村重直子の眼5 小野俊介・東大大学院薬学系研究科准教授(中)
村重
「データベースを公開してあれば、データベースを入手して分析するという作業はどこにいてもできるので、誰でもいいのです。だから、もう1つ『機関』を作るより、まず先にデータベースを公開する方がはるかに多様性を反映できるし現実味はあると思うんですけれど」
小野
「公開されたデータを使って、アカデミアが論文を書くのは確かにすぐにでも始められますね」
村重
「アカデミアに限らず、臨床研究は、患者さんのいる所どこでもできるんですから、お医者さんは誰でもやればいいんです。医師に限らず、できるだけ多くのコメディカルに、臨床論文を書いてほしいと思います」
小野
「ただし、そうやって医師が論文を書いたとしても、その論文を読みたいと思ってくれる人がいるか、という先ほどの需要の問題は付いて回ります。役所の人たちは論文など読む必要がないから、読んでくれません。基本的に、論文を読む必要があるポストがパブリックセクターには少ないのです。『新薬R&Dで日本は後塵を拝しています』という論文が出ても、それを商売道具として読む人がいないから、放置されるだけです。馬を水飲み場までは連れて行けるけれど、水を無理に飲ませることはできないのと同じで。研究データをまとめて、発表して、水飲み場を作るのは良いとして、そこで馬に水を飲ませなければならないんですけど、そこの所の作戦を村重先生はどう考えていますか」
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