村重直子の眼6・井上清成弁護士
井上
「一応、彼らの弁護をするならば、昔はそれでよかったんです」
村重
「そうです、そうです。昔と同じルーチンを粛々とやり続けています」
井上
「国民のニーズが大差なくて、国のめざす方向性が概ね決まっていた時代には、それが合理的な進め方だったんだと思います。しかし現在は、日本がうまく立ちゆかなくなってきていて、日本をどうするのかという方向性、コンセプト自体を決めることの方がより重要になっています。昔のように、方向性に疑いを持たなくてよかったホンワカしたいい時代なら、手堅く技術的な詰めをしてというやり方で問題なかったんでしょう。でも、今は大外れの政策ができてしまいます」
村重
「国民の二―ズが同じ時代というお話がありました。医療の世界で言うと、国民皆が長生きしたいと思っていた時代と重なるのかなと思ってうかがいました。もちろん今も長いに越したことはないんですが、どういう状態で長生きなのかとか、命の長さよりもっと大切にしたいものがあるとか、多様な選択がある時代になってきていて、患者さんから言われることもバラバラまちまちになっています」
井上
「あるレベルまで経済的なものが満たされてきたならば、そのゆとりが教育に向かい、そして知的水準が上がれば、当然に色々な考え方が出てきます。百家争鳴の状態になるのが当たり前です。もちろん、百家がずっとそのままということではなくて、残るもの淘汰されるものがあってしばらく落ち着いて、成熟してくるとまた百家争鳴になるという繰り返しなんだと思います」
村重
「その百家の部分をすっ飛ばして、クローズドに決めたら、国民はついていけなくなりますよね」