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「DPCによる急性期医療の評価と今後の方向性」 ─ 松田晋哉教授の講演

■ 救急の評価はロジックを少し変える必要がある
 

[松田晋哉・産業医科大医学部公衆衛生学教授]
 それから、(研究班では)救急患者の死亡退院に関連する要因の分析というのをやっていました。病院によって、どれぐらい重症度が違うのかということを何かで見ないといけない。そのためには、死亡退院に関連するデータが非常に重要だろうと思います。
 要するに、死亡する患者さんが多いということは、それだけ重症な患者さんを受け入れていることになりますし、そういうものを補正してなおかつ死亡率が低いなら、救急の質が高いということになります。

 例えば、高齢者ほど死にやすいですし、呼吸不全、心不全など臓器不全があると死亡確率が高くなる。非常に大事なことは、救命救急センターはやはり死亡率が低くなります。それから、専従医がいる救急部門はやはり死亡率が低くなります。
 ということは、構造としてそういう高度の機能を持っている、重装備である救急部門というのは医療の質ということから見たときに、望ましい方向になる。ならば、こういうものを何か係数化できないかという発想はたぶんあると思います。

 もう1つ大事なことは、在院日数がマイナスのケースです。これは何かと言いますと、入院後3日目まで、72時間以内にどのぐらいの医療資源を投入しているかということが重要な機能になります。初期に手厚い医療ができるような救急部門を持った医療施設というのは、それなりの機能を持っている。たぶん、このようなデータをうまく積み上げながらこれから3年ぐらいかけて救急の新しい評価方法を考えていくことになるだろうと思います。

 僕たちが救急の評価をするために、各医療機関に例えば(重症度を判定する)「アパッチスコア」を計算するというお願いをしたのですが、非常に忙しい救急外来で「アパッチスコア」を入れるのはなかなか大変です。
 であるなら、例えば、人工呼吸器を付けた患者さんがどれぐらいいるのかを見ていくと、例えば、必要ない患者さんに人工呼吸器を付けるということはたぶん日本の医師はしないだろうと思うのですが......。例えば、奈良県のような事件が起こるとちょっと心配になっちゃうんですが......。

 今の「E・Fファイル」(診療報酬請求情報)から簡単に取れるような情報で、病院が受け入れている(患者の)重症度みたいなものを評価できないかということを考えています。
 今後、研究班としていろいろな提案をしていって、データに基づいて新しい評価を考えていくのが私たちの使命だろうと考えています。

 救急医療をどのように評価するか。まとめになりますが、単に(救急搬送の)数だけでは不十分だろう。内容や連携の状況なども評価する必要があります。
 そもそも、包括になじまない傷病群があります。例えば、多発外傷だったり精神疾患を伴う患者さんだったり、到着時に死亡している心停止状態で来るような患者さん。心停止状態で来るような患者さんは最初から赤字です。出来高でやっても包括でやっても赤字です。
 そうすると、そういうものをそもそもDPCで評価していいのかということがありますので、こういうところも見ていかなければいけないのかなと思います。

 少しロジックを変える必要があるかもしれません。DPCは、「ある傷病に対してどういうプロシージャをやったか」ということで分類を作っていますけれども、救急はもしかしたら「どういうプロシージャをやったのか」ということを先に出して分類を作っていくほうがもしかしたら適切なのかもしれません。あと、外来対応をどうするか。体制の評価。この辺が非常に大事です。
 

【目次】
 P2 → 急性期病院は40万床ぐらいが妥当
 P3 → 支払いのためにDPCをつくったわけではない
 P4 → 地域医療の新しいガバナンス機能が必要になる
 P5 → アクセシビリティー評価のため情報を整理する必要がある
 P6 → 急性期病院の評価は機能係数だけでなく複合的に
 P7 → 救急をどのように評価するかが難しい
 P8 → 救急は連携体制を評価しなければいけない
 P9 → 救急の評価はロジックを少し変える必要がある
 P10 → 「地域医療指数」はまだ明確ではない
 P11 → 集約化をやっていかなければいけない
 P12 → DPC病院の将来は「救急」「周産期」「がん」がキーワード
 P13 → 慢性期の病院に関して、ちょっと僕は分からない

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