「医師が12.5万人不足」 ─ 本田宏氏の見解
■ コメディカルをできるだけ増やして
[本田宏・済生会栗橋病院副院長]
大学です。昔の俗に言う一高と、その後の新設大学。
アメリカに比べると、スタッフの数がこのぐらいです。これだけ人が少なくて、赤字だから独立行政法人化にして黒字にしろって言われて、臨床やってるんですよ。若手を教えているんですよ。
そして、「論文を書け」って......。スーパーマンじゃないですから......。
日本の医療界はね、分かりやすく言えば昔のJリーグ......前の日本リーグです。日本リーグのころは弱かったでしょ、サッカー。
システムを整えないと強くならないんですよ、いくら素質が良くても。釜本みたいのがポッと出るくらい。日本の医療者は本当にかわいそうですよ。
能力もあってやる気もある。世界で一番働いてるんだから。ところが、システムが悪すぎるのね。そして最後は「医療事故だ」なんて、「逮捕しろ」とか言われちゃったりして......。
まずくないですか、これ? それで医療イノベーションって何? って質問してみたいですよ、私は。
なんで医療イノベーションするの? 現場に余裕がないのに、普通の医療をやる余裕もないのに......って、そういう感じでございます。
教育、研究、臨床の充実のためにはマンパワー充実が必須、急務でございます。
しかも、日本の場合、問題は病院の職員が少ない。ご存知のように、赤字なんだから雇いたくても雇えないんですよ。
確かに、医療秘書さんにちょっと(診療報酬が)付きました。でも、本当に必要な人を雇おうとしたら完全に赤字になるもんね、今の点数では。
ちょっと付いたんです。だから厚生労働省に大変感謝しておるんですけれども、ちゃんと人が雇えるぐらい付けないと駄目。人手不足の医療機関はマンパワーが必要なんですから。
今、医師不足と言って医者を増やしてもすぐには増えませんよ。医療秘書さんとか、そういうコメディカルの方をできるだけ増やしてサポートしてくれれば患者さんへの説明も増えるし、患者さんの満足度も上がるし、医師も疲れが取れるし、地域に医者が定着できるし、そしてなんと言っても地域で労働が確保できるじゃないですか。
病院や福祉施設がなくなったら、人が住めないでしょ? 電気とガス、道路だけあっても人が住めないんですよ。素通りするだけ。
だから、本当にお金をどこに使うかを今、考えるべきだと思います。
外国には、医師、看護師以外に医療秘書さん、NP、PAがこんなに一杯いるんですね。静脈ラインを確保する人、患者さんを運ぶ人......。
「Doctor-patient relationship」と言いまして、医師と患者さんの間に入って説明する人。日本では、外科の手術が長引いたときに、 忙しいから患者さんの家族に説明ができません。
そういうときに、「今、手術はここまで来ていますよ」と説明する人がいるそうです。クオリティーが違うでしょ? これが日米の差なんですよ......、ヨーロッパも含まれていますが......。
だから、医師を増やすだけじゃなくて、こういう人もガツーン!と増やせば......。それでなくても、大学生が就職できないんだから病院に就職してはどうでしょうか? 病院じゃマズイんですか? そういう話でございます。
そういう方が病院に入ってくださって手伝ってくれれば私は大歓迎です。大大歓迎です。
【目次】
P2 → 私にとって最初で最後の機会
P3 → 日本にはグランドデザインがない
P4 → 日本の医療はガラパゴス状態
P5 → 医療が進歩すると医者が必要
P6 → シンプルに計算すると12.5万人不足
P7 → 実働時間を確認しない調査
P8 → 救急、麻酔、がん関連医が不足
P9 → コメディカルをできるだけ増やして
P10 → 勤務医は1人でいろんな役割
P11 → 相対的には余っている部分も
P12 → 茨城、埼玉、千葉に医学部を