薬価維持特例の試行的実施に向けて (2) ─ 中医協・薬価専門部会
■ 「現行制度で国内メーカーが経営難に陥るのか説明を」 ─ 中川委員
[遠藤久夫部会長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
ありがとうございました。事務局(保険局医療課)で、今までの議論をまとめていただいた。それから、専門委員から追加的なデータが提出された。その両方について(の質問・意見)で結構。どの分野でも結構なので、ご意見を頂きたい。中川委員、どうぞ。
[中川俊男委員(日本医師会常任理事)]
長野専門委員が「業界トップ以上のことは言えない」とくぎを刺したので、質問するのもちょっと......、力が落ちたのだが。
(資料)「薬─3」(厚労省の論点整理案)の1(薬価維持特例を導入する必要性)。これがクリアされていない。なぜ、薬価維持特例を導入するかという説明が、6月3日のヒアリングでも、はなはだ不十分だったと思っている。
地域医療が崩壊して、地域医療全体の底上げが求められている中、医療費財源を充てるのだから、国民が納得するような説明がないと、この特例は認められないと思う。
もう一度お聞きするが、現行制度のままで、国内メーカーが経営難に陥るとか、新薬の開発能力が低下するというエビデンスのある説明をしていただきたい。
それと、外資系メーカーだけになったときに、どういう不都合が日本の医薬品提供に起こるのかという説明も明確でない。それから、グローバルメガファーマを目指すというのが本音だと思うので、私もそのつもりで申し上げる。
販売を......、グローバルにするわけですよね。各国の医療制度の中で、そのルールに沿って販売をしていく。そうすると、日本国内のこのルール、今はこういうルールだが、薬価維持特例を導入しようと、こういうことを各国でするのか。答えは違うと思う。
6月3日の資料の8ページ(薬価制度改革の必要性─研究開発投資の回収と再投資)の図。今日も(資料として)お出しいただいているが。
Aの面積(研究開発投資額)とBの面積(販売額)の話。これは1品目なのか、メーカー全体の品目なのかということも含めて、まだはっきりしていない。
ひじょーーに、ぼやっとしたイメージ図だと思う。
で、A(研究開発投資額)をB(販売額)が上回らなければならないと。私は、「販売額」と書いてあるから、「これは利益ではないか」と聞いたら「そうだ」と言い換えたが。
このですね、こういう......、ま、申し訳ないけど、ずさんに近いイメージ図で、これが大事だから薬価維持特例を導入しなければならないという説明だが、どうも、納得できる説明を頂いていないというのが本音。
時間がないので、もう1つだけ言うが、この(厚労省の)「論点案」の2(薬価維持特例の導入による患者等へのメリットを確保するための方策)。これは、私は議論のすり替えだと思う。
例えば、未承認薬・未承認適応の解消とドラッグラグを起こさないようにすることは、薬価維持特例導入の条件ではなくて、これは製薬メーカーとして、医療に携わるメーカーとして、当然やらなければならない企業の姿勢だと思う。
それを条件......、条件というか、薬価維持特例を導入する患者へのメリットというのは、論点整理として違うのではないかと思う。以上。
[遠藤部会長(中医協会長)]
はい。今、中川委員がおっしゃった内容で、「不明な所がたくさんある」と。今、長野専門委員が一部でもお答えできるものがあれば手短にお願いしたいと思う。
それともう1点、中川委員がおっしゃったことと関連するので確認したいのだが、「未承認薬等開発支援センター」という非常に素晴らしい構想があるが、これは薬価維持特例とセットになった話なのだろうか? つまり、薬価維持特例が通らなければ、この話もなくなると、そのように業界は考えているのかどうか。そこを確認したい。
[長野明専門委員(第一三共常務執行役員信頼性保証本部長)]
中川先生からご指摘いただいた内資の経営状況、それから内資が困窮し始めているのか、日本市場が外資だけになってしまうのかという質問について、私から答える。
