坂田
「国民からすれば厚生労働省と言えば、どの部署にいらしても厚生労働省なんですよね。だから一つの文書を出すのに、たらい回しにされるじゃないですか。あれ自体が本当におかしなことだと思いますし、私たち自体が素人だから、いかに分かりやすく説明していただくかがとても大事なんですけど。逆に財務省の方はメチャクチャ勉強されていて、肝炎のことは一から十までご存じでしたね。一つの予算を組むのに、ものすごく勉強されているなというのは、お話をする中で感じました」
村重
「省によって文化が違うとは思います。ただ縦割りの話は、役人の終身雇用の立場では、自分の責任範囲というのが決まっていて、逆に横の部署の仕事に口出しできなくなるんですよね。越権行為をするなと厳しく言われます。特に若手中堅ぐらいの人にはすごく制限というか、越権行為をしてはいけないというプレッシャーが強く働いています。それによって人事評価もされるので、明確に人事異動や出世に影響するんですよね。だから終身雇用の人事体系の中で、横の連携を期待するのは無理だと思います。でも国民が困っていることですから、どう変えたらいいのか考えないといけません。政治家の政務スタッフを増やすことが、その試みの一つだと思います。政権交代した後もすぐには実現していませんけれど、当初、政府に政治家を100人増やすとか、政務スタッフを増やすと言ってましたよね。単に政治家の数が増えるだけでは船頭多くして舟山に上るみたいな、今足して2で割っている結論を足して10で割るようなことになりかねません。そうではなくてリーダーシップなり最後の責任は明確にしたうえで、その責任ある人の意向に沿って役人以外のルートからも情報を集めて、次にどうすればいいか考える。それこそ余ったお金をどうしましょうという話も、責任ある政治家の意向に従って動く人たちが横の調整をするほうがいいでしょう。例えば局長クラスぐらいまでの人たちは政治家に連なる人たち、つまり終身雇用で縦割りの役人ではなくて、選挙で代わる、あるいは政治家の任期と一緒に代わる政務スタッフにして、情報収集も横の調整も担うことができれば、縦割りの弊害は減ると思うんですね。どんなに縦割りを改めるよう役人に期待しても、たぶん何も変わらない、変えるのは無理だと思っています。横の調整をするのは政治家の仕事で、縦の部分で役人が担う仕事もあって、両者のバランスをどうするか、人数のバランスをどうするかという話だと思います。また内閣も代わりましたけど、そういうことも考えていただきたいですよね」
坂田
「裁判で一番つらかったのは、法廷で被告代理人はとても強気に出てくるわけです。嫌らしい質問とかもしますし、しかしいざ私たちが基本合意、和解する時にはコメツキバッタみたいに変わっちゃう。180度転換されるというか、官僚たちのそういった姿を見ていたら、こっちがつらいんですよ。あれだけ強気で来られていて、じゃあ自分たちが敗訴したら、そういう態度に180度変わられるっていうのが、私たちにとって、どれだけつらいかということを分かっていただきたかったと思いましたね」
村重
「普通の人間の感情というか、普通の対応ができない組織になってしまっていますよね。そこはある意味、中にいる人もかわいそうですし、それによってつらい思いをされる人も、それによって国民みんなが不利益を被っているので、みんな不幸になる制度のままなんですよね。そこを無過失補償・免責制度など、国民の皆さんの発想の転換で、ネガティブスパイラルをポジティブスパイラルに換えていけるようにしたいですね」