差別医療か、平等な医療か
■ 「家族も含めた医療を進めるため評価すべき」 ─ 勝村委員
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
(専門的入院治療について)「論点」が1、2、3と出ております。
○ 専門的入院治療の「論点」「アルコール依存症」、「摂食障害」、「強度行動障害を伴う知的発達・発達障害」等々、専門的な治療で入院させた場合は現在の点数よりも高く評価したらどうかという意図の原案だと思いますが、いかがでございましょうか。(中略)
1 有効性が明らかとなっている、アルコール依存症の専門的な入院治療について、診療報酬上の評価についてどう考えるか。2 専門的な入院治療を提供する医療機関における、摂食障害に係る診療報酬上の評価についてどう考えるか。
3 重度の行動障害により、看護必要度が高く、合併症の早期発見・治療が必要な患者について、診療報酬上の評価をどう考えるか。
▼ 診療側の邉見公雄委員(全国公私病院連盟副会長)、安達秀樹委員(京都府医師会副会長)らは賛成意見だが、嘉山孝正委員(山形大学医学部長)が「摂食障害」について反対した。以下、嘉山委員に対する邉見委員の反論から。
[邉見公雄委員(全国公私病院連盟副会長)]
「摂食障害」ですけれども、これ、かなり手間がいります。嘉山先生、ちょっと分からないとおっしゃいましたけど、私は専門でないんですが、田舎で何でも診なきゃいけないので、夜なんかしょっちゅうですね、家出とか、川の淵におるとかですね、自殺企図だと思うんですけれども、そういうのもありますし、若い女性に多くて、割と裕福な家の方に多くて家族も絡んできまして、かなり手間のかかる状況のことが多いです。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
ありがとうございます。では大体、2号(診療)側の意見は(嘉山委員を除いて)「評価するべきだろう」という意見ですが......。嘉山委員、どうぞ。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
もしもこういうね、レベルでね......、こういうレベルで言ったら外科なんかもう手間がかかってとんでもないですよ......、そんなことを言うんだったら。そこまで医療費を付けるんであればもう、この100倍払わないと日本の医療はやっていけないですよ。
というふうに私は思います。(邉見)先生、だったらエビデンスとして、「摂食障害」がどれだけ手間がかかるかを1回出していただけませんか、感想文じゃなくて。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
「摂食障害」に関する手間、コスト、そういったものについて何か参考になるようなデータがあるかどうかということですが、事務局(保険局医療課)、いかがでしょうか。
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
嘉山委員にご納得いただけるレベルかどうか分かりませんが、日本心身医学会から「この程度の手間」と言いますか、「効果はこのぐらい」というような要望書に近いものがあります。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
なるほど、分かりました。そのような内容についてまた出していただける......。
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
はい。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
ただ、私は精神科の先生方を「なんとか」って言うんしゃないんですけど、このレベルというか、この業務内容でやっていくと、やっぱり大変だなあという思いをしたもんですから、彼らが頑張っているのはよく分かるんですけど、やっぱりねえ、あの......、優先度ってものがあると思うんですね。その優先度を抜きにしてなんでもかんでも......というのでは、やはり困るなと思ったのでお話しさせていただいた。エビデンスをきちっと出していただきたい。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
はい、その手のものを出していただくということになる......、事務局(保険局医療課)、どうぞ。(中略)
▼ 佐藤課長が、論点1~3を同一の点数にするものではないと説明。
[勝村久司委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)]
ぼくは、「摂食障害」の生徒を何度か見てきていて、本当に大阪府全体を見渡しても量は限られておって、その中でも質もまだ標準化されていなくて、非常にまあ、1人ひとりに合うものを選ばないと本当に命に......。助かると家族は思っていてもなかなかうまくいかなくて、ここの「摂食障害」という病気に関する医療の質や研究を高めてほしいなという経験をしています。
(摂食障害の評価に賛成する診療側委員の)「手間がかかる」とか、「家族を教育する」という言い方はちょっと上から目線ぽくて、ちょっと違和感を感じるんですけれども、あの......。
