「DPCによる急性期医療の評価と今後の方向性」 ─ 松田晋哉教授の講演
■ 救急をどのように評価するかが難しい
[松田晋哉・産業医科大医学部公衆衛生学教授]
(今年度から導入される)新機能係数ですが、「データ提出指数」とか、「効率性指数」「複雑性指数」、あるいは「(診断群分類の)カバー率指数」などを入れていくことになります。
「効率性指数」と「複雑性指数」については、これから中身をしっかり見ていくという話になろうかと思いますが、ただ大学病院はかなり複雑な患者さんを診ているということが明らかですので、これをきちんと評価しなければいけないだろうと思います。
「カバー率」も総合病院が......、病床規模が大きくなればなるほど「カバー率」が高くなるわけですが、こういう(厚労省の)データが出てくるとですね、どうしてもいろんな所から苦情が来ます。
例えば、私たちが今頂いている苦情としては、「皆さんは地域の中小病院が地域で果たしている役割をどう考えるのか」という苦情が来ます。でも、これって、それぞれの病院が取れる指数が違うんですよね。
例えば、「カバー率」が高い病院というのは確かに多様な病気の診療に対応できるだけの人的資源や設備を有しています。でも、たぶんそれは現行の出来高ベースの診療報酬ではカバーし切れていない。であるから、このような「カバー率」......(で評価する)。
「カバー率」が低くても、特定の診療領域で重症患者を扱う病院群があります。専門病院など。こういう所はたぶん複雑な患者さんを診ています。それは「複雑性」という所で指数が取れることになります。
要するに、それぞれの病院の機能に応じて取れる係数が違ってきます。その積み上げとして、各病院の機能係数が決まってくるという形になるだろうと思います。
そういう意味で、複雑性も低いし、効率性も低いし、カバー率も低いと......。であるならば、たぶんそれは急性期病院ではないんだろうと思います。
今、非常に議論になっているのは「救急医療係数」ですが、これをどういうふうに評価していくか。実はまだ完全なものはできていません。救急に関しては、これから何年間かかけて精緻化していくという作業になるだろうと思います。
救急を評価する指数というのは一杯あります。例えば、(救急)搬送患者数というのがありますが、搬送されている患者さんが本当に重症かどうかは分かりません。地域によって搬送能力のキャパはかなり違います。
それから、入院している患者さんの中での(救急患者の)割合という見方もあります。要するに、数なのか割合なのか。例えば、数で見ると病床規模が大きくなれば(救急係数が)大きくなるわけですが、割合で見るとそうではありません。
あと、「時間外の患者さんをどのぐらい診ているかということで見るべきだ」という意見も救急の先生からあります。これも正しい意見だろうと思います。
それとですね、内容も問題だろうと思います。例えば、「9900」は何かと言いますと、「99」は手術なし。「00」は手術処置等1・2なしという意味です。例えば、特定機能病院は(時間外や救急搬送で)入って来ている割合は低いのですが、入っている患者さんは非常に重症だということになります。
▼ 特定機能病院は救急搬送から手術につながる割合が他の病院群(NCや500床以上の病院)よりも高く、救急に関する限り、経営効率の良い医療を行っていると言える。
そうすると、救急をどのように評価するかがなかなか難しい。ボリュームで見るのか、割合で見るのか、内容で見るのか。この組み合わせを(今後)やっていくことになるんだろうと思います。
【目次】
P2 → 急性期病院は40万床ぐらいが妥当
P3 → 支払いのためにDPCをつくったわけではない
P4 → 地域医療の新しいガバナンス機能が必要になる
P5 → アクセシビリティー評価のため情報を整理する必要がある
P6 → 急性期病院の評価は機能係数だけでなく複合的に
P7 → 救急をどのように評価するかが難しい
P8 → 救急は連携体制を評価しなければいけない
P9 → 救急の評価はロジックを少し変える必要がある
P10 → 「地域医療指数」はまだ明確ではない
P11 → 集約化をやっていかなければいけない
P12 → DPC病院の将来は「救急」「周産期」「がん」がキーワード
P13 → 慢性期の病院に関して、ちょっと僕は分からない