昨年の9月に出させていただいた4社。内資系の売上高4番手まで。武田さん、アステラスさん、エーザイさん、そして第一三共。4社はまず、売上高営業利益、これはグローバル。日本で約半分弱の売上げがある。50%以上は海外で売り上げている。
トータルの営業利益率、利益額はこの2年間、激減している。その理由は、研究開発投資額が急騰しているということ。その理由は、何とか早く良いものを出したいし、海外の大きな企業をキャッチアップしたいという想いで、スピードアップしている。それで研究開発投資額が結果的に多くなっている。これは後日、必要があればできる限りの資料を出したい。
仮に、薬価維持特例を入れなければ日本企業がつぶれるのかという質問だが、この2~3年でつぶれることはないが、とにかくキャッチアップするために研究開発投資額を続ける覚悟をしている。そうすると、5年先、10年先は今のままの制度では、なかなか、日本では立ち行かなくなると思う。
その際、日本企業だけつぶれて外国企業だけ残ったときにどうなるのか。たぶん、日本企業がつぶれると、海外の企業の皆様も日本の優先順位を上げにくいのではないかという気がする。
私は産業界に位置する者だが、保険医療に資することやドラッグラグの解消などを考えると、やはり2年後、3年後に薬価維持特例を一定の原則で、一定のルール下でスタートさせていただいて、ぜひ、私が申し上げたような、あるいは企業経営トップが(次回のヒアリングなどで)申し上げることが偽りのないということを確認していただきたい。全く詭弁でも方便でもない。
それと......。
[遠藤部会長(中医協会長)]
手短に。
[長野専門委員(第一三共)]
「未承認薬等開発支援センター」だが、もう登記を済ませて事業を始めている。私たち専門委員は、薬価維持特例を承認いただくように頑張るということで会員各社を募り、スタートしている。
薬価維持特例がなかったら放棄するかというと、企業も経済行動と、社会的スタンスでの行動がある。今さら引けない。ここは一生懸命やるしかないというところ。
[遠藤部会長(中医協会長)]
分かりました。ありがとうございます。(薬価維持特例との)関係が明確になった。どうもありがとうございます。
また、論点1(薬価維持特例を導入する必要性)という極めてベーシックなところで十分な説明がないという中川委員のご発言があるので、それに対応できる資料などがあればご準備いただきたい。ほかに......。(中川委員、山本委員が挙手)
山本委員......、では中川委員、山本委員の順で。
[中川男委員(日医)]
今の説明、5年後、10年後という表現だと、なかなかエビデンスにならない。やはり、素人でも分かるような経営状態とかいろいろな数字を出していただいて説明してください。
それともう1つ、重大なことを言われた。「未承認薬等開発支援センター」、これ、部会長が「セットなのか」と質問して、「そうだ」とおっしゃった。もう、こっちが進んでいると、何か中医協に対して、もう進んでいて引くに引けないんだと、どうするんだということで、論点2(患者等へのメリットを確保するための方策)はできた話になっているのかなと考えてしまう、今の発言は。重大な発言だと思うが、どうですか、それは。
[長野専門委員(第一三共)]
あの、言葉足らずで、誤解......。(遠藤部会長が割り込む)
[遠藤部会長(中医協会長)]
いえ、(長野委員は)たぶん違う意味合いで言ったと思う。
[長野専門委員(第一三共)]
あの......、開き直ってはいません。もう法人登記で事業をスタートしている。これは一生懸命やって......(遠藤部会長、また割り込む)
[遠藤部会長(中医協会長)]
ですから、薬価維持特例が通らなくても、それはその事業としてお進めになると、そういうふうにおっしゃっている。
[長野専門委員(第一三共)]
分かりました。
[遠藤部会長(中医協会長)]
では、山本委員、どうぞ。
【目次】
P2 → 「現行制度で国内メーカーが経営難に陥るのか説明を」 ─ 中川委員
P3 → 「十分に理解できていないので、もう少し説明が必要」 ─ 山本委員
P4 → 「仮に踏み出すなら、恐る恐る石橋を叩きながら」 ─ 対馬委員
P5 → 「イノベーションの評価がバックグラウンドにある」 ─ 松谷専門委員