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診療報酬の配分見直し論は、是か非か

■ 「かなり個別の問題だ」 ─ 遠藤会長
 

[藤原淳委員(日本医師会常任理事)]
 (怒った口調で)いや、仮に、修正を入れたとしても、その時の発言がすべてであるわけだから、その発言と大いに違っているという感触が私にはあるので、そうだとしたらやはり、速記録なりを出していただくのが筋ではないか?

 (保険局総務課の神田裕二課長が挙手。遠藤会長、気が付かず)

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 いや、ですから先ほどの(医療課長の)話では、事前チェックをお願いしたということなので、それは恐らく、そちら(日医)にだけは行っていないということは通常あり得ない。

 ▼ 特定の委員にだけ資料を流さないとか必要な連絡を入れないというのは、厚労省の議事運営の手法としてよくあること。例えば、臨床研修に関する検討会で大熊由紀子委員(国際医療福祉大学大学院教授)が、「私には資料を見せない」などと批判したことがあったし、最近では薬害肝炎の検討会などいろいろある。本件とは直接関係がないが、スピーカーから音を出さないとか音量を低く下げるとか、重要な発言ではマイクのスイッチを入れないとか、姑息な手段が多過ぎ。

[藤原委員(日医)]
 いえ、そのこと(連絡)についてではなく、(意見)④の話。(日医副会長の竹嶋委員が「連絡があった」と述べたが)それは、医療部会。私は医療保険部会なので、私はチェックしていない。

 (保険局総務課の神田課長が挙手。遠藤会長、気が付かず)

[遠藤会長]
 ですから......、かなり個別の話になると思う。つまり......。 (ここで藤原委員が発言をさえぎる)

[藤原委員(日医)]
 そうじゃなくって......。 (しかし遠藤会長、発言をさえぎる)

[遠藤会長]
 いえ、つまりですね、修正するようなチャンスがちゃんとあったわけだが、そこで修正していれば、藤原委員のご発言と、ここに書いてある内容が乖離することはなかった。

 そうすれば、(この議論のために特別に早く)議事録を出すという必要性もないということになるんだと思うが、その手続きが不備だったと(藤原委員は)おっしゃっているが、事務局(保険局医療課)は「違う」と言っているので......。

 まあ、恐らくこれ(両部会)は今後、2回、3回と続けられるので、そういう段階で、ご本人のチェックを入れてまとめていくというのが、(基本方針策定まで期間があるので)タイミングとしては適切なやり方だと思うが、それでも藤原委員は議事録を(早めに)出すべきだというお考えだろうか?

 (保険局総務課の神田課長が挙手。遠藤会長、気が付かず)

[藤原委員(日医)]
 いや、あまりにも違うので......。例えば、最初の2段は私のメモではありませんし、中身がちょっと、相当違っている......。

 ▼ どこの部分を「違う」と指摘しているのか、この発言からは意味不明。

[遠藤会長]
 (語気を強めて)それでは、どういたしましょうか。

 藤原委員は、これをチェックしていないということなので、この(取りまとめの)内容が正しいのかどうか私には全く分からないが、この内容について修正したものを中医協で新たにお出しいただくかどうか。

 (保険局総務課の神田課長がしつこく挙手。遠藤会長、ようやく気が付く)

[厚労省保険局総務課・神田裕二課長]
 医療保険部会自体は審議も公開であるし、議事録はいずれ発言者本人にご確認をいただいた上で当然公開するということにしている。

 ただ、中医協に途中計画を報告するということで、今回、暫定的に発言したご本人にはご確認をいただいた上で、趣旨が違っていないかどうかということを確認して、この場にお出ししているので、申し訳ないが、自分が受けた印象と違うということはあるかもしれないが、発言者ご本人には皆、確認している。

 中途半端な形で、ご本人の確認が頂けない段階で、不十分な議事録を速記録的な形でお出しするのはいかがなものかと考えている。きちっと精査した段階で、議事録全体をオープンにさせていただきたいと思っている。

 ▼ 今回示された両部会の主な意見の取りまとめを「途中経過の報告」と呼ぶのは、やや強弁ではないか。委員の発言を要約して、それを箇条書きにするなら問題は少ないが、今回の厚労省の手法は巧妙だった。発言要約の並び替え(順序)に、厚労省担当者の技が光っている。「Aという考え方がある。しかし、Bとの指摘がある」という記述のA(反対説の提示)とB(批判)に、厚労省に都合が良くなるようにはめ込んで全体の流れをつくっている。各種の検討会で厚労省が示す「これまでの議論の取りまとめ」などではよくあることだが......。

[遠藤会長]
 私は(議事録の公開に関する)基本的な枠組みについて申し上げたのではなく、「サマライズ(要約)されたものに対するチェックをしなかった」ということを(藤原委員が)おっしゃっているので、それが事務的な問題なのか、そうでないのかもよく分からないので、サマライズした内容についてチェックを入れて、ここで出していただくような措置を取るか、それとも、「そこまでする必要はない」とするのかを皆さんにお諮りしている。

