先発品企業が命運を託す「薬価維持特例」(2)―意見陳述(ファルマ等)
■ 日本医薬品卸業連合会
日本医薬品卸業連合会の会長を務めている別所です。本日は、このような発言の機会を頂戴し、誠にありがとうございます。
早速、お手元の資料に従って説明する。
【スライド2―医薬品卸の役割】
医薬品卸としては、国民皆保険制度の基盤を支える医薬品流通の機能強化を通じて、国民皆保険制度の維持・発展に貢献したいと考えている。
わが国の医療用医薬品の特色は、「毛細血管型流通」と呼ばれている。22万の医療機関・薬局に対して、医薬品の多品種、少量、多頻度配送を行い、さらに不良品の回収、副作用情報等の収集も行っている。
ちなみに、米国の医療機関・薬局数は、合計6万か所、ドイツは2万か所。また、お手元の資料にあるような事項についても、その充実を図るべく努力している。
【スライド3―薬価基準制度についての基本認識】
医療用医薬品の公定価格である薬価は、医薬品産業(メーカー・卸)にとって、事業運営の基本的な与件であり、薬価基準制度の在り方や運用次第では、医薬品産業に強い影響を与える。
公的医療保険制度で重要な機能を果たしている薬価基準制度の適正運営のために、薬価調査への協力など、行政の施策に対して、可能な限りの努力をしたいと考えている。
薬価は、市場実勢価格に基づき、適正に算定されなければならない。そのため、早期妥結と、それから総価取引の是正が必要であり、業界を挙げて努力する所存。
【スライド4―流通改善(改革)の取組み】
2008年度は、「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」(流改懇)の緊急提言を受け、卸業界は不退転の決意で、その実現に向けて積極的な取り組みを行った。
幸い、未妥結・仮納入の改善、総価取引の是正については一定の成果を上げることができた。本年度は、流通改善の2年目に当たるが、卸業界としては、継続して、目的達成のために、努力を重ねていく。
流通改善は、薬価調査の信頼性を確保し、高めることを目的とするものなので、中医協でも合理的な医薬品流通の実現のために、効果的な方策の検討をお願いしたい。
【スライド5―薬価維持特例制度】
医薬品卸業界は、製薬業界提案の「薬価維持特例制度」に重大な関心を持っている。画期的な新薬の継続的な開発は、わが国の医療の発展を図る上で、最重要の1つであると考え、医薬品卸は新制度の実現に賛成する。
ただし、その前提として、医療保険財政の健全性を確保し、合理的な医療を推進する観点から、新薬と後発品のバランスある活用が望まれる。医薬品卸は、後発品の使用促進にも協力する姿勢。
また、流通改善と「薬価維持特例制度」との関係について、両者は表裏一体の関係にあると考える。なぜなら、「薬価維持特例制度」において、薬価調査で正確な平均乖離率が計測されることが必要。そのためには、薬価調査の対象となかない未妥結・仮納入の解消を図らなければならないと思っている。
また、新薬の市場価格は、その価値に見合った評価が行われ、適正な価格が形成されなければ、制度本来の目的を達成することができない。
つまり、総価取引で、他の医薬品とまとめて価格付けされるということではなく、単品単価取引により、その価値にふさわしい価格が形成される必要があると考える。
【スライド6―要望事項】
わが国の医療水準を向上させるため、「薬価維持特例制度」はぜひ実現していただきたいが、薬価基準の基本となる市場実勢価格主義は貫徹していただきたい。
新制度の導入と引き換えに、恣意的な「特例引下げ」には強く反対したい。
また、新制度が的確に運営されるために、制度導入の趣旨に関する流通当事者間の共通認識が必要。制度導入前に共通認識が必要であると考える。国による啓蒙運動や、行政上の指導を切にお願いする。
【スライド7―頻回改定について】
薬価改定は現行の2年に1回の改定から、毎年改定など改定の頻度を上げようという議論もあるが、近年のDPCの普及などを踏まえると、薬価と診療報酬は公的医療保険制度の中で変動性が高まっており、薬価と診療報酬を切り離した時期にj改定を行うことは不適切と考える。
また、このような頻回改定は多大な社会的コストが掛かり、流通市場の関係者に過大な負担を強いるもの。薬価改定に伴うコストは、利益率の低い卸にとって極めて重い負担であり、さらにメーカー、医療機関等においても、卸との取引条件の変更作業や、価格交渉作業などさまざまな作業を行わなければならない。
これらを合計すると、そのコストは極めて大きいということをご認識いただきたい。従って、薬価の頻回改定には反対する。
【スライド8―調整幅について】
調整幅については、薬価基準制度の安定的運営の見地から、現行の2%を維持すべきであると考える。
そもそも調整幅は制度創設の際、銘柄内の包装間格差等による「流通コストの違い」をカバーすることにより、いわゆる「逆ザヤ」の発生を防ぐために制定されたと認識している。
その後、調整幅には、医療機関・薬局の調剤管理コストを含むという意見も出たが、医療機関・薬局の事業コストは、診療報酬・調剤報酬で措置されることが原則と承知している。
調整幅については、当初十分な議論がないまま、R幅に変えて設定された経緯もあり、もう一度、今後、その意義について、基本的な議論を行い、関係者の納得を得る必要がある。
【スライド9―ベーシックドラッグの最低薬価について】
薬価改定により、薬価がコストに見合わない水準に低下し、採算が取れなくなったために、医薬品としては有用でありながら、生産中止になり、卸が医療現場に届けられない医薬品がある。
医療に必要な医薬品について、最低薬価制度の適正な運用を図り、卸による安定供給と国民医療の確保に支障が生じないように、ご配慮を希望する。
以上、医薬品卸の立場から、薬価基準制度に関する意見を申し述べた。ありがとうございました。
[遠藤部会長]
どうもありがとうございました。ただ今、4つの団体からご意見、ご主張を受けたまわった。中身については、従来からのご主張を改めて主張されたものもあるし、あるいは制度の中身を明らかにしたものもあった。
あるいは、未承認薬の開発支援センターのように、新しい制度についてご紹介があったものもある。これについて今後、ご意見を頂きたい。
ただ今のご説明について、ご質問かご意見を。もし、ご質問なら、どの団体に対する質問なのかを明確にしていただきたい。また、それに対するお答えをする団体の皆様もできるだけ簡潔にお答えいただければと思う。
それでは、どなたでも結構なので、ご質問、ご意見はあるだろうか。藤原委員、どうぞ。
続きは、(3)質疑応答をご覧ください。