差別医療か、平等な医療か
■ 「後期高齢者に係る診療報酬」 ─ 4つの論点
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
定刻になりましたので、ただ今より第153回中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会を開催いたします。まず本日の出席状況ですが、本日は、高橋(健二)委員(全日本海員組合中央執行委員)の代理で、全日本海員組合の清水保さんがお見えになっています。また、北村光一委員(経団連社会保障委員会医療改革部会長代理) の代理で、日本経団連の藤原清明さんがお見えになっておられます。
また、森田(朗)委員(東京大大学院法学政治学研究科教授)は遅れて出席される旨の連絡を受けております。なお(唐澤剛大臣官房)審議官は公務のため欠席される旨の連絡を受けております。
それでは、議事に移ります。まず、「後期高齢者に係る診療報酬について」を議題といたします。事務局(保険局医療課)から資料が提出されておりますので、説明をお願いいたします。
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
はい。「中医協 診─1」という資料と、それから「参考資料」がワンセットになっております。「診─1」の本文ですが、そもそもこの「後期高齢者に係る診療報酬について」という......、診療報酬ができた背景等々について簡単に書いてあります。(中略。以下、資料を簡単に読み上げた)
▼ 資料には、後期高齢者医療制度が創設された背景が書かれていない。あえて避けたのだろう。資料の本文では、同制度に関連する17項目の点数がたんたんと列挙され、参考資料には検証部会の調査結果などが示されている。つまり、「これを見て自分の頭で考えてくださいね」という構成になっている。
そもそも、後期高齢者医療制度の出発点は高齢化に伴って増える医療費を抑制すること。「医療費が青天井に増える」として高齢者医療を制限することは、「差別医療」に道を開くことにもなる。果たして新政権はこれをどう考えるのか。特に、医療の専門家や有識者が集まる中医協ではどんな議論が展開されるのか。とても期待していたが、空振りに終わった。防衛、災害対策など国の安全保障、そして医療、介護、福祉をはじめとする社会保障など、人々が安心して暮らしていく上で必要不可欠な社会全体の共通資本として、医療を第一義的に守っていこうと考えるのか。それとも、「無駄は省く」という枠組みの中で医療を考えていくべきか。もし、医療サービスに優先順位を付けるなら、「医療費全体の底上げ」という主張は矛盾しないか。一方、医療サービスの差別化を図るなら、「無駄な延命」というものがあるのか、75歳で分ける理由は何か、切り捨てられる医療とそうでない医療との違いなどについて十分に議論してほしかった。
なお、遠藤会長が資料について文句を付けたが、上記のような意味を含むかは不明。「後期高齢者退院時栄養・食事管理指導料」など、長い名前で内容が分かりにくい点数項目が羅列されていたので、議論の優先度が分かりにくかっただけかもしれない。しかし、事務局(保険局医療課)側から見れば、「それは"仕分け"してください」というところだろうか。
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
(資料)最後のページ、16ページですけれども、「論点」です。
○ 論点(論点1は)高齢者の生活を重視し......、(後期高齢者に関する診療報酬には)17の項目がありますが、その中には高齢者の生活を重視し、介護・福祉サービスとの連携を図っていくという取り組みが考えられるわけですが、こういった診療報酬上の評価について、どう考えるか。例えば、「後期高齢者総合評価加算」とか、「後期高齢者退院調整加算」などを想定しています。
1 高齢者の生活を重視し、介護・福祉サービスとの円滑な連携を推進する取組みに対する診療報酬上の評価について、どう考えるか。2 他の分野で評価しているものと関連の深い診療に関する診療報酬上の評価について、どう考えるか。
3 現行では後期高齢者に着目しているが、他の年齢層にも共通する課題に関する診療報酬上の評価について、どう考えるか。
4 終末期を巡るこれまでの議論を踏まえ、後期高齢者終末期相談支援料の在り方について、どう考えるか。
