村重直子の眼5 小野俊介・東大大学院薬学系研究科准教授(中)
村重
「実は、非常にうまく活動されているなあと思う例がありまして、『VPDを知って子供たちを守ろうの会』の方々が作ったワクチン接種のスケジュール表なんです。全国の小児科医たちが横に連携している会ですけれど、ああいう形で現場から発信されたものを、そのまま保険支払い認めればいいと思います。表の元になったのは、臨床の現場から上がってきた、こういう問題をこうするべきだという、現場の多様性の平均値というか、ガイドライン的なものです。色々な治療に比べれば、ワクチンは平均値をとりやすいですよね。こういうのが他の分野でもどんどんできればいいと思うんですけどね」
小野
「そうした小児科医のような方々が増えるとともに、その成果を面白がって受け止めて、承認や保険償還に反映しようとする人が増えてほしいですね。需要者のリテラシーの問題です」
村重
「米国のCDCなどでは役人という立場にある人たちが、自分たちでどんどん論文を書いています。日本のパブリックセクターとは違いますね」
小野
「日本と米国では役人の概念が違いますからね」
村重
「たしかに、元々お医者さんだったり、Ph.Dだったりという人たちです。そういう人がCDCなどにいるのは政治任用だからなんですよね。日本の役人の、終身雇用の採用では論文を読み書きできるような人は入って来ないので、国民の声を選挙を通して反映できる政治任用が必要なのかなと思います」
小野
「組織のトップは特にそうですね。また、新しい審査組織を想像するにしても、一つの建物の一つの組織というイメージでいると、今までの役所と同じものができてしまうので、そうではなくて、機能としてその道のプロがゆるく集合しているイメージの方が健全かもしれません。何とか委員会みたいなものになるかもしれませんね」
村重
「この分野はこの先生みたいな、かなりの多様性がないといけないので、全員を同じ建物に集めてこなくても、ポリティカルアポインティーであなたこれやってねと、あるいは政治家の任期中はこれやってねということでもできると思うんですね。もちろん集まる人もいていいし、非常勤で時々来る人がいてもいいし、全然来なくてチェックだけしているという人もいていい」
小野
「そういう形もあるでしょうね」
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