるんですね。ですから、昔は開業医の先生が看取っていたのに、今は勤務医が看取っているんですよ。そこまでやってるんです、夜中でも。呼ばれて......。これが日本の現状でございます。(中略)

 確かに相対的には余っている部分もあるんだと思います。ただ、外科というか、手術、麻酔、緩和ケア、腫瘍内科、そういう人が決定的に不足している。1人で何役もやっているんですね。

 ですから、決定的に不足しているところをちゃんと暴いてそこに補填する。地域ごとに補填する。これをやらなければ、頭数を決めても何にもなりませんね......というのが私の持論でございます。(中略)

 お医者さんで、「医者を増やす」と言うと恐れる人もいるんですね。私も30年目、「医者を一杯増やすと、イタリアで運転手をやっているぞ」って言われました。

 最近は、「歯科医が過剰だ」って言われます。「過剰なんだぞ、本田先生」って言われます。でも皆さん、歯科医とか弁護士の先生は夜働いていないですよ。別の労働をしている人を比較して、余るからやめろと言うのはおかちくない? あ、すいません、おかしいでしょ? 

 ここは冷静に考えないと......ということを訴えて終わりたいと思います。正確なデータを出して......。ぜひ、グランドデザインをつくって回復する。

 すみません、このような貴重な機会を頂きましたのに、いつもの調子が出てしまってプレゼンをしたことを最後に反省申し上げまして、私のプレゼンを終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

 (委員、傍聴者から拍手)

[安西祐一郎座長(慶應義塾学事顧問)]
 ありがとうございました。

 
【目次】
 P2 → 「要望の資料は引き続き努力させていただく」 ─ 文科省
 P3 → 「勤務時間に注目すると5.2万人足りない」 ─ 堺院長
 P4 → 「シンプルに計算すると12.5万人不足」 ─ 本田副院長
 P5 → 「医師需給は数の議論だけではない」 ─ 長谷川教授
 P6 → 「この国が医療費を100兆円使うのは難しい」 ─ 西村委員
 P7 → 「経済学者や私でなく国民が決めること」 ─ 本田副院長
 P8 → 「資料を提出させていただきました」 ─ 日医副会長


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