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ニュース〜医療の今がわかる

差別医療か、平等な医療か

■ 「無意味に近い延命に医療資源を投入している」 ─ 邉見委員
 

[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
 それでは、3つ目の課題で、「後期高齢者終末期相談支援料」、これをどうするか。(資料)3ページにありますが、これは現在凍結されているものでございますけれども、これについてどう考えるか。

 「後期高齢者」という名称の変更は恐らく必要になると思いますが、凍結を維持するのか廃止するのか、いろいろあると思いますが......、邉見委員、どうぞ。

 ▼ 「後期高齢者終末期相談支援料」について、同日の資料は次のように説明している。「終末期における診療方針等について、患者本人、家族、医療従事者とが十分話し合いを行い、その内容を文書等にまとめた上で患者に提供することを評価したものであるが、その趣旨・内容が国民に十分周知されず、「国民に誤解と不安を与え」(※)たことを踏まえ、平成20年7月1日より算定が凍結されることとなった。※ 中央社会保険医療協議会 答申書(平成20年6月25日)より
 「誤解」とは、「医療費の抑制を目的としている」、「患者・家族に対して意思決定を迫るもの」などの批判を指すが、果たして「誤解」と言えるだろうか。終末期相談支援料は、後期高齢者医療制度への批判の象徴とされた。みのもんた氏が司会を務める朝のテレビ番組では、全日本病院協会(西澤寛俊会長)が作成した「終末期医療の指針」の書式(平成19年11月17日)が繰り返し紹介され、国会でも取り上げられた。同協会の書式集には、人工呼吸器を「希望する」「希望しない」などを選択させる項目が並んでいる。
 西澤委員は08年5月21日の中医協総会で、「当協会の意図と全く異なった使われ方をされ、国民に誤解を招くような提示がされたことに対しまして、私たちの協会としては非常に当惑しておりまして、また、一部の委員からは、かなりこれに対しましてきちんと抗議を申し上げるべきだというような声も出ております」などと反論した。(同日の中医協の議事録はこちら。全日病作成の終末期医療の指針(PDF)はこちらを参照)

 
[邉見公雄委員(全国公私病院連盟副会長)]
 (08年6月25日の中医協総会で)凍結の答申の時にも意見を申し上げましたが、何かの時点でですね、この後期高齢者に限らずですね、「終末期医療をどうするか」ということは国民1人ひとりが考えていかなくてはいけない問題ではないか。

 特に、我々地方の病院で終末期の患者さんを診ておりますと、都会に行っている子どもや家族が集まるまで、かなり延命的というか、「無駄な」と言ったら問題があるかもしれませんが、無意味に近いような延命処置にかなりの医療のマンパワー、あるいは医療資源を投入しているような気がするんですね。だから、そういうことも含めて、やはり終末期にどのような対応をするかというのは、国民1人ひとりが、我々医療側もですね、そういうことはあるわけですね、自分がどうなった......。

 だから、こういうのを移植などにも絡めましてですね、自分がそういう状況になったとき、どのようにしてほしいかというのは、(笑いながら)40歳とか、20歳がいいのかというような問題もありますけれども、そんな若い人には考えられないかも分かりませんが、どこかでそういうふうな医療の中でですね、考える機会は必要なんであろう。

 ただこれを......、料金の問題などもいろいろあったり、(中医協の検証部会が)検証もしていますので難しいと思いますが、何かの形で......、この「後期高齢者終末期相談支援料」というのは凍結ではなく廃止したほうがいいと思います。結論から言えば。

[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
 はい、ありがとうございます。公費を使ってこのような相談をするということは利用者としても意見が分かれたということになっているわけですが、邉見委員の話ですと、この内容は何らかの形で、「終末期の相談をする」ということは重要ではあるけれども、現行制度は廃止したほうがよろしいのではないかということですね。(邉見委員、うなずく)

 ▼ 検証部会の調査によると、公的医療保険から医療機関に対して相談料が支払われることについて「好ましい」が34.1%、「好ましくない」が27.5%、「どちらともいえない」が36.2%と意見が分かれた。

 (医政局で)「終末期医療のあり方に関する懇談会」というのが開かれているようですが、現時点では意見の集約には至っていないということですので、その結論なども出てきて、また新たに考える、そういうご意見だと理解いたします。(中略)

 ▼ この後、)いったん廃止した上で見直すべきとの意見が相次いだ。坂本すが専門委員(日本看護協会副会長)は、終末期医療の問題は年齢に関係なく問題となることを指摘、後期高齢者に限定せずに議論する必要性を述べた。


【目次】
 P2 → 「後期高齢者に係る診療報酬」 ─ 4つの論点
 P3 → 「論点が分かりづらい」 ─ 遠藤会長
 P4 → 「75歳以上だけ厳しく退院を迫る制度は廃止すべき」 ─ 鈴木委員(診療側)
 P5 → 「受け皿をつくらないと解消しない」 ─ 安達委員(診療側)
 P6 → 「高齢者は独特の病状」 ─ 白川委員(支払側)
 P7 → 「受け皿の心配は全くない」 ─ 西澤委員(診療側)
 P8 → 「無意味に近い延命に医療資源を投入している」 ─ 邉見委員(診療側)
 P9 → 「高齢者が亡くなるときは大往生、若い人と違う」 ─ 嘉山委員(診療側)
 P10 → 「人権侵害があってはいけない」 ─ 勝村委員(支払側)
 P11 → 「まともにやっている医師が被害」 ─ 嘉山委員(診療側)
 P12 → 「家族も含めた医療を進めるため評価すべき」 ─ 勝村委員(支払側)

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