先発品企業が命運を託す「薬価維持特例」(3)―質疑応答
■ 「新薬開発の確率が落ちている」―関口社長
[関口康・米国研究製薬工業協会在日執行委員会委員長(ヤンセン ファーマ(株)代表取締役社長)]
これは、一言で言えば、新薬を開発していく上で、新規化合物がかなり発見されてしまっていて、これからさらにアンメット・メディカル・ニーズが高い領域で新しい薬剤を発見していくこと、そのもの自体が非常に難しくなっている。確率が非常に落ちている。
昔は、1万分の1の確率で新規化合物が見つかったが、今は2万分の1とか、どんどん難易度が高くなっている。そうすると、数多くの新規化合物を使って試験をしないと薬にならない。確率が悪くなる、そうなれば時間も掛かる、そうなると非常に大量のお金は掛かるということになる。
それが、統計的にも表れている。そうなると、製薬企業がアンメット・メディカル・ニーズの高い領域で、さらに新しい薬剤の開発を実現するには、さらに多くの費用と時間が掛かってくる。
そういった中で、今の日本の薬価制度では、難易度の高い新薬開発をやっていくのは極めて厳しい状況。お答えになっていればいいと思うが。
[遠藤部会長]
山本委員、どうぞ。
[山本委員]
アンメット・メディカル・ニーズについて言えば、そもそも開発が進んでいなかったのか、高いから開発ができないのか、その辺りが、いつもお話を伺うと両者が入れ子になって、あたかも「高く掛かるんだから、お金を上げてもいいじゃないか」という風に聞こえる。そうではないと?
[関口・米国研究製薬工業協会在日執行委員長]
違います。
[山本委員]
それからもう1点。(後発品の使用促進に関する)庄田さんと長谷川さんのお答えだが、だとすれば、当然、ジェネリックに移行する......、移行しない戦略を、皆さんは取らないという理解でよろしいですね!?
[不明]
はい、結構ですよ。
[遠藤部会長]
これは......、あの...、いわゆる「配合剤の問題と関連して」という意味合いでよろしいのだろうか?
[山本委員]
後発品に移行することによって、例のグラフの全体の面積を同じにしていくという方法なので、当然、企業としては、企業を挙げて、後発品が進む方向でさまざまな製剤をつくる、あるいはそれに対応するという理解を私はここでしてよろしいだろうか? (語気を強める)
[長谷川・日本製薬工業協会副会長]
後発品にスイッチされることについて、全く異論はない。
ただ、企業として、それ(後発品)の促進に努力することを、ここでコミットすると理解していいかと言われると、「No」だ。それは、われわれの会社の存在の目的に反する訳だから、それをここで「コミットしろ」と言われても、新薬メーカーの社長としては、できない。
[遠藤部会長]
はい、(庄田会長へ)どうぞ。
[庄田・日本製薬工業協会会長]
研究・開発になぜ、お金が掛かるのかという質問について。
近年、レギュラトリー・サイエンスが高度化して、承認を取るために必要とされるデータ(量)が大きくなってきている。
特に、臨床試験。過去にないような大規模な臨床試験をして、その薬剤の評価をする必要がある。先程のファルマの資料にもあったが1品目当たり1300億円。主として臨床開発のところに大変な費用が掛かる。
先程、「未承認薬に研究・開発費が掛かるのか」という質問が山本委員からあったが、そうではない。もちろん、開発費は掛かるが、患者さんの数が少ないので、販売後であっても、投資したものが回収できないような疾患が対象となる薬剤のことを「未承認薬」と呼んでいる。
[遠藤部会長]
ありがとうございます。まだ、ご質問の中身が残っているということで、山本委員、どうぞ。
[山本委員]
分かりました。別に、ここで「コミットしろ」とは言わないが、少なくとも後発品に市場がシフトしていくというのが、今回のご提案であれば、皆さんが進んで後発品を使えということについてコミットしろとは言わないが、少なくとも進む方向にはコミットしてほしい。
もっと言えば、進まないようなことにはコミットしてほしくない。そのような理解でよろしいかどうかというのが1点。
もう1つは、庄田さんがおっしゃったように、臨床開発の部分と未承認薬の部分はよく分かった。臨床開発の費用がもし膨大に掛かるのであれば、「経費を割きながら良い医療を提供しろ」と言われているので、皆さん方もお考えいただきたい。
先程、未承認の部分で言えば、だからこそ、「市場拡大再算定」にはあまり賛成ではないということをご理解いただきたい。
少なくとも後発品を使うことについて、この(中医協の)場では、薬剤師が......(興奮し過ぎてマイク音がハウリング)
......と言われているので、数値目標、30%、行かなかった場合、どうするかというのは、結果として、さまざまな政策の中で、後発品が進むようなことをメーカーさんにお考えいただかないと、そこ(薬価維持特例)はなかなか進みようがないのかなという気がする。
長谷川さんのおっしゃること、よく理解しているので、ぜひ、「コミットしろ」とまでは......、あえて、もう結構、この答えは。少なくとも、お考えいただかないと、今のままだと、なんとなく、よく分からんなーということで、こちらの質問が分からないのかもしれないが、どうも理解できない。お願いいたします。
[長谷川・日本製薬工業協会副会長]
じゃ、一言だけ。
[遠藤部会長]
はい、どうぞ。
[長谷川・日本製薬工業協会副会長]
制度、仕組みで、どういう風にドライルされるかは、こういう場でご審議していただいて決定されたら、それに従う。後は市場で、競争で決まることが一番フェアだと私は考える。
[遠藤部会長]
はい、分かりました。山本委員、よろしいだろうか? 先程、配合剤の話とか、あるいはファルマに対して、「市場拡大再算定」について、その、(質問の)趣旨がちょっと理解できなかったのだが......(他の委員、笑い)、効能追加のようなものを、後から出てくるとか、そういうようなこととの絡みで、たぶんおっしゃったのではないかと......。
[山本委員]
そこは結構。後でまた。この場で、というのは、それぞれ戦略もあるだろうし、おっしゃりにくいこともあるだろうが、明らかに、「そうなのかなー」という、はてなマークがたくさん付くようなことだけはやめていただきたいのが1点。
あと配合剤については、ここで議論すべきなのは価格付けなので、配合剤の意味については別の部門なので、ここで議論するつもりはない。仮にそうなった結果、価格付けをどうするのかはやはり大きな問題だと思うので、後発品の使用促進も含めて言えば、値付けに関してはここでもう少しきちんとしたルールがほしい。
ただ、そもそもそれが製品として良いかどうかはここではないので、あえてここで議論するつもりはないが、メーカーとして、イノベーション、あるいは研究・開発、あるいは「R&D」と言うのであれば、もうちょっと知恵のある開発があってもいいのかなということだけは申し上げておく。
[遠藤部会長]
ご意見ということで。特に何かなければ、ご回答は必要ない。では順番からいくと中川委員、どうぞ。