それから、(論点2は)他の診療報酬項目で評価しているものと関連の深い診療に関する診療報酬上の評価について、どう考えるか。これは例えば、後期高齢者診療料、後期高齢者退院時栄養・食事管理指導料、あるいは診療所後期高齢者医療管理料(のほか後期高齢者外来患者緊急入院診療加算、後期高齢者外来継続指導料、後期高齢者特定入院基本料)みたいなものを想定して論点をつくっています。
(論点の)3番目ですが、現行では(75歳以上を)「後期高齢者」ということで年齢に着目していますが、他の年齢層にも結局は共通する課題だろうということで、これを診療報酬上どう評価していくかということです。
例えば、後期高齢者特定入院基本料、後期高齢者処置、あるいは後期高齢者退院時薬剤情報提供料(のほか後期高齢者精神病棟等処置料、後期高齢者在宅療養口腔機能管理料、薬剤情報提供料の後期高齢者手帳記載加算、後期高齢者薬剤服用歴管理指導料)、こういったものについてどう考えますか。
それから、これ(論点4)も他の年齢層に共通する課題なのかもしれませんが、特に終末期に関してはこれまでいろいろと議論があったところでございますので、今後、後期高齢者終末期相談支援料や後期高齢者終末期相談支援加算についてどう考えるか。こういったことで論点を挙げています。以上です。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
はい。えー......、資料......および......、その論点ですけれども......、大変分かりづらいですね。そういう意味では、もう少し議論できるようなものにしていただきたいと思いますけれども、いずれにしても17項目ある中で、「どうするか」ということを議論しなければならないわけであります。
後期高齢者の保険制度ができまして、同時に後期高齢者を対象とした診療報酬体系をつくったわけですが、事務局(保険局医療課)にちょっと確認したいのですが、「名称のみ変更して内容は変えていないもの」はこの中のどれでしょうか。(事務局、相談中)
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
えーっとですね......、結構あるんですが......。
▼ 「これはちょっと意地悪だろう」と思ったが、委員に対するポーズかもしれない。厚労省を攻める議論に走らないよう遠藤会長が先手を打って"ガス"を抜いた形か。本件とは関係ないが、以前、介護報酬改定を審議する厚労省の分科会で、厚労省を執拗に批判する委員がいた。興味深い内容だったので、会議終了後にその委員の所に行って、「先ほど介護認定の在り方について厚労省を批判する発言をしていましたが、詳しく教えてください」と聞いてみた。すると、その委員は血相を変えて「私が厚労省を批判するわけないでしょ。あんたバカじゃないの!?」と怒鳴られてしまった。その後、その委員は老健課長と仲良さそうに雑談。介護に詳しい記者に事情を聞いたら、「あればバリバリの"御用委員"だよ」と笑われた。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
それでは、ちょっと調べておいてください。なぜ、きいているかと申しますと、この中には非常に重要できちんと議論しなければならないものとそうでないものが渾然一体となっています。時間の関係上、重要なものだけやっていきたいと思いますので、「名称変更だけ」というものがある意味で一番軽いものですので、それはちょっと後で。ちょっと調べておいていただきまして......。
「論点」はあるんですが、ややこの「論点」がですね、分かりづらい点もあるものですから、「論点」に添った議論でももちろん、ご意見を頂いて構いませんけれども、むしろ重要なものについては、「個別にどうするか」ということをご議論いただいたほうがいいかなあと思います。
【目次】
P2 → 「後期高齢者に係る診療報酬」 ─ 4つの論点
P3 → 「論点が分かりづらい」 ─ 遠藤会長
P4 → 「75歳以上だけ厳しく退院を迫る制度は廃止すべき」 ─ 鈴木委員(診療側)
P5 → 「受け皿をつくらないと解消しない」 ─ 安達委員(診療側)
P6 → 「高齢者は独特の病状」 ─ 白川委員(支払側)
P7 → 「受け皿の心配は全くない」 ─ 西澤委員(診療側)
P8 → 「無意味に近い延命に医療資源を投入している」 ─ 邉見委員(診療側)
P9 → 「高齢者が亡くなるときは大往生、若い人と違う」 ─ 嘉山委員(診療側)
P10 → 「人権侵害があってはいけない」 ─ 勝村委員(支払側)
P11 → 「まともにやっている医師が被害」 ─ 嘉山委員(診療側)
P12 → 「家族も含めた医療を進めるため評価すべき」 ─ 勝村委員(支払側)