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県を批判したら経営者に向かった補助金での脅し

梅村聡のあの人に会いたい 小松秀樹・前亀田総合病院副院長(中)

 患者の自律をサポートするには何が必要なのか、元参院議員・元厚生労働大臣政務官の梅村聡医師が、気になる人々を訪ねます。
梅村 ところで先生が亀田へ行かれたのはいつでしたか。

小松 2010年です。

梅村 最初は三顧の礼で迎えられたわけですよね。亀田としても、先生を受け入れることで、言論を通じた軋轢はあり得るだろうという前提で雇ったんじゃないんですか。

小松 そう思いますよ。私は言論活動をずっとやっていて、私の言論活動に経営陣は賛成していたんです。つまり、亀田は誇り高き自立した医療機関だというイメージで売ってたわけで、私が行政を批判する文章を書くのに、彼らは賛成だったんですよ。

梅村 副院長としての仕事のメインが言論活動だったということですか。

小松 他にも色々やりましたよ。まず行ってみて分かったのが、あの辺りの人口が毎年1%ずつ下がってくるんです。3市1町(鴨川市、館山市、南房総市、鋸南町)のうちの2つが20年ぐらいの間に限界自治体になってしまう、と予想されてたんです。亀田も手術は伸びてたんですけど、シミュレーションしてみると当然ですが外来は減る。減り始めると急激に減る。それで、大変だ、この流れを食い止めないといけない、千葉県でも東京に近い松戸や柏、市川なんかは、今後、高齢者が倍増するので患者が増えます。本拠地を移すのがベストだと勧めたんですが、資金がなかったようです。どうしようか、とにかく大きなことを打ち出そう、ということで2012年3月に安房10万人計画というのを打ち上げました。実際には、人口の減少を食い止めるのは難しいと思ってました。

梅村 それで何をやったんですか。

小松 まず無料低額診療です。館山で大きな工場が2つ潰れて、ちゃんとした職がすごく少なくなってたんです。で、国保の被保険者の30%ちょっとが滞納しているという状況でした。そういう人たちにも医療を提供しようということですね。それから寄付制度に、ふるさと納税を介して税金を減らそうという話、それを制度としてこちらから提案して作ってもらいました。それから館山に安房医療福祉専門学校というのを作りました。

梅村 医療福祉の専門学校ですか。

小松 現時点では看護学校ですね。館山の方の病院が看護師さん不足で赤字で倒れそうになったんです。亀田を辞める人も大勢いるんで、その人が館山の病院に行ってくれるなら亀田の方の退職金をそのまま引き継げるとアイデアを出してやってたんですけれど、全然足りないというので、学校を作ることにしたんです。千葉県はそもそも看護師の数が、日本で下から2番目なんですよ、医師も下から3番目ですけど。田舎の限界自治体になりそうな所に都市部の看護師が来ることはあり得ないですよね。それで作ったんですよ、小さいんですけど。

梅村 生徒は集まるものですか。

小松 工場の職を失った地元の人に、ちゃんとした職を提供しようというのもあって、社会人が入れるような学校にしました。潰れた工場の独身寮を学校の学生寮に改修して、その1階には高齢者向け住宅を作りました。看護学生と交流するように庭も作ってですね。

梅村 いい感じですね、それ。

小松 ここから先は実験なんですけど、ソーシャルワーカーが相談を受けて、あらゆるサービスにつなぐ「1ストップ相談」という構想も進めてました。これはですね、場所によっては地域包括ケアを在宅医療の医者が中心になってやるというアイデアでやっている所も多いんですけど、医者はそんなにサービスを知らないですよね。そもそも在宅とか地域包括ケアの所って、医療よりは生活支援がメインなんですよ。介護だって医者なんかほとんど知らないですよ。偉そうにしているだけで全然役に立たない。だから、ありとあらゆるサービスに詳しい人がいて、サービスの提供者につなぐ、そういう独立した存在が絶対に必要になるだろうというので、それの実験をやろうとしたんです。

梅村 困ったと言いに行ったら、その人が色々マネジメントして、この福祉使ったらどうやとか、この施設使ったらどうやとか、いうあれですわね。ホンマは行政がそれやらないかんのですがね。

小松 1ストップ相談で一番やりたかったのは財産管理です。それを含めて、高齢者の意思決定を支援するということですね。

梅原 後見人ですね、要するに。

小松 そうです。親戚が成年後見人を弁護士に頼んだんです。お金の話が主で、身上監護はいまいち。

梅原 たしかに、弁護士さんは身上監護は得意分野じゃない。

小松 そうです。カネの管理をする人、何が必要か指示する人と、監視する人なんか立場を分けてやってお互いにチェックするようにしたら、サービスはよくなるし不祥事は起きないですよ。それと、成年後見は面倒過ぎて動きが悪いので、可能な限り契約にする、全体設計がうまく出来たら、保険会社に入ってもらって、財産を盗られた時に補償できるようにする、そんな相談もしていました。それからあと子ども園、働くお母さんがちゃんと使えるようにしないといけない、延長とか夜間保育とか、それから病児保育、全部やりたい。それからシングルマザーとかシングルファーザーを、そういう人たちの職場での条件なんかも改善できるような、子育て支援の提供者以外に間に入ってやる、行政との間に入って要求するみたいな団体も作りました。高齢者に移住してきてもらうのに、ペットの飼える高齢者向け住宅というのをやりたかったんですが、なんせ資金がなかった。猫の幸せを考える会というNPOにも相談に行きました。飼い主が亡くなった後のペットの世話をしているんです。ここで猫派と犬派を分離しなさいという貴重な助言をいただきました。安心使い切り保険というのも保険会社に相談に行きました。日本では高齢者が老後のために、金をため続けます。安心してお金を使って、長生きし過ぎたら、保険で老後の世話をしますよという保険です。

梅原 結構なスピードで色々なことをおやりになったんですね、一通り。一通りと言ったら変ですけど。で、何が騒動の発端だったんですか。
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