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福島県立大野病院事件第三回公判

 もう一つイリュージョンの実例を示そう。

  検察 その手術にかかわったのは一人でしたか
  S助産師 二人です。私のほかにもうひとりです。
  検察 通常は帝王切開に助産師が二人はいるのですか?
  S助産師 いつもは一人です。
  検察 なぜそのときは二人入ったのですか。
  S助産師 手術に対して患者さんの不安が強く、不安軽減のため赤ちゃん係とお母さんの声かけ係とでスタッフが二人になりました。
  検察 もうすこし大きな声でお願いします。ではそうすると、患者さんの不安ということで、不安の内容はどういうものでしたか。
  S助産師 具体的に不安をきいていないですが、手術の前に、前が帝王切開で、前置胎盤だから、出血が多くなる可能性があるとか、危険性の説明をされているので不安なのかなと思っていました。
  検察 前置胎盤のとき出血が多くなるということですか。他にはどういうことが考えられますか
  S助産師 出血が多くなると、子宮摘出術や他病院へ運ぶ可能性があります。
  検察 患者さんが子宮摘出を嫌がっていましたか。
  S助産師 特に嫌がる言葉を聞いたことはありませんでした。
  検察 手術の説明はどなたがしたのですか。
  S助産師 加藤先生が説明しました。
  検察 患者さんの出血が多くなるとか子宮摘出に不安をいだくことは手術の支障になりますか。
  S助産師 特別そういうことはないと思います。
  検察 患者さんが不安を感じていたということだが、証人自身は不安を感じていましたか。
  S助産師 不安は感じていました。
  検察 それはどういう内容の不安ですか。
  S助産師 手術の前に、県立医大で似たような症例で、大変な出血でとても大変だったという話を聞いたので。
  検察 具体的に教えてください。その手術は12月17日より前のいつ頃のことですか
  S助産師 そういうことがあったと聞いたのは、患者さんが入院された後でした。
  検察 入院後ですね。
  S助産師 話を聞いたのは入院後でした。
  検察 県立医大で手術が大変だったと、それと比較してどういうところがどう違っていたのですか。
  S助産師 県立医大には産婦人科医がたくさんいる。それでも大変だったということなのに、今回は人がまったくいない。普通の病院には産婦人科医が一人しかいなく、同じようになって対応できるか、輸血を注文しても届くのに時間がかかるし、もし同じようになったときうちの病院で対応できるか不安でした。
  検察 他の同僚に不安を話したことはありましたか。
  S助産師 ありました。
  検察 加藤医師に進言した方はいましたか。
  S助産師 先輩助産師が進言したというふうに聞いています。
  検察 先輩助産師はどなたですか。
  S助産師 たしかKさんだったと思います。
  検察 加藤医師は進言を受け入れてくれなかったのですか。
  S助産師 直接私が聞いていないのでわかりません。
  検察 患者さんは不安ということの他に問題となることはありましたか。
  S助産師 特になかったと思います。

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