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ニュース〜医療の今がわかる

「大人の解決」の道具、「宿日直許可」


 
4月15日参院厚生労働委員会で上がった、勤務医の労働環境に関する質疑応答を紹介する。
 
 
■医療法、労基法、それぞれの「宿直」の意味
 
 
梅村聡委員(民主党参院議員)
これは非常に難しい問題。まず最初に質問するにあたっての考えを申し上げるが、非常にグレーゾーンな現状にある。労働基準法がなかなか守れない、順守しないのでなく、守れない現状が実際にある。その中で、例の愛育病院への立ち入りも起こった。質問するに当たって、今すぐ立ち入って宿直許可を取り消せとか、救急告示を返上しろとか、そういうことを言いたい話ではない。明日どうこうする、ということではなく、この問題は今までパンドラの箱が開けられてこなかったので、ここに切り込まないと勤務医の問題や医療の改革はできないので、この問題を取り上げる。
まず、厚労省に聞く。医療法16条について質問したい。ここの前半には、「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」とある。この条文の意義、この条文における宿直の定義は。


外口崇厚労省医政局長
医療法第16条は医業を行う病院について、緊急治療に支障をきたさないように、医師の宿直義務を要求した規定。お尋ねの宿直については、医療法上での定義はないが、一般的に外来診療を行っていない時間帯に、入院患者の病状の急変等に対処するよう、医療機関内に拘束され、待機している状態と考えている。

梅村
平成14年3月19日の局長通達、「医療機関における休日及び夜間勤務の適正化について」がある。この中での宿直定義は。

金子順一厚労省労働基準局長
まず労働基準法の宿直について説明する前に、労働基準法の労働時間規定について説明する。法定労働時間は一日8時間、週40時間ということになっている。これを超えて労働させる場合には割増賃金を支払う必要がある。その上で、労基法で宿直については、仕事終了後、一般的には通常勤務終了後ということになるが、そこから翌日の仕事始めの間、原則として普通の仕事は行わない。ただ、労働者を事業場に待機させるというようなことで、労働基準監督署長に許可を受けた場合に、労基法にもとづく労働時間規制を適用されなくなるという法律的効果をもたらす。そういう勤務形態について宿直といっている。「宿直許可」に当たっては、それぞれ実態を踏まえて、一定の基準を設けて許可している。

梅村
今の2つの質問から明らかになるのは、医療法の「宿直」は緊急の急変に対応するために医師が常駐していると。働き方に関しては限界はなく、あくまで(医療機関内に)いるということが医療法16条の宿直義務。一方で、労基法上の平成14年3月19日の局長通達では、「働き方」が決められている。その「働き方」を超えた場合、時間外労働が超えたり、昼間と同じ勤務体系が続いたりすると、「宿直許可」を出さないから、労働基準法の「宿直」にならない。
労働基準法の宿直と、医療法の宿直は、概念が異なっている。医療法上の宿直の中に、労働基準法の宿直が入っているということでいいか。

舛添要一厚生労働相
大変いいポイントおっしゃっていただいてありがとうございます。冒頭については私も同じ意識。労基法の宿直概念と医療法の宿直概念は違う、別の概念。厚生労働大臣を引き受けてやっていて、これだけいろんな分野が広がっていることの悩みがある。片一方で厚生大臣として医師不足をやり、片一方で労働大臣としてこっちの問題も。まさに概念が違う。その矛盾をどう解決するかは悩んできた。発想を逆転して、まさに二つの省が一緒になって一人の人間がやっているんだから、もっといいことできるんじゃないかと思って今やっている。前置きは長くなったが、この二つは全く違う概念だ。

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