「DPCによる急性期医療の評価と今後の方向性」 ─ 松田晋哉教授の講演
■ アクセシビリティー評価のため情報を整理する必要がある
[松田晋哉・産業医科大医学部公衆衛生学教授]
医療の質とは何か。臨床の質、経営の質、制度の質、全部大事だろう。通常、「医療の質」と言うと、臨床の質(治療成果や安全性)ばかりが言われがちですが、やはり今日、(済生会横浜市東部病院院長補佐の)正木(義博)先生が言われたように、経営の質も大事だろうと思います。
私たちは、DPCの調査で財務諸表を集めさせていただいたことがあるのですが、残念ながら使える財務諸表は3割ぐらいしかないという状況でした。どういうことかと言いますと、損益計算書とバランスシートが合わないんです。やはり......、これではいけないだろうと思います。
一般経済が非常に厳しい状況で、医療に対してお金をより多く求めるのであれば、やはりどういう状況であるのかということを経済的にきちんとしたデータを出せなければいけないだろうと思います。
そのためには、経営の質をきちんと支払者である経済界の人たちに説明できるような体制をつくる。そのためには、単なる事務職ではなくて、マネージメント職としての医療職がどうしても必要になると考えています。
あと、制度の質(公平性、アクセス、効率性、持続可能性)です。制度の質で特に大事なのは、やはりアクセスのしやすさ。あと、持続可能性だろうと考えています。
アクセスのしやすさについて、恐らく関東に住まれている方はあまり意識されないだろうと思いますけれども、例えば放射線治療を考えたときに、実は都道府県によって非常にアクセシビリティーに差があります。医療資源の配分がものすごく悪いわけです。
例えば、横浜から東京にかけてすごい数のベッドがあるわけですが、その稼働率を見ると、5割を切っている施設がほとんどだろうと思います。でも、地方ではそうでないわけです。放射線治療も全く同じです。
こういうものをどういうふうに、このアクセシビリティーというものを評価していくかということが非常に大きな課題。そのためには情報を整理していく必要があるだろうと思います。
【目次】
P2 → 急性期病院は40万床ぐらいが妥当
P3 → 支払いのためにDPCをつくったわけではない
P4 → 地域医療の新しいガバナンス機能が必要になる
P5 → アクセシビリティー評価のため情報を整理する必要がある
P6 → 急性期病院の評価は機能係数だけでなく複合的に
P7 → 救急をどのように評価するかが難しい
P8 → 救急は連携体制を評価しなければいけない
P9 → 救急の評価はロジックを少し変える必要がある
P10 → 「地域医療指数」はまだ明確ではない
P11 → 集約化をやっていかなければいけない
P12 → DPC病院の将来は「救急」「周産期」「がん」がキーワード
P13 → 慢性期の病院に関して、ちょっと僕は分からない