「大人の解決」の道具、「宿日直許可」
■「宿直許可」は違法労働の隠れ蓑?
梅村
把握し切ってないと思うが、実際に患者が夜中に来て、常に昼間と同じ状況で働く病院があったとして、その状況があれば宿直許可を取り消すことがあり得るか。
これは先週事前のレクチャーが厚労省からあったが、宿直許可の基準あるが、その資料の中に、「宿直のために泊まり込む医師、看護師等の数を宿直の際に担当する患者数との関係あるいは当該病院等に夜間来院する急病患者の発生率との関係等から見て、上記の如き昼間と同態様の労働に従事することが常態であるようなものについては、『宿直』の許可を与える限りではない」とある。このことを先週、厚労省から説明に来られた方は「病院として最初に宿直許可を受けるかどうかの判定に使うもので、途中からその状況になったといって、取り消すものではないと説明受けたが、それで間違いないか。
金子
この通達の趣旨は許可に当たっての基準を示したもの。ただ、労働基準監督機関としては、その後法令を遵守が適切に行われているかということに関して、やはりきちんと確認していくことが使命。可能性の問題ということでいえば、いろいろな指導助言を、時間かけて丁寧にやっているが、可能性のことだけで言えば、労基法を順守しえない状態がはっきりしたら、当該許可を取り消すこともありうるといえばありうる。基本的に現在は改善に向けて粘り強く適正化に向けた指導をしているところ。
梅村
それがおかしいと思って東京都の宿直勤務許可書を取り寄せてみた。その許可書の中には「通常の労働に従事させる等許可した勤務の態様と異なる勤務に従事させないこと」とあり、「なお、この附款に反した場合には、許可を取り消すことがある」という文章が明示されています。これは努力して指導されているということがあるが、実際に救急告示病院、あるいは昼間と同じ夜間勤務がある状態の病院に対して、一つは取り消して、病院に36協定を結んで、時間外賃金を払いなさいという指導方法と、一つは局長が仰ったような、宿直は認めておくけど、それに見合うような労働対応になるように指導するという二つの道がある。わたしは前者の方が法的にすっきりすると思うが。宿直を認めた上で、条件を満たそうと思うとどういう指導をするのか。
金子
この間の経過を簡単に説明する。平成14年の通達で、宿日直許可についてやや適切を欠く運営が行われているのではないかということがあって、通達を出して、全国6600の許可受けている医療機関にまず自主点検をしてもらった。その上で、宿日直の適正化を図る必要があると認められた事業所、約2700あったが、これらの事業所、病院につきましては、集団会のような形で集まっていただいて、労基法の趣旨、あるいは許可基準に即した適正な運用ということについて要請した。その上で、さらに個別に問題があるというところについては、労働基準監督機関が個別に病院を訪れ、話をしているということ。どんな内容の指導をするかというと、できる限り自主的計画的に改善を進められるよう、具体的な工夫例を示しながら、粘り強い指導をしている。もとより交替制労働にしてもらうとか、必要な医師の確保を図っていただくといいう抜本的な解決策が難しい状況の中で、例えば、労働時間法制の中には、変形労働時間制というようなこともある。宿日直許可でも、実際に救急で忙しい時間がかなり限られているなら、そこを外していただき、そこ以外を宿日直許可にして頂くとか、それぞれの病院の実情に即して、労基法の枠の中でなんとかできないかと監督署の方でも知恵を出して病院の方とお話しさせてい頂いている。こういうことを積み重ねて適正化に向け、粘り強くご指導を申し上げているということ。
梅村
