「調整係数」は全廃されない? ─ DPC見直し、再び迷路へ
2月9日正午過ぎ、厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館の1階ロビー。
こんな大行列は1年ぶりだろうか。中医協・DPC評価分科会の傍聴を希望する人たちの列が2階まで伸びていた。最近、ガラガラで人気がなかった会議なのに、なぜだろう。
それはきっと、前回1月13日に厚生労働省が示した大胆な改革案「医療機関群A・B・C」だろう。全国に乱立するDPC病院を「優等生」「落ちこぼれ」などに再編して、一般病床をバッサリ削減する。自公政権下の「社会保障国民会議」で示された改革シナリオB3に向けてついに走り始めたか、と業界関係者ならきっと思ったことだろう。
思えば、これまでのDPC分科会は退屈きわまりないものだった。中医協の調査専門組織という宿命かもしれないが、難解な用語が多く、業界記者でも頭を抱える議論。実は委員もよく分かっていないんじゃないの? と思うような意味不明な会議だった。
次第に"客足"は遠のき、遅刻しても安心......のはずだったが、この日は違った。「薬価専門部会」並みの注目度である。
ところが、傍聴者の期待を裏切るかのように「医療機関群」の議論はなかった。しかも、この日の分科会で厚労省が示した図は前回から一歩後退(?)したかに見えるものだった。
これまでの厚労省の説明では、「調整係数」を1つひとつの項目で「機能評価係数Ⅱ」に置き換えるのは難しいのでこれを半ば断念し、その代わりに「基礎係数」でドカーンとやってしまおう、「調整係数」は完全に廃止してしまおう、と思わせるような提案だった......と私は理解していたが、今回は違っていた。
前回の図では、「調整係数」から真っ直ぐ「基礎係数」に向かって伸びていた矢印が、なぜか今回は2本になっている。そのうちの1本は、なんと「機能評価係数Ⅱ」に向いているではないか......。
分科会終了後のブリーフィング(記者説明会)で、厚労省保険局医療課の丸山慧主査は記者らにこう釈明した。
「前回(1月13日のブリーフィング)、すみませんでした。僕の言い方が悪かったらしくて、『平成24年から調整係数全廃』みたいな記事がバーッと出てしまって、大目玉を食らったんですが......。自戒の念も込めて、(資料に)『制度移行する場合の経過措置(激変緩和)については別途検討を行う』と書いていますので、その点、誤解のないようにお願いします。実はあの後、医療機関から『いきなりなくなるんですか......』と問い合わせがあって......。そういうつもりは全くないですので心配しないでください」
うーん......。これまでの説明となんかニュアンスが違う。「調整係数」を一気に廃止して「医療機関群」でバッサリ格差を付けるという改革案は、やはり病院関係者らの反発を招いたのだろうか。丸山主査の説明に対し、業界記者が尋ねた。
「そうすると、『調整係数』が段階的に『基礎係数』に切り替わるんですか?」
丸山主査は苦笑いしながら、「それも含めてどうしようかと......」と歯切れの悪い回答。記者は「ますます分からない」とつぶやいたが、私も分からない。それなら、当初の予定通り「暫定調整係数」と言えばいいではないか。厚労省もちょっと迷っているところだろうか。
この日は、久しぶりに聴く「機能評価係数」の意見交換が中心だったが、「二重評価にならないか」「地域医療への貢献をどう評価するか」「出来高病院よりもDPC病院を優遇するのか」など、10年度改定前と同様の議論が繰り返された。DPCの見直しは再び迷路にはまり込んだように見える。
2ページ以下では、厚労省の説明部分を紹介する。
【目次】
P2 → 「事実確認をさせていただく紙でございます」 ─ 厚労省
P3 → 「調整係数と同じニュアンスに聞こえる」 ─ 三上委員
P4 → 「同じ文字でもとらえている概念が違う」 ─ 厚労省
P5 → 「現時点では白紙と理解しております」 ─ 厚労省
P6 → 「機能評価係数Ⅰ・Ⅱ.を再整理する」 ─ 厚労省