村重直子の眼17 小田知宏・発達わんぱく会理事長(下)
小田
「本当に子育てって大変だと思っていて、自分も子育てしていて、ただでさえ大変な子育ての大変な部分が、発達障害の子ってより大きいんです。そうは言っても子育てに楽しいところもいっぱいありますけど、そこが発達障害の子は少ないと思っていて、やはり子育ての大変なところ夜泣きが激しいとか偏食とか外で泣き叫ぶとかいうどこにでもある大変なところが、発達障害の場合はより頻度が高く程度が激しかったりします。子育てのいい所、親の眼を見て笑ってくれたりとか、すごく泣いてても抱いたら安心して泣きやんですやすや寝てくれたりとか、そういう子育ての楽しいところが発達障害の子って苦手だったりするんで、子育ての大変な所が多くて楽しい所が少ない。
子どもの発達にとって、それってマイナスだと思います。、子どもが他人の存在を認識して、そこから自分というものを見つけていく過程が発達段階の一番最初にあるんですが、一番最初の他人は母親なんです。一番身近な母親との信頼関係、お母さんの近くに行くと安心するとかなでなでされるとかいう所から、自分に快をもたらしてくれる存在としての他人がいるんだなというのを認識して、そこからお父さんみたいな人がいるんだとか先生とか、どんどん大人が広がって、大人との信頼関係があるから、子どもなりに何か自分の要求を伝えていくとか、自分が嬉しかったら喜びを共有しようとしたりとか、大人の食べているものを食べたいとかマネしたいとか、それが発達の基礎なんです。それがないと発達できないのに、発達障害のお母さんで子育てが大変だと、母子の信頼関係も薄くなりがちで、そこが薄くなっちゃうと、子どもにとって頼れるものが何もないことになります。学ぶ最初のきっかけがすべて失われてしまう。
子育て支援というのは、子どもの発達にとって極めて重要。我々は、子どもの発達の権利を守るために、お母さんの子育てを少しでも楽にできるようにしたいし、心から子どもをかわいいと思えるようにしてあげたい。大変な子育てを少しでも楽にしてあげたい、それが子どものためにもなる」
村重
「子どもの療育と同時にお母さんも助けるんですね」
小田
「そうです。目的は子どもの療育で、その手段として、お母さんを助けてあげる。どんなに先生が頑張っても、お母さんと信頼関係がないのに、先生と信頼関係なんてできるはずがないし、信頼してない人から学ぼうなんてのもあり得ないんで。そのためにもお母さんが、この教室に来ている間はホっとできるような環境を作りたいなと思っています」
(この記事へのコメントこちら)