自治体病院より見た医師不足の要因と対策
■ 医学奨学金全額返還の時期、理由等
【長崎県病院企業団企業長】
次の10ページをお開きください。ここにお示ししていますのは、五島医療圏、新上五島医療圏、対馬医療圏の3つをあわせています。
ここに現在、病院企業団として94名の医師を配置していますけれど、そのうちの40名が、いわゆる地域枠と言われるような長崎県の奨学金をもらっている方と自治医大の方が、この40名のうち43%でございます。
上五島医療圏では70%の方々が、それから対馬医療圏では57%の医師が、そういう県独自の、あるいは自治医大の奨学生で占めているわけでございます。
ここで見られますように、ここは専門医とは書いてございません。専門医をとっているわけではございませんで、いわゆる標榜医、自分は外科だ、内科だと言っている標榜医がちゃんと充足されてきそうなのは、内科、外科、整形外科、小児科まででございまして、その他の専門になりますと、どうしても大学その他の派遣が必要ということになってきます。
それから、問題は、やはり県の奨学生が奨学金を返して義務年限を回避するという問題でございます。下の表にございますように、150名の長崎県奨学生の中で64名が全額返還ということをしているわけでございます。これが40年の集積でございます。
それから、自治医大生は96名中7名でございますから、自治医大生と、県独自の養成医では、自ずからモチベーションの差が違ってきているというところでございます。
11ページをお開きください。11ページの上段に示しています。では、全額返還の理由が何かということでございます。
返還率を見ましても、医学修学生の場合はトータルで42.7%の返還と、自治医大が7.3%の返還ということになっているわけでございます。
したがいまして、こういう返還率の最大の理由は、下に書いてありますように、専門医志向が途中で強くなりまして、この奨学金で決められた地域に行かれると専門医が取れないということで、大学その他に帰りたいというようなことが出てくるのが、この一番の理由でございまして、それから成績不良、医師免許が取れなかったというのが出てくるわけでございます。
その辺、自治医大では一つのモチベーションで、これを在学中の団結意識の中でやっていきますからいいのですけれども、一般大学の中での地域枠、奨学生になりますと、どうしても仲間内の中でこうしようとか、医局からの呼びかけで、そんなのはすぐ返せるよというような医局関与などで負けるということが非常に多いということでございます。
【目次】
P2 → 医師が多い県、少ない県
P3 → 県別医師数と患者数の相関
P4 → 県別医師数と大規模病院
P5 → 長崎県は医師偏在の典型
P6 → 長崎県の医療圏別医師増減数
P7 → 医師偏在の理由
P8 → 長崎県の医学修学生制度
P9 → 地域枠(義務年限)養成医の問題
P10 → 医学奨学金全額返還の時期、理由等
P11 → 長崎県の医療体制の在り方
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