村重直子の眼14 熊田梨恵・『ロハス・メディカル』論説委員(下)
熊田
「政治任用の形をもう少し具体的に」
村重
「現状では、役人が決めたことを実現するために、役人は審議会や検討会などで"専門家のお墨付き"を作るのは皆さんご存知ですよね。これらの委員には、役人の言うことをきいてくれる、役人にとって都合のよい人ばかり選ばれていると思いませんか。役人が委員の人事権を持っているから、委員にしてみれば役人に嫌われたら二度と呼んでもらえなくなるので、多少反論したとしても最後の結論を変えるまでは至りません。役人が決めたとおりの結論へ誘導できるわけです。これでは、国民のニーズが反映されないのも当然ですよね。一方、政治任用というのは、政治家が人事権をもつということです。政治家が、その時に必要な分野の専門家を選びます。政治家は、選挙を通して国民に人事権を握られていますから、普通なら、国民のニーズを知り、国民の声に応えようとします。国民に対して責任を取る、選挙という国民のチェックを受ける政治家がやればいいんですよ。その時その時の国民のニーズや、どんなことが問題になっていて、どんなことに国民の関心があるのか、その中でプライオリティを考えどこから手を着けたらいいかというのは政治家の判断ですよ。官僚は責任を取らないけれど、政治家がやる仕事は責任を伴うからできるんです。自分の腹心の部下(政務スタッフ)を持たず、官僚のいいなりになることで、責任を逃れようとする政治家であれば、国民がチェックして選挙で落とせばいい。選挙で選ばれて、選挙で落とされる政治家であれば、政治生命かけて判断すればいいんですよ。きちんと議論内容がオープンになり国民が正しい情報を知っているならば、政治家は国民に人事権を握られているのですから、自然と国民の方を向いて仕事をします」
熊田
「民主党の改革がうまくいかなかったなという感じがするのですけど、難しいのでしょうか。政治家が責任を持ってやっていくというのは」
村重
「政権交代前の舛添大臣にあれだけできたのにと思いますよね。官僚から上がってくる情報だけでは官僚の思い通りになってしまうので、一番大事なことは、官僚以外のルートからも、どれだけたくさん多様な情報を集められるかです。だから政治任用で、国民のためという視点で情報を集めてきてくれる政務スタッフが必要なのですよ。政治任用のスタッフがいないと、政治家1人で集められる情報量では官僚の情報量には太刀打ちできないから、政務スタッフの人数はすごく大事なんです。それを実現したのが舛添大臣の大臣政策室でした。でも舛添大臣の退任とともに解散となりました。役所の中で前例をつくったのだから、それ以降の大臣はスタッフを置こうと思えば置けるのに、どうして置かないのかなと思いますね。官僚と仲良くして官僚の言うことを聴いて、つまり官僚以外のルートの情報が大事という認識がないのなら、希望がないなあと思います」
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