療養病棟の救急受け入れ、反対続出 ─ 11月20日の中医協
■ 療養病棟の現状 ─ 資料のポイント
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
「療養病棟・有床診療所について」を議題といたします。事務局(保険局医療課)から資料が出されていますので、説明をお願いいたします。
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
はい。療養病棟が(資料)「診─2─1」で、それに関する参考資料、有床診療所が「診─2─2」で、参考資料が付いています。時間がタイトでございますので、できる限り簡潔に説明させていただきたいと思います。(中略)
▼ 資料説明のポイントは以下の通り。
○ 病院の機能に応じた分類
→ 病院の機能に応じて病床や病棟の種類がある。一般病棟、精神病棟、結核病棟などのうち、今回は療養病棟について議論する。療養病棟の入院料は包括支払い方式。
○ 療養病床の経緯
療養病床は、1983(昭和58)年の老人保健法の制定に伴う「特例許可老人病院」「特例許可外老人病院」の創設に遡る。その後、紆余曲折を経て2000(平成12)年の介護保険制度の施行とともに「療養病棟入院基本料」と「介護療養病床」を新設。06(平成18)年、「療養病棟入院基本料」に包括評価を導入した。
▼ 03年3月、慢性期の入院医療について、病態、日常生活動作能力(ADL)、看護の必要度などに応じた包括評価を進めるとともに、介護保険との役割分担の明確化を図ることが閣議決定された。同年12月1日の「医療制度改革大綱」は、「慢性期入院医療等の効率化の余地があると思われる領域については、適正化を図る」としており、06年度診療報酬改定の基本方針で、「医療費配分の中で効率化余地があると思われる領域」として「患者の状態像に応じた慢性期入院医療の評価の在り方」が例示された。こうして、「医療の必要性が高い患者」 → 医療療養病床へ、「医療の必要性よりもむしろ介護の必要度が高い患者」 → 老健施設等へ、という流れがつくられた。
ところで、新政権は療養病床をどうするのか。療養病床の問題に限らないが、今後の医療政策が今ひとつ見えない。民主党のマニフェスト(政権公約)には医療現場ウケの良いメニューがバラバラに散りばめられているだけで、大局的な視点に立った政策の方向性を打ち出せていない。つまり、グランドデザインがない。
○ 最近の療養病床数
→ 増加傾向。
▼ 07年までのグラフ。07年の療養病床数は34万3400床。一般病床は91万3234床。
○ 都道府県別人口10万対療養病床数
→ 地域差あり。九州、四国が多い。
▼ 最も多いのが高知、次いで山口、徳島、鹿児島など。全国平均は268.8床。
○ 医療療養病床の施設基準等(介護保険施設との比較)
→ 居住系施設との比較。医療の必要度が高いほど、1人当たりの費用が高く、医師や看護師の配置も手厚い。
▼ スライドでは、医療の必要度が高い順に、「医療療養病床」「介護療養病床」「経過型介護療養型医療施設」「介護療養型老人保健施設」「老人保健施設」を比較。医療療養病床のベッド数は約25万床、1人当たりの平均費用は月約49万円。
○ 療養病棟入院基本料における患者分類
06年度改定で導入され、08年度改定で部分的な修正が行われた。
▼ 患者分類は、「医療区分」と「ADL区分」を組合せた9のケースミックス分類で、慢性期入院医療の包括評価に採用されている。悪名高い「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」(分科会長=池上直己・慶大医学部教授)の提案で、06年度改定で導入され、08年度改定に際して部分的な修正が行われた。その妥当性について同分科会は、06年度調査に基づいて「概ね妥当である」と評価。08年度改定の際にも大きな変更を行っていないため、現在においても9分類の妥当性は維持されているとした。
○ 医療区分
→ 説明を省略した。
▼ 「医療区分2」「医療区分3」の疾患・状態、医療処置が挙げられている。
○ ADL区分
→ 説明を省略した。
▼ 「自立」「観察」「部分的な援助」など6段階で評価してADL得点を付けることが書かれている。
○ 療養病棟入院基本料
→ マス目は9区分だが、点数は5区分。最も高い「入院基本料A」は1709点、最も低い「入院基本料E」は750点。 ○ 入院患者の年齢構成
→ 9割が65歳以上。
▼ 75歳以上は「医療区分1」で74.6%、区分2で72.2%、区分3で75.4%、全体で73.6%。
○ 入院患者の状況
→ 医療区分1、2、3の構成比は、概ね「3:5:2」。9分類のうち、「医療区分2・ADL区分3」が最多で全体の約3割。
▼ 「医療区分2・ADL区分3」は2番目に高い「入院基本料B」で、1320点。
○ 入退院の状況
→ 佐藤課長は、「自院や他院から来て、意外にも自宅や特養・老健に帰っている方も多い」とコメントした。
▼ 入院(転院)元は、他院(44%)と自院(32%)で8割近くを占める。退院(転棟)先で最も多いのは自宅26%、次いで死亡退院22%、他院16%など。
【目次】
P2 → 療養病棟の現状 ─ 資料のポイント
P3 → 療養病棟の課題 ─ 資料のポイント
P4 → 「救急のメーンは一般病床あるいは急性期」 ─ 鈴木委員
P5 → 「システムを直せば三次救急のミスマッチはなくなる」 ─ 西澤委員
P6 → 「軽症・中等症の救急受け入れは『亜急性期』で」 ─ 西澤委員
P7 → 「赤字の区分は診療報酬体系として大変おかしな形」 ─ 安達委員
P8 → 「新型インフルで療養型が大変ありがたかった」 ─ 坂本専門委員
P9 → 「区分1を上げないと機能しない」 ─ 安達委員