文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

医道審議会医師臨床研修部会

つい先週、文部科学省と厚生労働省の合同検討会が終わったばかりだと思ったら、今度はこんなものが開かれた。

屋上屋を架すというか何というか、行政が何をするにもお墨つきを得てからが常識だからそうなるんだろうが、せっかく大臣が出席して2省合同で決めたことを、また厚労省単独の枠組の中に戻して議論させるというのは理解に苦しむ。でもまあ、それで問題の所在が明らかになって、何か良い知恵が出てくるのだとすれば、仕方ないからお付き合いしましょう。

外口医政局長
「医師臨床研修制度は研修医の臨床能力を向上させたという評価のある一方で、大学の医師派遣機能を低下させ地域の医師不足を引き起こしたとの批判もある。このため、文部科学省と合同で臨床研修制度のあり方に関する検討会を開き18日に意見のとりまとめが行われた。厚生労働省としては、このとりまとめを踏まえて、文部科学省とも十分に連携して制度の見直しを行いたい。平成22年度に研修を開始する研修医に新たな制度を適用したいと考えている。本日はとりまとめについて報告をした後、見直しの対象となるプログラムの基準、募集定員、研修指定病院の基準の3点に関して具体的に議論していただきたい」

斎藤部会長
「とりまとめは基本的な考え方を示したもので、具体的なことは今部会で決める必要があると考えている。まずはとりまとめについて意見か質問かあれば」

富永
「研修医が都市に集中したという問題意識が取り上げられ、一方で病院ごとの定員を過去の研修医受入実績を踏まえて設定するというのはいかがなものか。プライマリケア研修に適した病院は都市でなくともあるのだから、実績がないからと言って切り捨てるのではなくて、指導体制のような適切な指標で定員を設定するよう検討していただきたい」

山下
「感想めいたことを2つ。臨床研修は能力の優れた医師を世の中に送り出すことに眼目がある。とするならばプログラムの弾力化と内科の必修との関係がよく分からない。プログラムの内容によって、こういうものが決まるべき。最初に内科必修と決めてしまうコンセプトが理解できない。到達目標をどうやって達成するかからスタートしてプログラムを構築すべきであり、全身的な管理能力が必要だというならそれは内科でも外科でも構わないはず。それからもう一つは、大きな問題としてどうやって適正な募集定員を定めるかがある。増える所、減る所が必ずあるだろう。国民が納得するような考え方を示すべきであり、それは地域偏在解消のための制度設計ではなくて、本来優れた医師を育てるにはこういう病院が良い、どの地域にはこういう病院があるからという実態とセットで考えるべき。質を保証するには、この地域では何人が限度というようなものを積み上げる所から始めないと。そうでないと、何を研修医に勉強させるのかと問われても答えられなくなってしまう」

西澤
「基本は到達目標が大前提だろう。今後議論していく中で、目的どうしが相反するようなことになった時に立ち戻るべきは、その大前提。それでちょっと教えてほしいのだが、医師の派遣機能とは何をもって派遣機能というのか」


厚労省・田原
「この場でも議論いただければと思うが、私どもが考えているのは、大学が窓口になって各病院に医師を紹介する、その役割のこと」

斎藤
「大学病院等と等が入っている。これは大学だけではなく、地域全体のことではなかったか」

田原
「すみません。大学だけでなく、地域全体で医師を紹介していくような仕組みを概念的に派遣と言っている」

山口
「医師の派遣の医師とは研修医ではないと理解してよろしいか」

田原
「研修以降の医師全般」

河野
「研修実績に基づいて決められると、大学病院は臨床研修生度で数が減っているから、その数になっちゃう。本来の医師派遣といった役割を考えたうえで数の割り当てを考えていただかないと困る。よろしくお願いする」

斎藤
「臨床研修制度が始まるまでは75%が大学で研修を受けていた。75%まで戻るかというと難しかろう」

河野
「いろいろなパラメーターが入っていいと思う。ただ大学に医師派遣の機能があって、以前はその数を前提に派遣していたことは踏まえてもらわないと」


斎藤
「今は総論を話しているが、また後で総論になっても構わないので、そろそろ今日の本題の個別論に入りたい」

ということで事務局がたたき台を説明。
プログラム弾力化案
定員の決め方案
研修指定病院の基準案

斎藤
「説明いただいたように論点が3つある。お互いにある程度関連しているが全部まとめては混乱するので1つずつ議論していきたい。まずはプログラムの基準から。で、確認だが平成22年度開始ということは今年夏のマッチングが絡むということか」