交替勤務制を進めるのは正しいことと思う。しかし、なぜそこまで宿直許可の範囲内で解決することにこだわるのか。愛育病院については、人員を増やせと指導されたと報道で聞いている。大臣に感想を聞きたいが、宿直許可が出ている病院で、人数を増やすというのは残念ながら宿直体制を維持するのに、現実的には役に立たない。宿直許可基準では、16日以上救急患者が来る病院、周産期センターでもそう、1時間までなら基準の範囲と。そこで1人の宿直医を3人にした場合、どういう状況が起きるか。ABCの先生がいて、まず寝て下さいと。A先生が呼ばれて、1時間働き続けてタイムリミット、次にB先生が1時間のリミットの中で働き続けて、次にC先生と。こういう状況にしないと人数を増やしても合法的にならない。現実的に、そんな働き方はありえない。誰にとってもメリットがない。病院側からすると3人分の宿直を払わないといけない。医師側からみると今までの3倍もの回数の夜を病院に拘束される。一般的に見て交替勤務にするという指導は正しいが、人員増やすのは、宿直許可の中で満たしていくのは非現実的だと思う。そこで取り消すということをやる、やらないは置いておいて、大臣、局長説明を聞いて実態と比較してどういう感想か。
舛添
同じ宿直という言葉で、二つの法律上の概念が違う。これはあまり法治国家としてよろしいことではないと思う。せっかく厚生省と労働省が厚労省が一緒になったなら、こういうところに手をつけないといけない。概念を変えるとか。これはみんなで考えて法改正すればいいので。まずその作業をいずれやらないといけないと思う。
次は、根本は医師不足や勤務医の過酷な労働条件、これをどうするか。これはあらゆる施策つかってやらないといけない。そのあらゆる施策の中にこの4月から長期的に医学部定員を増やす、救急医に直接的な財政支援するとか、メディカルクラークを増やすとか、一連の政策がある。その中でどうせあるのだから、労働基準法という武器もそのために使おうと。その観点からやる。病院を取り潰したり、許可しないのが目的じゃない。よくするためだから。まず労働基準局が入る、実態把握する、それで「ちょっとこれはひどいんじゃないですか」と。「こういう手がありますよ。こういう手で改善してください」と。愛育病院もぱっと報道が先行して、あれで周産期なくなるとか、そうじゃなく、36協定結べばできるわけだから、「こうやってくださいよ」と、都とも話してその方向に向いている。
立ち入るのはつぶすためじゃなくて残して良くするために改善策をするわけだから、いまおっしゃったように交替制は医師数が少ないところで難しい。本当はそこまでいくようがんばっているが、すぐはいかないから、とりあえずはあれだけ働いたら賃金上げると。こういうところからでも相当助かるから、そういう方向への誘導が正しいと私は思っている。
でも根本は同じ省が持っている二つの法律で同じ言葉が書いてあって、概念が違うというのはこれから含めて検討する必要がある。できれば勤務医が働きやすい条件になるように。救急であれ周産期であれ、入ってきた患者さん国民の命が必ず助かるという、その体制にするために、使える法律、使える武器は使おうということ、なので非常に大事なご指摘。その方向での指導ができるように、労働大臣としてもやっていきたいと思っている。
梅村
もちろん労働基準法を使って、やる方法もあるが、医療者側も良心がある。それやったらうちの病院はできないよねと。地域医療が崩壊したらどうするんだと。現場が自己犠牲を背負ってやろうという、いまそういう取り組みになっている。難しいのは、医療は医療機関のインカム、収入は診療報酬で規定されている。人員も医学部定員に合格率をかけて決まるが、それによって規定されていて、フィクスしている。そこに基準が入って、改善しろというのは、両手両足縛られている中での改善は難しい問題。
熊田さま
ディクテーションお疲れ様です。
この半年くらい参議院厚生労働委員会での議論は結構建設的で身のある内容が増えてきたように感じます。
与野党を問わず、週末にテレビに出ない議員の方が地味ですが真面目に物事を考えているように思います。
KHPN先生
ありがとうございます。
ネット環境さえあれば誰でもこうした国家答弁が聞けるというのは
昨今の大きなメリットと感じております。
多くの方々のお声を聞いていきたいと思っております。