薬価維持特例の試行的実施に向けて (3)
■ 「外資と内資が一体となって投資・生産する時代」 ─ 北村委員
[北村光一委員(経団連社会保障委員会医療改革部会長代理) ]
さまざまなご説明、どうもありがとうございました。私も、これからの日本経済は従来のような空洞化とか、工場が(海)外に出て行くという次元ではなくて、外資と日本の資本が一体となって、世界の市場の中でどこに投資してどこで生産するかという時代に大きく変わろうとしているという印象を受けている。
きっと、製薬業界さんも同じような状況にあるのではないかと思う。そのとき、長谷川社長さんがおっしゃった、「外資だけになると外資がきちんと生産して供給責任を果たしてくれる」というお話、私も「そうなのかな」と思うが、その前提が治験とか日本国内のさまざまな規制とか慣行とか、いろいろなものが外資にとって非常に魅力的でない部分が是正されてはじめて、外資にとって日本の人が必要とする薬品などが供給されると思う。
本当に、そのような隘路(あいろ)を打開できるのかどうか、私はちょっと疑問に感じるのだが、もしよろしければ。.
[長谷川閑史・武田薬品社長(日本製薬工業協会副会長)]
私は、この説明を申し上げたときに、「単純に申し上げれば」というふうに申し上げた。「日本の製薬企業がこの国からなくなったらどうなるか」という論議自体にいかほどの意味があるかということを私は考えている。
と申しましたのは、1つは雇用の問題と同時に、特に大手の4社は、売上の5割、利益の4割を海外で稼いで日本で税金を納め、国保に貢献している。
そのトータルが年間4000~5000億円になるのではないか。産業として見れば自動車、電器、機械に次いで、納税額が大きい。北村先生がおっしゃったように、薬については外資が形の上では相当埋めてもらうことになると思うが、日本の企業がやっていることをそのまま全部代替できるとは思わない。
特に一番大事なことは、パンデミックになった時にワクチンを日本の企業がつくれない。今、厚労省は、大変申し訳ないが、(新型インフルエンザのワクチンを)最初は2400万人分(つくる予定だったが)、1700万人分ぐらいしか結果としてできないから、輸入しなければならないとおっしゃっているが、輸入するときに、「やはりお金持ちの国が輸入して後進国に回らなくてもいいのか」、あるいは「世界の先進国は全部自分の国で賄っている」という状況の中で、そういうことがなくていいのかを考えると、私はあのように申し上げたが、本音は「絶対に日本における製薬メーカーが必要である」と固く信じている。
また、その存在意義も十分あるということが今の説明で理解いただけると思う。加えて、ライフサイエンスというのは、これからまだまだ伸びる産業。そのライフサイエンスの日本人による研究開発の芽が途絶えるということになれば、それは日本にとっても大きな痛手であると思う。
日本は、年間20兆円ぐらいの食料、エネルギー、資源を輸入しなければこの生活を維持できない国であって、それをどこから稼ぐかということになれば、やはり企業がしっかり頑張って金を稼いで税金を納めない限り原資は出てこないのも事実。ちょっと(話が)それたが、ありがとうございます。
[遠藤部会長(中医協会長)]
小林委員、どうぞ。
【目次】
P2 → 「海外で稼いだ利益を日本に納税している」 ─ 長谷川氏(日薬連)
P3 → 「日本市場の魅力が非常に落ちてきている」 ─ 関口氏(製薬協)
P4 → 「外資系だけでは薬剤の供給体制に支障をきたすか」 ─ 中川委員(日医)
P5 → 「外資と内資が一体となって投資・生産する時代」 ─ 北村委員(経団連)
P6 → 「医薬品の研究開発は税制などで支援されている」 ─ 小林委員(全国健康保険協会)
P7 → 「試してみる必要性はあるのではないか」 ─ 山本委員(日薬)
P8 → 「効率化のメカニズムが働かないところに大きな懸念」 ─ 藤原委員(日医)
P9 → 「維持特例ということも検討していいのではないか」 ─ 小島委員(連合)
P10 → 「新たな医療費財源が発生する」 ─ 中川委員(日医)