自治体病院より見た医師不足の要因と対策
■ 県別医師数と患者数の相関
【長崎県病院企業団企業長】
次の3ページをご覧ください。
3ページの上段の表は、縦軸に医師数、上に行くほど医師が多い都道府県、それから右に行くほど患者数が多いというところでプロットいたしました。
このプロットはイメージと書いてありますけど、多少都道府県によって上下と左右がやや違っているところがございますので、イメージとお考えください。
こういたしますと、都道府県のグループが4つに分かれてまいります。
Aグループは、これは大都会の病院のお話ということになります。
Bグループは、大都会、あるいは、それを取り巻く衛星都市での問題ということになります。
それから、Cグループ、患者が多く、かつ医師が多い県ということになります。
Dグループが、患者が多く、かつ医師が少ないという県になります。この4つに分けると、大体バックグランドが分かってくるわけでございます。
この4群で叫ばれている医師不足は、全く質を異にしているわけでございます。
例えば、A群、B群にとりますと、これは高い専門性、あるいは高度の救急医療、それから先進医療に対する医師が不足しているということが叫ばれている都道府県でございます。比較的D群から比べると、ぜいたくな医師不足の叫びでございます。
それから、C群は、医師過剰と言ったら悪いのですけど、日本の平均値よりも医師過剰であるが、これらの県においては病院数、病床数が非常に過剰に配置されていまして、医師にとりましては過剰になる労働力を要することから、医師不足が叫ばれているバックグランドがあるわけでございます。
それから、このD群でございます。これは絶対的に医療の不足、医師の不足でございます。全国の平均の人口10万対比の病院数は6.16でございますけど、ここにあります紫で示した病院は10万対比、病院が7以上のところ、茶色で示しているのは6病院未満ということになります。
もしも医師が、今の提供体制のままで増えていきますと、C群の病院タイプが増えてくるということになりかねないわけでございます。これまでは、A群、B群、大都会について、あるいは大都会の衛星都市については、私はあまり携わってきていないので深く考えてこなかった面がございますので、日本の大多数を占めるC群、D群についての意見になると思います。
横軸に、この表では患者数をとりましたが、病院数、それから病床数としたほうが適当かもしれません。なぜならば、下の表をご覧になっていただきますように、この10年間をとりましても、長崎県の患者数が100%から57%に激減しています。しかし、これは自然に減ったのではございません。
この中には、DPCの採用、7対1というような政治的、行政的な面が強く働いた部分で、どーんと患者数が減っているわけでございますから、数というのは、現在のところ絶対数ではございませんで、これはかなり診療費、あるいは社会情勢によって変わってくるということがございますので、現在、終戦後、ずっと固定されてまいりました病院数、それから病床数というところが問題になるのではないかと思っています。
【目次】
P2 → 医師が多い県、少ない県
P3 → 県別医師数と患者数の相関
P4 → 県別医師数と大規模病院
P5 → 長崎県は医師偏在の典型
P6 → 長崎県の医療圏別医師増減数
P7 → 医師偏在の理由
P8 → 長崎県の医学修学生制度
P9 → 地域枠(義務年限)養成医の問題
P10 → 医学奨学金全額返還の時期、理由等
P11 → 長崎県の医療体制の在り方
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