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ニュース〜医療の今がわかる

薬価維持特例の試行的実施に向けて (3)

■ 「試してみる必要性はあるのではないか」 ─ 山本委員
 

[山本信夫委員(日本薬剤師会副会長)]
 ご説明ありがとうございました。実は私、今日決心してきたことが少し揺らいでいて、どうしようか悩んでいるが、外資と内資の話を長谷川社長がされて、外資がこうだ、内資はこうだと、どうもお立場が違う話のようにも思えるし、どちらが日本の方でどちらが外国の方なのか分からない答えのようだが......。

 いずれにしても、中川委員とのやり取りの中でも、先ほどの北村委員との(やり取り)もそうだが、そもそも、最後にお話しになった、国内にそうした産業が必要だということについては、たぶんご認識をされているんだろうという理解でよろしいだろうか?

[長谷川閑史・武田薬品社長(日本製薬工業協会副会長)]
 はい、当然そうです。

[山本委員(日薬)]
 ですよね。そうしますと、薬価そのものがそうしたものを支えるという意味では、「外国で食べられるから、(薬価維持特例は)別になくてもいいよ」という言い様については、いささか私の決心を狂わせるのだが......。

 少なくとも、日本国内で外資にせよ内資にせよ、そうしたものを開発した者が医療の現場でなるべく早く使える環境をつくっていく。それを担保していくのがもし医療の部分であれば、先ほど小林委員が言われた意味で別の予算の薬価の部分で言えば、こうした薬価維持の付け方ということであれば、そのことがあってもなくてもいいんだというご主張はいささか私には納得できない。

 「あってもなくてもいいんだ」ということであれば、なぜ提案されたのかという疑問が生じる。たぶん、お言葉の違いだと思うが、その辺りはいかがだろうか?

[遠藤久夫部会長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
 長谷川社長、お願いします。

[長谷川社長(製薬協副会長)]
 私がご説明した時に、「単純に申し上げれば」といった言い方が、どうやら問題と誤解を生んでいるようだが、「日本が駄目になって外資だけになったらどうなるか」というご質問に単純にお答えしただけ。

 その場合、企業経営者としては、「日本が駄目でも海外で食っていけるから心配しない」ということは全く考えていない。私どもは医薬品産業として、国内の企業が医療の向上、あるいは患者さんのQOLの改善にこれまでも貢献してきたし、これからも十分貢献できると考えている。

 例えば、世界でベスト100......。売上の順番からいくと、100品目の中で日本オリジンの薬がどれだけあるかということを見ると、13品目ある。これは日本のGDPの比率は世界の10%弱だし、人口の比率に至っては4%かそれぐらいだったと思うが、そういうことから考えると、相当頑張っている。
 今後も、そのことを続けていくことが産業としての使命だし、その結果、医療サービスを提供すると同時に、医業の正当な事業活動の結果として納税するということを今後もぜひ続けていきたいということ。私の言い様が誤解を招いたようであれば、それはお詫びして訂正させていただく。

[遠藤部会長(中医協会長)]
 山本委員、どうぞ。

[山本委員(日薬)]
 分かりました。そういうことであれば、それを踏まえて考えると、今回の資料を拝見する限り、前回も同様の議論があったと思うが......。

企業としてはどういうお立場かというと、やはり大変苦しんでいらっしゃる中で、しかも必要な社会的責任を果たすためにどうするか。せめて新しい医薬品を市場に出すための費用を担保するための薬価制度を維持できるのであれば、それも提案。
 ただ、その反対給付としてさまざまな提案をされているとすれば、よく......。ま、ご苦労されている中で、辛い中で、されているので......。なかなか社長の立場では言いにくいのだろうが、そこはよく理解したつもり。

 (薬価維持特例は)新しいやり方なので、特に、「(先発品)全部のものを」というのはいささか乱暴に過ぎるかもしれないが、少なくとも今まで、昨年、一昨年から議論した中で......。

