(新企画)村重直子の眼1 成松宏人・山形大特任准教授
舛添要一・前厚生労働大臣の懐刀として大活躍し先月15日で官職を辞した元厚生労働大臣政策室政策官(辞職時は内閣府特命大臣付)の村重直子氏は、大臣の眼や耳の代わりとなって情報収集していた経緯から、在野でキラリと輝く人たちを大勢知っているらしい。「言論の自由を取り戻した」という村重氏に、これからしばらく、対談形式でそういった方々を随時ご紹介いただくことにする。トップバッターは新型インフルエンザによる献血不足の問題に早くから警鐘を鳴らした、成松宏人・山形大特任准教授だ。(担当・構成 川口恭)
村重
「日本では、大規模データベースに一部の人しかアクセスできず、誰でも自由にアクセスして論文を書けるようになっていないことが、様々な問題に共通するボトルネックだと思っているのですが、先生の手がけられる山形大グローバルCOEプログラムも、大規模コホートを作って、よい分子疫学の研究論文が出そうですね」
成松
「山形大では県内いくつかの市町村の方々のご協力をいただいて30年前から疫学研究に取り組んで来ました。現在では生活習慣病や発がんに生活習慣だけでなく体質の個人差が与える影響を探る研究を行うと同時に、分子疫学の国際教育研究ネットワーク構築をめざしています。そのデータをどう使うかというのは私の一存で決められるものではありませんけれど、皆さんの健康づくりのお役に立てればと思っています」
村重
「ところで、昨年、輸血製剤について色々と論文を書かれていたと思うんですけれど、それは、どういう経緯で手がけられたのですか」
成松
「はい。新型インフルエンザ流行時の血液製剤確保についての論文を、私たちの研究グループからTransfusion Medicine Reviews誌に最近発表させていただきました。そもそも、昨年の5月に、新型インフルエンザが関西で最初に流行った時に献血者が減ってしまったというのがスタートです。先生もご存じのように私は元々血液内科医でして、血液内科の患者さんの場合、出血傾向が強くなっていて血小板製剤がなかったら命に関わるようなことがあります。そういう方たちが、危機的な状況になるということに、恥ずかしながら、その時初めて気づいたのです」
村重
「それで外国ではどう対応しているのか調べたわけですね」
成松
「はい。不活化というウイルスを殺す技術、病原体を殺すことによって輸血の安全性を高める技術の導入が進んでいました。元々は輸血を介した感染症を防ぐ目的で、特には未知の新興感染症を防いだりということで議論されてきたものですけれど、副次的な効果として、血小板製剤のように細菌が増えてしまって作り置きできないようなものの保存期間も長くなるということが分かりました」