結局、患者本位とか家族のケアとかですね、そういうことまで語るという意味ではこの(論点の)3つは本当に家族も不安で、家族や本人も含めたチーム医療を進めていかなきゃいけないという意味で、非常に質を上げていくのにすごく評価されるべきだということは理解できるので......。
十分な質を高めたいのに、評価がないから質も量も細ってきているということであるならば、ぼくはあの......、この辺り、家族や患者本人の視点に立った医療を実現していくための評価というものをきちんと取っていってほしいと思います。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
はい、恐らくまだご意見はあるかと思いますが......。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
先生、ちょっと......。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
嘉山委員、手短に。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
勝村委員、なんか勘違いしてないですか? 家族とかなんとかって、これは医療費の問題ですから、医療をやっている精神科の先生に対するものですから、何も「摂食障害」の学問だとか、診療をないがしろにするという意味では全然ないですよ、私は。それをね、ずらさないで......。(ここで勝村委員が割り込む)
[勝村久司委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)]
言い直しますけど、「摂食障害」の家族や......、いろいろあったことがあるんですけど、確かにこれ以上、量が減ってしまったら、本当に都会でもしんどいなという経験もしましたし、質とかそういう所でも本当に試行錯誤されていて、ぎりぎりだなと......。
そういう「摂食障害」の患者の立場に立つと、やはりこの辺りの医療をもっと評価されていって、より質や量が高まって研究が進んでいくという感じであってほしい......ではないかという体験をした......。(ここで遠藤会長がさえぎる)
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
はい、分かりました。
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
ちょっと最後に言わせてください。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
じゃ、安達委員、どうぞ。
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
たぶん嘉山委員と同じことを申し上げますが、この部分だけで議論すると、診療報酬の点数を上げればその分野の研究者が増えるかとか、その体制ができるとか、決してそうは絶対にならないと思うんです。
やはり、その部分の研究者が増え、その体制ができているというのは、対象患者数の多さということもあるわけで、それだからどうしても専門にやる人は限られてしまう。限られてしまうけれども、患者さんはおられる。その中で、そうした人たちが働く手間については一定の点数の設定があったほうがいいのではないか......。(ここで遠藤会長がさえぎる)
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
分かりました。この話、ここで終わりにします。終わりにします。あの......、個別の議論になっていますので。基本的に今、大体お話を伺いました。
この3点については、大筋では(点数を)上げるべきではないかという意見が2号(診療)側を中心に強く出た。ただし、「摂食障害」についてはやや疑義があるという状況にある。
また事務局(保険局医療課)からですね、これに関連する資料なりデータを出していただきまして、この論点についてまた再度議論したいと思います。それでは、用意しました案件はこれですべて終了しました。(以下略)
(この記事へのコメントはこちら)
【目次】
P2 → 「後期高齢者に係る診療報酬」 ─ 4つの論点
P3 → 「論点が分かりづらい」 ─ 遠藤会長
P4 → 「75歳以上だけ厳しく退院を迫る制度は廃止すべき」 ─ 鈴木委員(診療側)
P5 → 「受け皿をつくらないと解消しない」 ─ 安達委員(診療側)
P6 → 「高齢者は独特の病状」 ─ 白川委員(支払側)
P7 → 「受け皿の心配は全くない」 ─ 西澤委員(診療側)
P8 → 「無意味に近い延命に医療資源を投入している」 ─ 邉見委員(診療側)
P9 → 「高齢者が亡くなるときは大往生、若い人と違う」 ─ 嘉山委員(診療側)
P10 → 「人権侵害があってはいけない」 ─ 勝村委員(支払側)
P11 → 「まともにやっている医師が被害」 ─ 嘉山委員(診療側)
P12 → 「家族も含めた医療を進めるため評価すべき」 ─ 勝村委員(支払側)