なぜ愛育病院は「総合周産期母子医療センター」返上を申し出たか(上)
「愛育は産科と小児科しかないから、補助金が要らないなんて思い切ったことが言える」との声も産科医の間から聞こえる。「総合病院では、補助金をアテにして予算が組まれている。他科にも影響が出ることになって、簡単に返上なんてできない。本当に厳しいのは日赤だ」
日赤医療センターは、東京都の「スーパー総合周産期センター」になって年間5千万円ほどの補助金が約束されている。同センターの産科医は24人。ただ、これには当直を経験したことがない初期研修医も含まれており、同センター関係者は「3人当直なのに、当直できるのは18人ぐらいしかいない。今年度中には3人が退職し、転科する医師もいる。代わりの医師も来るが、当直ができない医師もいるため、実質的に戦力は落ちる」と内情を明かす。加えて、同センターは新生児科にも医師の欠員が1人出ており、現在もホームページ上に募集案内が出ている。「労働基準法を遵守するような体制を保っていられるとは、とても思えない」。同センターに勤務する医師たちには、補助金や是正勧告が自分たちの労働環境改善にはつながらないことに、動揺とあきらめとが入り混じる。
現在までのところ、日赤医療センターは「大人の解決」を選び、愛育病院も予定調和の世界に戻って事態は沈静化したように見える。しかし今回の問題はこれでは終わらない、本番はこれからだ、との指摘がある。今まで医療界が所与の条件と捉えてきた厚労行政の在り方に大きな地殻変動が生じており、これまでの常識が通用しなくなるというのだ。
先月末の愛育病院に、東京都と厚労省が「特別条項」を使えば、労働大臣告示での時間外労働の上限時間を超過しても大丈夫と言ったとの記事を読み、厚労省の誰が言ったのか疑問に思っていました。
”厚労省の外口崇医政局長が中林院長に対し、職員代表との合意の上で時間外労働に関する「特別な定め」について労基署と相談してはどうかと助言した。”
ナルホド、愛育病院に助言したのは外口崇医政局長だったのですか。
ところで労働基準法法や労働基準行政については、金子順一労働基準局長の所掌と記憶していますが、何時から医政局長は労働基準法も所掌するようになったのでしょうかね?
それは置いておくとして、医師の人数や医療スタッフの計画的養成を所掌する医政局の見通し違いが、現状の医師不足と医療現場での長時間過重労働の原因の一つであることは間違いない。そして労働基準法を厳格に適用していけば、現状の医療体制の相当部分を縮小しないかぎり、労基法遵守での勤務医の労働環境が実現しないことも確実だと思う。
こうした現実は、連日の過酷な長時間労働で疲労困憊していく勤務医も不幸だし、医療提供体制の恩恵に与るはずの国民にとっても有り難いことではない。勤務医の過重労働軽減の為に医療を受ける患者や国民が協力できることは無いのか。また医療に対する過大な期待や幻想を少し縮めることによって、医療提供体制の負担を軽くできる余地は無いのだろうか。
医療者も行政も患者や国民も、それぞれが出来る範囲や限界を示して説明し、相互理解する機会が必要だと思う。
法務業の末席様
コメントありがとうございます。
>厚労省の誰が言ったのか疑問に思っていました。
私も同じく思っておりましたので、会見時に中林院長にお尋ねしました次第です。
その経過は、こちらにも書いてございますので、
またご参照いただけましたら幸いにございます。
https://lohasmedical.jp/blog/2009/04/post_1695.php#more
>こうした現実は、連日の過酷な長時間労働で疲労困憊していく勤務医も不幸だし、医療提供体制の恩恵に与るはずの国民にとっても有り難いことではない。勤務医の過重労働軽減の為に医療を受ける患者や国民が協力できることは無いのか。また医療に対する過大な期待や幻想を少し縮めることによって、医療提供体制の負担を軽くできる余地は無いのだろうか。
ごもっともと存じます。
記事中には書けませんでしたが、
日本医療機能評価機構の河北博文専務理事が、
「都病協で、救命センターを集約化するシミュレーションを行っているところだ」
と仰っていました。
こうしたことなども、医療側から提案できる一つの手立てなのかもしれないと思った次第です。
私自身も、こうしたマスメディアでは伝えられない医療側の動き、
患者側の動きなどを双方に伝えていくことで、
法務業の末席様の仰る
「それぞれが出来る範囲や限界を示して説明し、相互理解する機会」
につなげていくことができれば、と思っております。
> 法務業の末席さま
> 医療に対する過大な期待や幻想を少し縮める
これがどうしてなかなか難しいなと診療していて常日頃感じます。
やっぱりマスコミの影響が大きいんだろうな。