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福島県立大野病院事件第二回公判

  検察 証人は検察の聴取に応じた段階では癒着胎盤にクーパーを使うことを想定していませんでしたが、本日の証言では、そぐ使い方ならと見解が変更されています。このような見解をもつようになったきっかけは何ですか。
  K医師 検事さんに手術所見を見せてもらったら、「そぐ」という言葉が出てきました。
  検察 その検事は女性ですか男性ですか。
  K医師 男性です。
  検察 平成19年に入ってからですか。今年に入る前は意識もなかったということですか。
  K医師 はい。

 まさにこういうのを「語るに落ちる」と言う。捜査段階でK医師にきちんと情報を示さず調書を作成していたことが、一瞬にして白日の下に晒されてしまった。

 当然、裁判所もその点は見逃さない。

  左陪席 検察から事情を聴かれたとき、クーパーの使い方をどう認識しましたか?
  K医師 切ったと認識しました。
  左陪席 本人がどうクーパーを使ったか、説明を受けなかったのですか
  K医師 受けていません。

 こうして午前の法廷が終わった。証言を終えたK医師がくるり右回りに振り返ると加藤医師が深々と頭を下げた。それに対しK医師は軽くうなずき、口が「頑張って」と動いた。

 尋問の途中で、こんなやりとりがあった。

  弁護 加藤医師が逮捕されて、大野病院産婦人科が閉鎖されたのはご存じですか?
  K医師 はい。
  弁護 当然、双葉厚生病院に患者が行ったと考えられますが、どうでしたか?
  K医師 1.5倍になりました。
  弁護 増えた0.5倍分は大野病院の患者さんだと思いますが、そういう患者さんから加藤先生の話を聞きましたか?
  K医師 はい。悪い話は何も聞きませんでした。誠実だということは何度も聞きましたが。
  弁護 加藤先生の施術について、不満は聞かなかったということですか?
  K医師 はい。

 この日の証言で、最も力がこもり、最も大きな声の「はい」だった。きっと、この「はい」を言うために法廷に立ったんだろうなあと思ったら胸が熱くなった。

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