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ニュース〜医療の今がわかる

薬価維持特例の試行的実施に向けて (3)

■ 「効率化のメカニズムが働かないところに大きな懸念」 ─ 藤原委員
 

[藤原淳委員(日本医師会常任理事)]
 素朴な質問だが、企業は市場原理というか、基本的には競争の中にあると思う。この薬価維持特例というのは、安定的な収入をこの仕組みの中で求めるということになるが、これでは市場の評価......。

 要するに、効率化のメカニズムが働かないというところにわれわれ大きな懸念をしている。こういう疑問を持っている方は多いのではないかと思うが、そこのところをどうお考えなのか。もし、これが企業の育成という観点なら、この場でこの話を議論するのは、少し、ちょっと違う部分があるかもしれないという思いで聞いている。そこを教えていただきたい。

[遠藤久夫部会長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
 長谷川社長、お願いします。

[長谷川閑史・武田薬品社長(日本製薬工業協会副会長)]
 もともと、この提案をさせていただいた時から業界として申し上げているのは、トータルのコストを増やす、あるいは効率性を損なうという意図は全く持っていない。医療費の中で薬剤費の比率を増やしていただきたいということを、この制度をもってお願いしているつもりは全くない。

 結果として、特許保護期間中のものの薬価維持特例を実施していただく一方で棲み分けをして、ジェネリックサイドのほうの促進をしていただく、あるいは私が申し上げたように、それがうまく回っていくようになれば、新薬メーカーも当然、特許保護期間中のもののほうが長期収載よりも儲かるわけだし、患者さんにとっての利便性もクオリティオブライフの改善にも貢献できるから、そちらをプロモートすることになって、恐らくジェネリックへのシフトもそういう形で、結果として加速されるのではないかと思う。

 私どもとしては、そういうことによって全体のバランスが今より、より良い形になるということを願っている。決して、効率性を損なうようには、われわれとしては考えていない。

[遠藤部会長(中医協会長)]
 藤原委員、どうぞ。

[藤原委員(日医)]
 少なくとも、そういった(薬価)維持特例になった段階で、競争ということは一応避けられるという状況になると思う。

 それから後発医薬品の件だが、一定期間が過ぎたらすぐ......。これはここで何回も出た話だが、改めてお聞きしたいが、こうした大企業の先発医薬品が非常に品質も良いし、安定供給もできるし、いろいろな所で知られているという状況の中で、値段を下げた時にはやはり、そこで、競争に......。

 今、日本の国で後発品を育てるということで、30%を目標にやっているところだが、それとも競合してしまうような状況が起きるということもあるが、その辺について、お答え......、あの、教えていただければと思う。

[遠藤部会長(中医協会長)]
 長谷川社長、よろしいですか。

[長谷川社長(製薬協副会長)]
 まず、一度確認させていただきたいが、薬価からどれだけディスカウントして売るかという販売は、価格決定権は医薬品の卸さんにあってl、メーカーにはない。従って、この薬価維持特例ができたらメーカーが、例えば指示して薬価差を少なくするという影響力の行使はできないということが1つ。

 それからもう1つは......、これはもうサンクションなので、専門委員から何度も説明を申し上げたと思うが、大きな市場、例えば生活習慣病的な市場でいくつもの製品があれば競争が激しいので、結果として、価格である程度勝負するという部分が卸さんの立場で出てきて、不幸にして、それは薬価維持特例の範囲に入らないというケースが出てくるんではないかとわれわれは想像している。
 この辺は山本先生がおっしゃったように、慎重にやっていく中で見極めていただくということも、結果としては必要ではないかと思う。

 それで、もう1つ藤原先生がおっしゃった件は、私、質問の趣旨がよく分かりませんので、もし、もうちょっと明快に言っていただければお答えするように努力する。

[遠藤部会長(中医協会長)]
 藤原委員、もう一度お願いいたします。

[藤原委員(日医)]
 表の中でも......、たぶん、新薬として切れた時に後発医薬品として値段を下げるという状況になるわけだが、これについては、これまでルール......、説明あったが......、要するに、今の後発医薬品メーカーと、先発品が後発医薬品に落ちた時に、その、ま......、要するに値段が急に下がるということ。

 今、自由に下がっていると思うが、そういったことで、後発市場においても先発メーカーが独占的な状況に陥るということは、それは数パーセント、何パーセントの差はあるにしても、あり得ることなので、そういったことは、今後、今、後発メーカーを......、ある意味では後発医薬品を使おうということで、国としても目標としてやっているわけだが、その場合、それは、その......、ま、そういった形で、市場の薬品の価格を下げることにつながらないんではないかなという懸念があるわけで、えー、質問したわけです。

[遠藤部会長(中医協会長)]
 よろしいでしょうか? (質問の)中身について。

[長谷川社長(製薬協副会長)]
 もうございません。それについては、長期収載品あるいはジェネリック品の値決めなどは、もちろん業界も意見を申し上げるが、最終的にはこういう所、あるいは行政でお決めいただくことであるので、結果としてわれわれはそれに従って市場で競争するということだけ。

[遠藤部会長(中医協会長)]
 はい。ありがとうございます。ほかにございますか。小島委員、どうぞ。

 【目次】
 P2 → 「海外で稼いだ利益を日本に納税している」 ─ 長谷川氏(日薬連)
 P3 → 「日本市場の魅力が非常に落ちてきている」 ─ 関口氏(製薬協)
 P4 → 「外資系だけでは薬剤の供給体制に支障をきたすか」 ─ 中川委員(日医)
 P5 → 「外資と内資が一体となって投資・生産する時代」 ─ 北村委員(経団連)
 P6 → 「医薬品の研究開発は税制などで支援されている」 ─ 小林委員(全国健康保険協会)
 P7 → 「試してみる必要性はあるのではないか」 ─ 山本委員(日薬)
 P8 → 「効率化のメカニズムが働かないところに大きな懸念」 ─ 藤原委員(日医)
 P9 → 「維持特例ということも検討していいのではないか」 ─ 小島委員(連合)
 P10 → 「新たな医療費財源が発生する」 ─ 中川委員(日医)


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