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リハビリテーション その真実

どこまで医療? みんなで考えよう。

 今回の診療報酬改定でリハビリに関する目玉として打ち出されたのが、成果主義を導入する、というものです。
 マスコミ報道では、患者を早く回復・退院させた回復期リハビリ病院の方が、そうでない病院より入院費が高くなる仕組み(コラム参照)と紹介されてきました。長期入院を減らして、トータルの医療費を減らそうというわけです。
 たしかに、リハビリを受ける患者の大多数が短期間に自宅へ帰れる人で、なおかつ成果の上がるか上がらないかが病院側の工夫・努力に依存するのであれば、この仕組みは理にかなっています。でも本当にそうでしょうか。
 ちょっと、たとえ話をします。リハビリを受ける患者さんが、山道から何らかの事情で斜面の下へ滑り落ちてしまった方とすると、リハビリというのは、滑り落ちた方に対して垂らすロープにたとえられます。落ちた方はロープに掴まって体を支え、それを伝って元の山道まで這い上がろうとするわけです。
 這い上がれるかどうかは、ロープの性能で決まるでしょうか? そればかりではありませんよね。どのくらい下まで落ちてしまったか(重症度に相当します)によって違いますし、足場が良いか(障害の部位)によっても違いますし、その人自身の体力(回復力)によっても違うでしょう。
 もし多くの人が這い上がれたロープの持ち主には褒美をやろう(入院費アップ)、這い上がれない人の多かったロープの持ち主からはロープを取り上げよう(入院費カット。カツカツの病院は潰れます)と言ったら、這い上がりやすそうな人を選んでロープを垂らすとか、這い上がれなさそうな人には垂らさない、そんな現象が起きるとは考えられないでしょうか。今回の改定は、そういうことです。
 這い上がれない人にロープの必要がないなら構わないのですが、ロープの支えがなかったらズルズル落ち続ける人だって、きっといますよね。
 現実に戻ります。今回の改定では、維持期リハビリにあたる部分で、疾患ごとに前々項の①は180日②は150日③は90日④は150日という上限日数が設けられました。それを超えると、回復が続きそうである旨の見通しを医師が大量の書類を書いて示さない限り、1カ月にたった13単位しか医療保険から支払いがされません。
 主要3療法を週2回ずつ行ったとしても、最低24単位になります。13単位では全然足りません。つまり、一定期間のうちに這い上がれなかった人からはロープを取り上げて、代わりに糸を垂らしてあげようということです。
 特集冒頭の問いに戻ります。リハビリは、正当な医療行為でしょうか。そうであるなら、今回の診療報酬改定は不当です。そうでないなら、この扱いが当然とも言えます。
 どうかこの問いを他人任せにしないでください。本来これを決めるのは受益者であり費用負担者であり、有権者である私たちです。前回総選挙で皆さんの投票した結果が、現在のリハビリ縮小につながっているのです。

33-2.4.JPGこんな成果主義  4月から表のように変わりました。ここで言う重症患者とは、①②③④それぞれについて、2段階か3段階のランクをつけ、そのうち重度の方にランクされた人のことです。また『日常生活機能評価』とは、寝返りや、他者への意思の伝達など基本的動作13項目について、できれば0点、できなければ1点とか2点という風にして、19点満点で評価するものです。

※患者負担率は3割だが、高額療養費制度の対象となるので、実際の支払額ははるかに少ない



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