「DPCによる急性期医療の評価と今後の方向性」 ─ 松田晋哉教授の講演
■ DPC病院の将来は「救急」「周産期」「がん」がキーワード
[松田晋哉・産業医科大医学部公衆衛生学教授]
DPC病院の将来ですが、急性期医療をやっている病院が低く評価される可能性は非常に少ないと思っています。民主党的に言うと、現政権で言うと、たぶん救急医療、周産期。これは(厚生労働大臣政務官の足立(信也)先生です。がん診療、これは(行政刷新担当相の)仙石(由人)先生です。これ(救急、周産期、がん)がキーワードになってくると思います。
そういう中で、僕は連携を評価できないのかなと思います。ただ単にその病院の機能を評価するだけじゃなくて、やっぱりその間の連携をどのようにやっていくか。病診連携はそれなりに形ができています。でも、これからたぶん大事なのは一般病院の中における連携だろうと思います。水平の連携ですね。これをどのようにやっていくか。
その中で、施設機能の集約化と適正配置をやらなければいけないし、DPCの制度改正というものも、そういうものを方向付ける議論が進むだろうと思います。
残された課題ですが、僕たち(研究班)が非常に問題だなと思っているのは、急性期病院における精神科医療の評価です。例えば、がんなどの難治性患者の精神科的対応をどう評価するか。救急部門における精神科的な対応をどのように評価するか。
あと、認知症(高齢者)です。非常に数が増えてきています。認知症の患者さんの評価は今のDPCでは実はあまりうまくできていません。これをどう評価するか。
それから、チーム医療ですね。(病棟)薬剤師さんとか、(看護師や医療ソーシャルワーカーなど)連携業務の評価をどうしていくか。
例えば、私どもの(産業医科)大学の卒業生で、小野村健太郎(おのむら医院院長)という先生が毎日新聞と組んで「患者塾」というのをやっています。そこでこういう意見が(昨年)11月に出ました。
「大学病院というのは、がんの手術や抗がん剤などの治療をするだけですか? 心のケアはしてくれないのですか?」
がんになると、やっぱり不治の病ですから、とりあえずは......。そうするとやっぱり皆さんは不安になります。医者のほうはそれが当たり前だと思っているので、特段のケアをしていません。でも、考えてみると、患者さんにしてみればとても重要な問題です。
実際、これをDPCのデータで見てみます。例えば、乳がんの患者さんですと、4%ぐらいの患者さんが「様式1」(診療録情報)で「うつ」という形で出てきます。
乳がんでうつになった患者さんで、どれぐらいがきちんとした治療を受けているかというと、例えば、抗うつ剤は20%(弱)しか使っていません。精神科の精神療法を受けている患者さんは10%いません。緩和ケアを受けている患者さんは1%もいないわけです。
やっぱり、検査入院で入った方の不安が非常に高いんです。それに対して急性期病院は全く応えていない。やっぱり、一番最初の所の精神科的なケアみたいなものを急性期病院としてやらなければいけないし、そうなってくると、総合病院における精神科の役割がとても大事だと考えています。これをどう評価するか。
それから、やはり連携をする上でとても重要なのが、看護師とリハスタッフとメディカルソーシャルワーカーです。こういう人たちの連携業務をどのように加算で見ていくのか。これが非常に大きな課題だろうと思います。
実際、リエゾンナース(精神看護の専門看護師)がいる病院は非常に連携がうまくいっています。院内での連携、それから、次の病院との連携。こういうものをきちんと評価していくことも大事だろうと思っています。
【目次】
P2 → 急性期病院は40万床ぐらいが妥当
P3 → 支払いのためにDPCをつくったわけではない
P4 → 地域医療の新しいガバナンス機能が必要になる
P5 → アクセシビリティー評価のため情報を整理する必要がある
P6 → 急性期病院の評価は機能係数だけでなく複合的に
P7 → 救急をどのように評価するかが難しい
P8 → 救急は連携体制を評価しなければいけない
P9 → 救急の評価はロジックを少し変える必要がある
P10 → 「地域医療指数」はまだ明確ではない
P11 → 集約化をやっていかなければいけない
P12 → DPC病院の将来は「救急」「周産期」「がん」がキーワード
P13 → 慢性期の病院に関して、ちょっと僕は分からない