田原
「その通り。4月をメドに基準を見直して、各病院にプログラムを作ってもらって募集してもらいたいと思っている」

長尾
「到達目標はそのまま残るとすると、経験が求められる疾患・病態のAという項目は入院患者を受け持ち、診断、検査、治療方針について症例レポートを提出するとなっているが、精神・神経系疾患も認知症や気分障害、統合失調症がAだが、これらに関して入院患者を受け持つのは変わらないのだな」

田原
「そういうことと認識している」

長尾
「となれば必修に近くなるはず」

田原
「到達目標達成のための方策は各病院で考えてもらう」

山下
「科によらずプログラム(まま)を達成していくというのが基本コンセプトなんだろう。それから短いタームでぐるぐる回るのはする方もされる方も大変だ。プログラム(まま)を達成できればよいのだから、むしろもう少し柔軟にしてもよいのでないか。地域医療が必修なのも理解に苦しむ。たしかに大切には違いないが必修で入れる理由が分からない。もう少し弾力化してよいのでないか。先ほども言ったように内科が必修というのも6ヵ月という期間は素晴らしいと思うが、それが内科のみだと現場としてはプログラムの組み方が難しい。救急は本当に大事だから3ヵ月ミッチリやればいいと思うが、全身管理に関しては内科でも外科でもできるところでやればいいのでないか。その方が現場はプログラムを組みやすいと思う」

斎藤
「本当に3ヵ月ずっと張りつかなければならないのか、救急は夜が大変なんだから、その他の期間とも合わせて3ヵ月ということはないのかということも検討課題だろう」


河野
「よいカリキュラムの所に研修医が行くというのは明らか。独自の良いカリキュラムを組むために、選択肢が広がったと評価したい」

斎藤
「4月に基準が出た後で各病院が一生懸命考えてプログラムをつくることになるんだろうし学生も迷うだろう。そこで確認しておきたいのは、今まで大学は複数のプログラムを持っていたけれどほとんどの病院は1種類だけだった。今度2種類3種類と作った時、別々に募集しなければならないのか。というのはプログラム毎にやるとゼロになるものが出てきて、病院として定員割れになって、さらに県全体でも大きく割れるというようなことが起きる可能性がある。その辺いかがか」

田原
「各病院ごとに募集定員があり、その中でプログラム毎に定員を設定してもらうことを考えている」

斎藤
「ミスマッチした時、定員を大幅に割る可能性があるが」

田原
「その辺りのことは、もし問題があるのであれば、ご議論いただいて」

小川
「各都道府県の定員を考える際に、プログラム毎だとマッチ0はあり得る。病院全体として定員を定めて、それをプログラム間で調整する仕組みはどうしても必要じゃないか。3つを別個に議論しなきゃならんのは重々承知しているが、今回のとりまとめの目玉として『臨床研修病院群の形成』というのがあり、その辺も含めてプログラムの弾力化を考えてほしい」

長尾
「あまり固定化してプログラムで何人としてしまうと例えば選択必修の科目は固定するのかという話になる。マッチングの時から固定じゃなくて、実際に研修に入る前に選べるようにしないと実際には非常に難しいのでないか」

斎藤
「たしかに例で上がっている2番目のプログラムの選択科目をあらかじめ病院が設定したとすると、あまりにガチガチでミスマッチの可能性が高くなる」


河野
「プログラムの多様性が増えるわけだから、大きな数割れは起こりうる。そこは全体として枠を取ってもらわないと」

西澤
「選択必修が1ヵ月では短いという話が検討会で出ていたと思うが」

田原
「特に定めないとのことだったので3ヵ月で2科目でも3ヵ月、3ヵ月でもあるだろう。制度として決めず、病院が決める」

山下
「何とかの科で何とかというと、マッチングが終わってから決めるというようなペンディングにしにくい。たすき掛けの病院にやってもらうようなことを考えても、2つも必修があると動きづらい」

田原
「検討会でも診療科については様々な議論があった。が最終的に何科でも良いとしてしまうと自由度が高まりすぎちゃうということで、病院として決めてほしいということだ」

厚労省・杉野
「到達目標さえあればいいじゃないかという意見も確かにあった。現在は加えて国が7科の研修を義務づけていて、それでは余りにガチガチだから全体として弾力化できないかということで今の結論になっている。到達目標を、制度的にどの部分で担保するのか議論して、基本的な診療科は必修でそれ以外は選択でと合意された」

