「DPCによる急性期医療の評価と今後の方向性」 ─ 松田晋哉教授の講演
■ 支払いのためにDPCをつくったわけではない
[松田晋哉・産業医科大医学部公衆衛生学教授]
DPCの基本的な考え方は、各患者を「病名」と「行われた医療行為」との組み合わせで分類する方法。ただそれだけです。私たちは支払いのためにDPCをつくってきたわけではなくて、患者分類をつくるということでやってきました。
実際、分類自体は2500ぐらいあります。そのうち、支払いに使われているのは1500程度ですので、そういったところからも分かっていただけるかと思います。
一番大事なことは「DPCで何をやってきたのか」ということですが......。私たちは実はこのDPCの仕組みを一番最初の所からいろいろ説明させていただくのですが、「日本の病院医療の情報の標準化と電子化をやる」ということで、このDPCをつくってきました。
恐らく、今日ここにいらっしゃる皆さまの病院も、電子カルテというのをかなり入れられているだろうと思います。日本の病院は情報化が遅れているので電子カルテというのが入ってきたわけですが、その結果、今どうなっているかというと、全国の病院でそれぞれバラバラの電子カルテが走っていて......。
例えば、産業医科大病院と九州大学病院はお互い電子カルテを使っていますが、互換性が全くないわけです。互換性のない情報化をやってしまったために、日本全体として非常に効率化の悪いものになっていますし、非常にお金が掛かるようになっています。
ここでDPCを考えていただくと、DPCの「P」というのはプロシージャ(Procedure)です。プロシージャに関して、皆さんの病院は非常に優れた電子システムをもう持っていたわけです。それは何かというとレセコンです。レセコンは各患者さんについて、毎日何をどれだけやったのかということがすべて記録されているシステムです。
要するに、(アメリカの医療経済学者Donabedianが提唱した医療の)質を評価するためのストラクチャー(構造)とプロセス(過程)とアウトカム(結果)のうち、一番大事なプロセスのデータがすべて入っているコンピューターシステム、これが実はレセプト電算(処理システム)です。
つまり、DPCが入るまではこのレセ電算が使えませんでした。なぜ使えなかったかと言うと、レセ電算に入っている医療行為のコードがバラバラだったからです。
で、DPCが何をやったのかと言うと、「DPCに参加する病院は厚生労働省のレセ電算マスターを使うこと」、これを必須化したわけです。
それから、退院サマリも各病院によってバラバラですし、病院の中でも(診療)科が違えばバラバラなわけですが、これを「様式1」(診療録情報)という形で全国共通の簡易退院サマリを作った。それをやることによって、すべての急性期病院が同じフォーマットでデータを出せるようにする。これがDPCの一番大きな目的です。
【目次】
P2 → 急性期病院は40万床ぐらいが妥当
P3 → 支払いのためにDPCをつくったわけではない
P4 → 地域医療の新しいガバナンス機能が必要になる
P5 → アクセシビリティー評価のため情報を整理する必要がある
P6 → 急性期病院の評価は機能係数だけでなく複合的に
P7 → 救急をどのように評価するかが難しい
P8 → 救急は連携体制を評価しなければいけない
P9 → 救急の評価はロジックを少し変える必要がある
P10 → 「地域医療指数」はまだ明確ではない
P11 → 集約化をやっていかなければいけない
P12 → DPC病院の将来は「救急」「周産期」「がん」がキーワード
P13 → 慢性期の病院に関して、ちょっと僕は分からない