 一度は試しに......。医療の30兆円のこういうお金の中で試すのはいささか乱暴に過ぎるかもしれないが、そうしたものを試してみる。あるいは、ただ慎重に進めるという意味では、試してみる必要性はあるのではないかという理解。

 ただ1点、この資料にもあるように、一番最後の「まとめ」のページの5つの項目について、ここは「まとめ」なので、きちんと担保していただけるのかなと......。

まとめ
・ 製薬産業は、高騰する研究開発費を確保・捻出し、グローバル競争を勝ち抜くために、効率化・合理化のための施策を実行してきている。
・ 国内企業は製品の供給に加え、日本における研究開発、生産ラインの確保などにおいて重要な役割を担っている。
・ 未承認薬への対応は製薬産業の社会的責任の一つとも言えるが、各社が迅速かつ積極的に対応していくためには、業界の主体的な対応に加え、個々の企業において未承認薬開発に耐え得る収益を確保する仕組みが必要である。
・ 新薬と後発品の役割を明確にした欧米型の市場構造に移行することにより、日本での新薬の上市を欧米並みに早めていくことが重要であり、ドラッグラグの解消や未承認薬の開発促進のため、できるだけ早い薬価維持特例の導入が必要である。
・ なお、現行制度下においては、競合品がない医薬品であっても、また単品単価で取引されている医薬品であっても、薬価改定を経るたびに価格が下落する場合がある。これは現行制度と―般的な市場取引とのギャップと考えられるため、補正する機能が必要である。
 イノベーション、あるいは未承認薬、あるいは未承認効能等についても十分に解消に向けて努力されていくということであれば、その辺を評価した上で、そこは......、まあ、試してみたらいかがかなという気がする。

 それとは別にお伺いしたいが、それと同時に後発品の話になるので......、あまり聞いては良くないのかもしれないが、1つお伺いしたいのは、なぜこの時期に配合剤を、その代替されるのか。(委員ら、笑い)

 しかも、こういうことを提案して、かつ、なぜ特許切れ間際なのにという、企業のお立場というのは、いささかその......、どういう理由なのかなと、そこが私にはなかなか理解できにくい。その、「なぜ?」というところと、「どうしてそういうものが出てくるんだ」ということを教えていただきたいと思う。

[遠藤部会長(中医協会長)]
 そうすると、最初の(質問の)ほうでは、(資料の)まとめ、あるいは未承認薬の問題解消について、「本気で積極的にやっていただけるんですね?」ということを山本委員がおっしゃったので、それについてのお考えをお聞きしたいということ。

 次いで配合剤。ここのところ出てきているのではないかと。その話と、今議論しているのに、こういうタイミングでなぜ配合剤が出てくるのかという、その辺についてのお考えがあればということ。長谷川社長、どうぞ。

[長谷川社長(製薬協副会長)]
 まず、「まとめ」に挙げている項目についても、私どもは真摯に対応していくということをこの場でお誓い申し上げる。例えば、未承認薬について、「結果的にどこも手を上げなかったらどうするのか」というご懸念があろうかと思うが、もし不幸にして、そういうことになれば、どこか大手がやはり結果としてやらざるを得ないということもあり得るかなと腹はくくっている。

 それから、もう1つの配合剤の問題については、製薬協、日薬連というよりは私見ととらえていただきたいが、私の理解するところによると、配合剤そのものが日本で承認されるようになったのはつい最近のこと。2005年以降ぐらいだろうか。
 従って、それ以降に治験などを各製薬メーカーがやり出したので、例えば当社の治験などは途中で予定の結果が出なくて、もう1回やり直したりしたので、そういったことがあってたまたまこういうタイミングになって、それが結果として特許切れの対策か、あるいはジェネリックを抑制することになるのではないかと理解される不幸な結果になっている部分があると思う。

