「医師が12.5万人不足」 ─ 本田宏氏の見解
■ 医療が進歩すると医者が必要
[本田宏・済生会栗橋病院副院長]
皆さんご存知のように、日本の医師数は1960年ごろはまだ世界と比べてそんなに差がありませんでした。
OECDの平均をご覧ください。(医師数が)どんどん増えています。そして細かいことは時間の関係で省略しますが、「一県一医大」で、とりあえず医師を増やそうという時代がありました。
ところが、日本の特徴は初めに方針を決めちゃうんですね。「人口10万当たりの医師数は150人でいいんじゃない?」って。世界がどんどん増やしているのに150人が目標で......、決まったらもう減らそうってなるんですよ。
よくご覧ください。最近もいろんな団体が「15年したら追い付く」って......。世界は増えてますよ。大丈夫なんですか? 医療がどんどん進歩すると、もっと増やすんですよ。
それを大きな団体の人が真面目に「15年したら今のレベルに追い付く」って、だいじょぶ? っていう感じでございます。
医療が複雑になれば医者が必要なんです。例えば、1つだけ言いましょう。最近、胃がんの患者さんが私の所に新患で来られました。
昔だったら、胃がんの人が手術できるかできないかで終わり。ところが、今はまず内視鏡的に削る治療ができるかどうか。その後に手術となったら開腹の手術か腹腔鏡の手術か、その後の化学療法、それを患者さんに......。
もう何十倍って説明の時間が掛かっているんです。しかも、それぞれの医療者が必要なんですよ、質を高くするためには。
つまり、医療の質の進歩を考えないで医師の数だけ、頭数だけ考えるのは本当にセンスがないですね、宇都宮の北!
今市(いまいち)......。あ、すんません、関東近辺の方じゃないと分からないんです、これ。申し訳ありません、丹生さん(県立柏原病院の小児科を守る会代表)はちょっと......。栃木県ですので......。
ということで、本当に私は困っております。
▼ ずっと仏頂面だった平井伸治委員(鳥取県知事)、西村周三委員(国立社会保障・人口問題研究所所長)らもついに笑みをこぼしたが、中川俊男委員(日本医師会副会長)はぶ然とした表情のまま。
【目次】
P2 → 私にとって最初で最後の機会
P3 → 日本にはグランドデザインがない
P4 → 日本の医療はガラパゴス状態
P5 → 医療が進歩すると医者が必要
P6 → シンプルに計算すると12.5万人不足
P7 → 実働時間を確認しない調査
P8 → 救急、麻酔、がん関連医が不足
P9 → コメディカルをできるだけ増やして
P10 → 勤務医は1人でいろんな役割
P11 → 相対的には余っている部分も
P12 → 茨城、埼玉、千葉に医学部を