斎藤
「確認だが、プログラムを公表する段階では、ここは選択ですよということで研修医に選んでもらうということでよいのか」

杉野
「(いろいろ言ったが意訳すると)そういう風にとりまとめに書いてあるでしょ」

斎藤
「それは協力病院も含めてということか」

杉野うなずく。


山口
「小児科や産科を回らなくても到達目標は達成できると?」

田原
「そのように思っている」

斎藤
「矢崎先生、到達目標に関する考え方を検討会で述べたと思うが」

矢崎
「臨床研修で身に着けるべきなのは、診断のついてない患者さんの診断をハッキリつけ、トリアージする能力ということなので、であれば既に診断のついている入院患者を診てレポートをまとめるようなのは、なるべく少なくした方がいいのでないかということは申し上げた。もし到達目標に忠実にやるとなると、各科全部回らなくちゃならなくなる。そこをどう弾力化するか。もちろん到達目標を達成するのは前提なんだが、その辺も病院側が応募の際に明確にしないと学生も迷うだろう。最初にスタートした時はプログラムで質を担保するという考え方だった。今回弾力化すると、到達目標をちゃんと達成したのかどうやって評価するのかがポイントになるだろう。入院患者を受け持って、という所をどういう風にクリアするか難しいところはある」


斎藤
「次に定員のたたき台だが、これは妥当か、何かご意見あれば」

長尾
「派遣とは何をもって派遣と呼ぶのか。これまで大学病院が派遣してきたのは事実だが、医局に属している人が行ったら医局が派遣したことになるのか、それともある病院から別の病院へ異動したら、元の病院が先の病院に派遣したことになるのか」

田原
「派遣の定義はここでも議論いただければ。私どもの考えでは、大学が行っている無料の紹介事業、そういうやり方を派遣と呼んでいる」

山下
「その説明ではよく分からない。病院の中で、この人は派遣なのかそうじゃないのかなんて分けられないから、このコンセプトには非常に反対。定員はあくまでも質の向上の方から積み上げて、そのうえである地域にどうしても医師が必要だからとなった時に改めて考えればいい話であって、それが混乱しているから先ほどの山口先生のような研修医が行くのは医師不足対策で派遣されるのかという話になる。質を担保できる積み上げをして、そのうえで、その定員でいいかというのが筋だ。3つのファクター一緒に考えるならともかく、これが先に出てくると前へ進めない」

田原
「(いろいろ言ったが意訳すると)検討会で決まったんだから、その枠内で議論してよ。病院の基準強化については別途3番目の論点で議論いただきたい」

斎藤
「何らかの方法で各都道府県の定員を決めるとして、どのようにやるつもりか案があれば」

田原
「案というほどのものではないが、たとえは東京都の研修医の実数は1338人、しかし東京都の人口は全国総人口の1割ほどであり、そこから弾くと上限は780人程度になる。一方で大学医学部の入学数から計算すると1200人くらいになる。こういった数字をどうやって考えればいいのか議論いただきたい」

斎藤
「入学数と研修医の数は違うんでないか」

田原
「医師不足に対応しようということで定員を増やしたところなので、そちらの数字を使った」
???

西澤
「こうやって出すと大都市は減らせという話になるが、しかし東京などは臨床研修制度が始まって研修医が減っているから、その辺も考慮に入れないと」


富永
「大学によっては都道府県の枠を超えて派遣している。こういう都道府県ごとの設定でよいのか」

河野
「その通り。東京の大学には全国に派遣しているところもある。それから人口だけ出ているけれど、年齢構成によって医療需要は全然違う。先ほどの山下先生のご意見大事だが、社会状況を踏まえて考えると、今研修医が行ってない地域の病院で研修するのが悪いかというとそんなことはないのだから、矛盾してない。そこが社会的に十分に理解されてないんでないか。厚労省もそこをきちんとメッセージを出す必要があるだろう」

山下
「大学に人を集めるためにやっているのではない。質の高い医師を送り出すために卒後一貫したシステムで指導することが大切なんであって、ファーストプライオリティではないということだ。頑張ってやろうとしている地域や病院が、こういう数字で切られても納得できない。議論の順番が逆だ。質の議論をする前に定員を出されても判断のしようがない」

慌てて杉野
「資料の出し方については反省している。検討会のとりまとめも、あくまでも教育論から始まって、そのうえで研修医といえども雇用契約に基づいて給与の支払いを受けているのだから、どこでもよいというわけではなかろうということ。本来であれば、受け入れ病院のキャパシティに応じて積み上げられるべきなんだろうが現在でも受け入れ病院には条件が設けられていて、それをクリアしていることになっている。加えて何を強化すべきだろうかということ。今回は変更される分が前面に出てしまったので全体像が分かりづらくなった。出し方は反省している」