 メーカーの立場からすれば、今後は新薬の開発の段階から当然、患者様の利便性も考えて、(配)合剤がアディショナル・ベネフィットを提供できるのであれば、平行して開発する、あるいは直ちに開発の承認をスタートする、そういった形にやることによって、今のような形で(特許切れ)ギリギリに出るということは、恐らくほとんどなくなるのではないかと、私は、私見として考えている。

[遠藤部会長(中医協会長)]
 ありがとうございました。山本委員、どうぞ。

[山本委員(日薬)]
 前段は理解させていただいた。(配)合剤に関しては、先ほどのプレゼンテーションの中で長谷川さんが医師のご家庭だということで、たぶん薬局のことはご理解いただけないのかなと思って聞いていたが......。(委員ら、笑い) 

 私、ずっと薬局の生まれなので......。(ここで、「親戚が薬局です」との声) あ......、ありがとうございます。
そういった意味で言えば、今の形......。もともとのスタートから目的を遂げた配合剤というのはあり得るのかもしれない、将来的に。ただ、今出ているのはそうではなく、「あっちを持ってきて、こっちを持ってきて、足して2で割る」みたいな体裁になっているので、そうしたことからすると、現に市場にある単剤で十分に対応できるものではないか。

 にもかかわらず......。そうしたものを開発されるにはいろいろなご事情があるとは思うが、そこで先ほどの薬局の事情だが、少なくとも大変な負担を私ども抱えなくてはならない。後発品の使用促進という中で、ここでも遠藤先生から「薬局がボトルネックだぞ」というご指摘を受けたように大変厳しい環境の中にいる。

 その中で、少なくとも現在の配合剤は市場にあるものを使えば済むのではないかという気がするので、そうした薬局の在庫の負担、その大変さも、もしご親戚がおられるのでしたら......(委員ら、笑い)、お聞きになられて、そうした辛さも感じていただきたい。

 もう1点は、もうちょっと節操のある......、というと言葉があれだが、節度ある開発をしていただけないだろうか。少しこう......、天下の武田さんにしては少し品がないような気がするので、ぜひその辺りについては、お考えいただかないとなかなか......、(薬価維持特例の導入に向けて)お手伝いをするにしても、それが大変なマイナス要因になる可能性が大きい。現にかなり問題になっているので、そこはぜひ、お考えいただきたい。

[遠藤部会長(中医協会長)]
 長谷川社長、何かあれば。

[長谷川社長(製薬協副会長)]
 ごく簡単に、山本委員、あるいは、たぶんここにご出席の他の委員の方も同じご懸念を持っているであろうということがよく分かった。従って、自社のみならず、製薬協、日薬連にも(中医協委員の)ご懸念をきちんと伝えて、できるだけそういう懸念を惹起するような(配合剤の)開発をやらないようにということを私から責任を持って伝えさせていただきたいと思う。

[遠藤部会長(中医協会長)]
 よろしくお願いいたします。藤原委員、どうぞ。

 【目次】
 P2 → 「海外で稼いだ利益を日本に納税している」 ─ 長谷川氏(日薬連)
 P3 → 「日本市場の魅力が非常に落ちてきている」 ─ 関口氏(製薬協)
 P4 → 「外資系だけでは薬剤の供給体制に支障をきたすか」 ─ 中川委員(日医)
 P5 → 「外資と内資が一体となって投資・生産する時代」 ─ 北村委員(経団連)
 P6 → 「医薬品の研究開発は税制などで支援されている」 ─ 小林委員(全国健康保険協会)
 P7 → 「試してみる必要性はあるのではないか」 ─ 山本委員(日薬)
 P8 → 「効率化のメカニズムが働かないところに大きな懸念」 ─ 藤原委員(日医)
 P9 → 「維持特例ということも検討していいのではないか」 ─ 小島委員(連合)
 P10 → 「新たな医療費財源が発生する」 ─ 中川委員(日医)

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