 対馬委員、どうぞ。

[対馬忠明委員(健保連専務理事)]
 これはあくまで(意見の)概要で、「できるだけ早く(中医協に)出したい」ということなので、いずれ議事録がきちんとした形で出るので、国民全員がアクセスできるわけだから、それはそれでよろしいのではないか。

 特に今回、これが最終報告書ということであれば非常に気にするのも分かるが、そうではないし。予算で対応する部分と診療報酬で対応する部分の役割分担を考えるべきというのは私が申し上げたことで、それをサマライズしていただいたということなので、ちょっと私には(藤原委員の要望を)理解しかねるが......。

 (藤原委員が「もう一言」と、発言を求める)

[遠藤会長]
 藤原委員、どうぞ。

[藤原委員(日医)]
 「今後、詰めていくんだ」という意見もあるが、しかし、ここに明確に、この(意見取りまとめの)中の"雰囲気"は明らかにこれは......。

全体の引き上げが必要という話があったが、救急や産科・小児科をはじめとする勤務医の負担軽減などに重点をおくような検討が必要。
 地域の救急医療は崩壊の危機であり、深刻に考えなければならない。診療報酬改定だけで議論する問題ではなく、医療提供体制など地域医療全体をどうするかといった視点で考えることが必要。急性期医療に資源を集中投入するという考え方が基本。
 国民の生命・安全を保障することが大事であり、限られた財源の中で「選択と集中」と言われるが、医療を選択的に若い人に行うということになると大変だ。産科や小児科へということなら良い。むしろ「分散と公平」を図りたい。例えば、人口20~30万人に1つ分娩施設があるというようなことが「分散と公平」で、そういった観点も入れて欲しい。
 例えば、先ほどから指摘しているが、「全体の引き上げが必要という話があったが、救急や産科......」の2行。これは、どう見ても私のメモではありません。

 ▼ 「私の発言ではない」という意味なのか、「私のメモにはない」という意味なのか不明だが、つまり「要約が恣意的だ」と言いたいのだろう。

 だから、こういった所がしっかり後に残って、これだけを見て判断する人が多いと思う。そういった場合、やはりこれだけが独り歩きする。要するに、医療保険部会の結論としては「集中と選択」で、やはりここに皆さんの意見が集中したんだという話になるわけだから、これは極めて重要なことだと思う。

 そこが曖昧な形で記録に残されて、話が......。「議事録が出ればいいのではないか」という話には決してならないと私は思う。

 ▼ 医療保険部会は、経団連ほか保険者の立場で出席している委員が多いので、多数決を採れば「選択と集中」を肯定する意見が多いだろう。同部会で財源配分の見直しを求める意見が多かったことは事実なので、藤原委員の主張はやや説得力を欠く。

 (日医副会長の竹嶋委員が挙手。ほぼ同時に全日病会長の西澤委員も挙手)

[遠藤会長]
 えっと......、微妙な差で、西澤委員。(会場、笑い)

[西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)]
 私は医療部会の委員だが、前もって事務局から送られてきて、発言の所に名前が入っていて、「先生の発言はこれでいかがでしたか」となっている。(遠藤会長、大きくうなずく)

 ですから、すべてこれはどなたかの発言だと思う。今の藤原委員が言った所(2行)もそうだと思う。その上で修正したものを出して、今回は(発言者の)名前を抜いて出したということなので、事務局が勝手にまとめたのではない。少なくとも医療部会ではそうだと思う。

 医療保険部会でも恐らく同じ扱いだと思うが、違ったのであれば後で事務局と藤原先生との間でお話しをして、「実際に言ってるのか」とか......。(他の委員から笑い声)

 そういうことをやっていただければと思う。

[遠藤会長]
 だから、かなり個別の問題だと私は言っている。竹嶋委員、どうぞ。

[竹嶋康弘委員(日本医師会副会長)]
 (マイクのスイッチが入っていないため傍聴席では十分に聴き取れず)......医療保険部会からは......来ていないという......そこだけは............あとはですね、それぞれ個別対応......(隣の席の藤原委員がマイクのスイッチを入れる)

 ......おかしくないと思うので、後は個別にやっていただく。

[遠藤会長]
 ありがとうございます。医療保険部会でも、対馬委員のお話のようにチェックをしているとのことなので、まだ社保審の審議が始まったばかりなので、決して「独り歩きをする」ということもないと思う。

 今回はこのような形で、藤原委員のご発言については(中医協の)議事録に残すという形にさせていただいて、次回以降、じっくりチェック、吟味していただいて、またこのようにスピーディーに(両部会の)内容をここで報告していただきたいと思う。そういう扱いでよろしいだろうか? (反対意見なし。「はい」との声あり)

 ありがとうございます。(以下略)
  

 (この記事へのコメントはこちら) 
 


 【目次】
 P2 → 「テープ起こしの形で羅列、整理した」 ─ 厚労省
 P3 → 「私のメモと印象が違う。バイアスがかかった取りまとめ」 ─ 藤原委員
 P4 → 「手続きを経て、こういった形になっている」 ─ 対馬委員
 P5 → 「かなり個別の問題だ」 ─ 遠藤会長

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