村重直子の眼16・近藤達也PMDA理事長(中)
村重
「言論の自由がなければ専門家として成り立たないですよね」
近藤
「成り立たないですよ。軍隊の内務班みたいなもので、『真空地帯』になってしまう」
村重
「専門家とは相容れない立場になっちゃいますからね」
近藤
「そういう意味では、厚生労働省も研究所を作ったら良いと思うけれど、無理かな」
村重
「厚労省が抱える必要はないですね。現場に専門家は大量にいますから。情報を公開さえしてくれれば、現場の専門家がいくらでも使って、解釈とか議論とかできますからね。でもPMDAはそうはいかない、専門家がここにいてくれなければならないというのはあると思うんです。ぜひ現場の専門家と、人が入れ替わってもいいし情報が入れ替わってもいいので、それこそ自由に議論ができるようになるといいですよね」
近藤
「PMDAとしては、人材交流にも力を入れたいと考えています。ずっと一カ所で育った人間ばかりになったら、気持ち悪い組織になると思うのです。大学の医局の中にもそういう気持ち悪い医局はありませんでしたか。やはりある程度の流動性が必要だと考えています」
村重
「そうですね、色々な場所をグルグル回って、色々なセッティングの場所とか地域とかを見て、初めて専門家としても発展していくと思うので、人はグルグル入れ替わった方がいいですよね」
近藤
「PMDAだけではなく、社会全体がそういうコンセンサスを持ってほしいですね。キャリアパスとして交わっていくのが望ましいと考えています。PMDAの場合、一番のネックは企業間との就業制限で、企業に行ってはいけないとか、企業からPMDAへ就職する際も就業制限が設けられている。PMDAと企業とが人材交流することはいけないことなのでしょうか」
村重
「おかしいですね、そうやって終身雇用から逃れられない組織になっちゃうと、だんだん言論の自由がなくなっていきますよね」
近藤
「育つ人材も、あまりに狭い世界にしかいられないとなると、十二分に育たないと思うのです。流動性があるからこそ自由な発言ができるというのはありますよね」