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「ドキシル」出来高算定でも、厚労省の方針に変更なし

■ 高額薬剤23製品の概要1(経緯など)
 

[西岡清分科会長(横浜市立みなと赤十字病院長)]
 「平成22年度診療報酬改定(DPC)における高額薬剤の取り扱いに関する検討結果」について、事務局(保険局医療課)より説明をお願いします。

[保険局医療課・迫井正深企画官]
 医療課企画官でございます。資料「D─1─1」(高額薬剤の取り扱いに関する検討結果)をベースに説明します。

 高額薬剤の取り扱いについて、4月21日の中医協で(診療側委員から)ご指摘を受けたことも踏まえ、前回(4月22日)のDPC評価分科会で、「平成20年度改定以降、22年の改定までに新規に収載された薬剤のうち高額なもの(23製品)の取り扱いについて整理が必要である」ということをご報告して作業しました。

 概要は資料に書いてあります。01_0519DPC評価分科会.jpg ▼ 新規に保険収載された一定の高額薬剤を使用する患者については、DPCで直ちに包括評価とはせず(出来高算定扱い)、その後の診療報酬改定で原則としてDPCによる包括評価に移行することとされ(07年6月22日中医協・基本小委)、それ以降はこうした運用で対応している。
 一方、このような新規収載時に出来高とされた高額薬剤が改定時に包括評価へ移行する際の実際上の取扱いについて、4月21日の中医協総会で診療側の安達秀樹委員(京都府医師会副会長)が厚労省の対応を求めた。
 「卵巣癌の抗癌剤を今回の改定で包括の中に入れてしまった。つまり、『プラスマイナス1SDの範囲だ』という(厚労省の)判定だったと思う。しかし、実際にはDPCの点数だと医療機関は赤字になる。赤字になってやってくれるほど医療機関は経済的に余裕がない。だけど、目の前には治療の必要な患者さんがおられる。どうするのかということで患者さん方にとっても医療機関にとっても極めて悩みの大きい問題。患者さんの治療ができないことが起こらないようにお願いを申し上げておきたい」
 遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)も、「包括化のデメリットの最たるものは有効な医療が経済的な理由によって使われないということ」と指摘。「値づけの問題も含めて慎重に、かつ至急検討を進めていただきたい」と提案し、了承された。
 これを受けた翌22日のDPC評価分科会では、これまでと同様に賛否が分かれた。一部の病院関係者が出来高算定とすることを求めたが、包括払いであるDPC制度を揺るがすことになるという反対意見が相次いだ。実態に合わせて精緻化を進めてしまうとDPCが出来高払いに近づいてしまうのでケシカランという、いつもの理屈の大合唱だった。ただ、彼ら反対派の巧みなところは高額薬剤の取り扱いに関する論点で正面切って反対するのではなく、これとは別のDPC全般にわたる議論の中で反対したこと。
 齊藤壽一委員(社会保険中央総合病院名誉院長)は「精緻化が独り歩きするのは問題だ」と語気を強め、これに"出来高払い派"の小山信彌分科会長代理(東邦大医療センター大森病院心臓血管外科部長)も、「精緻化するとDPCが違う方向に行ってしまう」と同調した。「包括払い」というDPC制度の根幹を壊さないようにしたいが高額薬剤のために赤字になってしまうのは困るという趣旨の主張で、こうした議論は以前からずっと続いている。
 このDPC評価分科会では明確な結論が出せないように思われたが、卵巣がん体験者の会「スマイリー」代表の片木美穂さんらの働きかけを受けて足立信也・厚生労働大臣政務官が動いたらしい。今回5月19日のDPC評価分科会でひとまず決着する運びとなった。次回5月26日の中医協総会で正式に決まる見通し。

 

 【目次】
 P2 → 高額薬剤23製品の概要1(経緯など)
 P3 → 高額薬剤23製品の概要2(分類表)
 P4 → 分析方法
 P5 → 分析結果1 ─ 図の見方
 P6 → 分析結果2 ─ 全体の分布状況
 P7 → 分析結果3 ─ パターンⅠについて
 P8 → 分析結果4 ─ パターンⅡについて
 P9 → 分析結果5 ─ ドキソルビシンについて
 P10 → 分析結果6 ─ ソラフェニブトシル酸塩など3薬剤
 P11 → 分析結果7 ─ まとめ
 P12 → 今後の対応案
 P13 → 「他の高額薬剤を考える場合にも大変重要」 ─ 齊藤委員
 P14 → 「価格は高いが在院日数が短いのが理由」 ─ 山口委員
 P15 → 「傾きか平行移動かで今後の方向が違う」 ─ 伊藤委員

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