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ニュース〜医療の今がわかる

「DPCによる急性期医療の評価と今後の方向性」 ─ 松田晋哉教授の講演

■ 「地域医療指数」はまだ明確ではない
 

[松田晋哉・産業医科大医学部公衆衛生学教授]
 地域における自施設の位置付けの明確化という話ですが、(4月から新機能評価係数として導入される)「地域医療指数」というのは医療計画に照らし合わせて、各病院が地域においてどのような機能を果たしているかということを評価する。これはまだ明確ではありません。

 今回、(新機能評価係数として)入れましたけれども、具体化するための材料が足りなかったという現状で、とりあえずこの方向性を示すということで、今あるもの(データ)で暫定的に入っています。これもたぶん、これから何年間かかけてもう少し意味のあるものに変えていくことになるだろうと思います。

 ただ、それに対応するために一番大事なことはやはり地域における自分の施設の位置付けを明確にできていること。ビジョンの話です。自分の病院が地域においてどういう役割を果たすことが期待されているのか。果たそうとしているのか。それさえ間違えなければ、たぶんそんなに新しい係数が出てきても問題ないだろうと思います。

 やはり、医療計画との整合性というのは非常に重要になってきますし、医療機能の「見える化」が重要になってきます。というのは、たぶん4月から日本経済新聞とか読売新聞などがDPCのデータを使っていろんな記事を書いてくるだろうと思います。僕たちもかなり取材を受けていますので......。

 そうすると、そういうDPCのデータを使って、患者さん、国民に対していろいろな情報発信がこれから行われる。そうすると、医療機能の「見える化」がかなり注視されることになってきますので、そういう意味で皆さんの所(病院)はそれに対して応えられるだけの準備をしなければならないだろうと思います。そういう意味で、医療機能の分化がとても重要になってくる。

 今日はDPCの話で急性期病院が中心なのですが、実は急性期病院が急性期病院としてやっていくためには、その受け皿となるポストアキュートの医療施設の充実がどうしても不可欠だろうと考えています。
 これから団塊の世代......、急性期病院に来る患者さんがボリュームとしては増えてきます。増えてきたときに、たくさんやってくる患者さんをこなすためには、どうしても在院日数を短くしなければならない。そうすると、後方病院との連携がとても重要になってきます。これをどうしていくのかが非常に重要になってきます。

 よく、いろいろな所で「病院の淘汰」という発想が......、シンポジウムや雑誌の特集などで見たりするのですが、私はそれはナンセンスだと考えています。病院はどんな病院でも必ず地域においてある機能を持っています。病院はやっぱり在り続けないといけない。在り続けるためには、自分の病院の機能が明確になっていることが重要だろうと思います。

 そう考えるとですね、今、いろいろな所でDPCのデータを使ってベンチマーキングをやっていて、個別ケースの収支だけが議論されています。そこで「ここを削減しよう」というコストカッティングの議論が中心になっていますが、それだけではたぶん医療は良くならないと思います。むしろ、かえって悪い方向に行ってしまうかもしれない。

 むしろ大事なことは、各病院が地域の中でどういう位置付けなのか、それをどう持っていくのかということを議論することが大事だろうと思います。DPCのデータは公開されています。それぞれの地域で、どこの病院が一番何を診ているかということがもう分かるような時代になります。
 

【目次】
 P2 → 急性期病院は40万床ぐらいが妥当
 P3 → 支払いのためにDPCをつくったわけではない
 P4 → 地域医療の新しいガバナンス機能が必要になる
 P5 → アクセシビリティー評価のため情報を整理する必要がある
 P6 → 急性期病院の評価は機能係数だけでなく複合的に
 P7 → 救急をどのように評価するかが難しい
 P8 → 救急は連携体制を評価しなければいけない
 P9 → 救急の評価はロジックを少し変える必要がある
 P10 → 「地域医療指数」はまだ明確ではない
 P11 → 集約化をやっていかなければいけない
 P12 → DPC病院の将来は「救急」「周産期」「がん」がキーワード
 P13 → 慢性期の病院に関して、ちょっと僕は分からない

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