斎藤
「研修の質を上げるのが大切ということで3番目の論点に移りたい。現状では基準が『望ましい』という努力目標になっているわけだが、そこを強化するのか、するなら具体的に詰めないといけない」

山下
「プログラムが弾力化しているので、誰が研修医に責任を持って研修を完遂させるのか司令塔役が決まってないと2年目が終わったところで何もやってなかったということになりかねない。基準はもの凄く高くした方がよい。そして、その中に協力病院も含める仕組みにすればよい。誰が責任を持っているのか。私は別に大学へ集めようと思っているわけではないので、言いにくいことだが、やはりお医者さんの数がいっぱいいた方がいい。教育というのは人手がかかるものだから。管理型病院は基準を医師100人とか200人とか高い所において、協力病院を組み込めばよいのでないだろうか」

斎藤
「検討会では、たしかに大学病院は人材が厚いが、その分研究も学生の教育もしなければならないから、むしろ市中病院の方が研修医に対して時間を割けるという話もあった」

山下
「それはあると思う。しかし少ない数で地域を診るのはいいと思うが、コンセプト全体も必要だし難しい症例に向かっている姿も見せてあげないといかん。疲弊していることは確かだが、大学が意欲高いのも事実だ」


小川
「非常に小さな病院まで単独型に含めてしまったのが間違い。やっていることが違うんだから大学病院対市中病院という構図で考えないのが前提だ。とりまとめの目玉の一つが「病院群」なんだから、これをそのように誘導するには、単独型は極力認めずに管理型をメインにして群でプログラムを作らせればよい。そして管理型は高いレベルを保たないとダメということで」

富永
「市中病院でも構わない。アンケートでも300床前後の病院の方が大学より人気が高かったし到達度でも大学に劣っていなかった。大学中心に群を組まなければということではない」

斎藤
「大事なのは研修医あたりの指導医の数や症例の数」

西澤
「規模ではなくソフトの問題。プライマリケアをきちんとするという目的からすると、むしろ市中病院の方がふさわしい。研修医1人あたりの数も群ならクリアできる」

小川
「都会は別にして地方では大学病院を中心に群をつくらざるを得ない。医療法上、研修指定病院の指定を受けなくても研修をしないといけないのが大学病院だ。研修制度だけ取り上げて議論したがる人が大いが、しかし2年間で医師が完成されるものではない。今日習ったことが5年後10年後には間違っていると言われるかもしれない、そういう医療の世界では一生勉強し続けないといけないのであって、生涯学習として一貫性を持って議論される必要がある。幻想の中で議論されているような気がする」


ここで若干疲れていた私の目をバッチリと覚ます発言が飛び出す。
飯沼
「遅れて申し訳ない。私に言わせると、昨年この会議で臨床研修5年後の見直しをしたばかりだ。文部科学省と合同で検討会をやったのかしらないが、何も新しいことは出てきていない。何も新しく会議を開いてやるべきことはない。カリキュラムの問題、定員の問題、すべての問題を書いてある。それ以上のことは出てきていないので、前回までの議論の延長線上に粛々と課題を具体化することで間に合うと思っている。慌てず粛々とやっていくのがいいのでないか」

子供じゃないんだから、自分たちが以前決めたことを上書きされたからといってスネてどうする。しかも飯沼さん本人が合同検討会の委員でもあったのに。たしかに、ほとんど出席してないか、出席しても影は薄かったけど。。。日本医師会は、本当に大丈夫だろうか。

さすがに斎藤座長がたしなめる。
「この部会の報告書と違う点が2点あって、プログラムの弾力化と地域枠の設定だ。特に地域枠の方は政治力がないとできないことだ」

長尾
「臨床研修をなぜやったかを考えた時に、地方では大学病院を中心に組まなきゃいけないのは理解するが、しかし大学というのは難しい症例が集まるところであって、本当にプライマリな基礎疾患は市中病院が見ている。大学中心という発想だけではいかん」

西澤
「昨年の部会でたしかに報告を出した。そこから2つ変わったわけだが、それについて(飯沼)先生のお考えは」

飯沼
「定員の問題は部会で出た問題意識を突き詰めれば当然出てくる。プログラムの問題も手段として考えられる選択肢の一つであると思う」
さすがの事務方も呆れ顔をしたし他の委員たちも相手をするのをやめようと思ったらしい。


山口
「地域に研修医が行っても即医師派遣機能の復活につながるのかは別。研修医を派遣するわけではないのだから。大学の機能回復にはむしろ後期研修。虎の門病院でも前期は12人いたのに3人しか残らなかったという年がある。後期で他に魅力あるプログラムがあれば出ていってしまう。大学病院でも、そこの改善がないと解決にならないだろう。研修指定病院の基準に関して言えば、CPC実施が条件になっているが、いったいどれだけの病院がやっているか。このように改めてアンダーライン引いてもいいのだが、この基準を完全にクリアする病院がどの程度あるのか、その辺り次回データを出してもらえれば」

斎藤
「後期研修でどこに何人行っているのかもデータがない。前期で地域に集めても、後期でまた大都市に戻っちゃう。後期も含めて規制というか何かないと難しいのかもしれない」

山下
「長期的に見れば、優れた医師を生み出せるかどうかが問題で、初期研修もその流れの中で、そういう人を出せるような病院が管理型として責任取ってきちんと育てる必要があるだろう。基準を決めた以上守れるところをきちんと判定して、基準はクリアできないけれど地域医療を頑張っているような病院にもローテーションしていけばいい。管理型はきちんとした大きな所、周りに協力病院というのでよいのでないか。アメリカもそうなっている。そうでないと、これからの時代、よい医師は育たない。大きな病院と小さな病院とでは機能が違う。それから現状では医学生は自分たちのキャリアパスが分からないから、それを示してあげる必要がある。管理型の病院には、その責任と能力も必要だ」

河野
「初期研修ではプライマリケアが大きなテーマだった。専門性が今回出されたことが大きい。プライマリケアだけだと、若い人にはその先が見えないからモチベーションが下がる。専門性が重要な理由だ」


富永
「大学はむしろ後期研修を頑張ってもらえばよいと思っていた。実際、中部地方や東北地方の古い大学には、初期は市中病院に出して後期段階で入局させる所もあった。必ずしも大学中心でなくとも、地域の病院でも立派に研修できる。むしろ大学は雑用が多いとかいう声もあったと思う」

河野
「後期研修にプライマリケアだけだとつながらないということであって、別に大学でなくとも構わない」

小川
「プライマリケアを習得すれば良い医師になれるかのような議論が行われているが、今は黒澤明の赤ひげの時代ではない。むしろ必要なのは臨床判断。入院させるのか帰していいのか専門医に診せるのか、それからファーストエイド。これが到達目標のはずだ。そもそも臨床研修でやならきゃならないことは医学部教育の中でも十分にできるようになっている」

矢崎
「到達目標の達成をどう担保するか。内容は小川先生の言う通り。それと今、社会的に注目されているのは地域医療をどう担うか。初期だけで議論してはダメで、大都市の大きな病院は十分に管理型になれるだろうが、地方は地域ごとのコンソーシアムが必要で、その核には大学病院がならざるを得ないだろう。しかし気を付けないといけないのは、いまだに過去の大学病院のイメージでものを語っている方々がいる。大学病院の方々には意識改革をしていただいて、地域医療をサポートするという考え方で動いていただくと地域の方々も安心するだろう。開かれたシステムで責任を持ってやっていただきたい。設置主体の違う病院どうしによる群をいかに育てるか。県に枠を預けてもリーダーシップを取れる人はいない。大学の先生方の責任が極めて重い」

小川
「全くその通り。昔のように医局が全てを支配するような大学では既になくなっていることを申し上げたい。もう一つ、医局が悪者であるかのように言われるが、医局にも大事な機能がある。派遣する際の適性・診療能力を判断するのは医局にしかできない。専門家集団の中で能力を評価している。これは行政ではできない。それから人間だから人どうしの相性とか子供の教育や親の介護といったような家庭の事情が必ずある。そういう社会的なことも色々加味して苦心しながら派遣を決めている。頭が下がることであり、それをできるのは医局しかない」

長尾
「精神科の立場から言うと、精神科が必修にされていたのが大きかった。専門性と人格とが必ずしも一致しないのは皆さん御存じの通り。精神疾患を併発している患者さんを露骨にイヤがる専門医が多い。精神疾患のある患者さんをコンサルトしようとした場合も同じ。医師の中にも精神疾患に対する偏見が強いので、そういう風にならないように実態を早くに知っていただくことは引き続き必要だと思っている」


  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス