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福島県立大野病院事件第二回公判

 たったこれだけのことだ。これだけの関与しかない人に対して、検察側は
1)大量出血の原因となった「癒着胎盤」が事前に予見できなかったのか
2)胎盤を剥離する際にクーパーを用いたのが出血の原因となったのでないか
3)輸血の準備が足りなかったのでないか
4)応援を求めるべきでなかったのか
5)胎盤剥離を続けたことが大量出血の原因でないのか
といった極めて事件の本質に関わる証言を次々に求めた。

 極論すると、4)以外については、現場におらず癒着胎盤の専門家でもないK医師に尋ねるのはお門違いである。当然こんな逆襲を喰らう。

  弁護 先生は癒着胎盤の専門家ですか?
  K医師 いいえ、違います。
  弁護 臨床経験はあるが専門家ではないと。
  K医師 はい。
  弁護 検察には専門家の意見を聞いてくださいと言われましたか?
  K医師 言いました。
  弁護 そうすると、どうでしたか?
  K医師 とりあえず何もわからないので、私の話を聴きたいと言われました。

 K医師からもストーリーの裏づけになるような証言は全く得られない。だが、検察もその程度までは元から想定内だったのだろう。開廷からおよそ1時間後、いかにも切れ者という感じ(実際、頭にそり込みが入っていた)の検事はついに切り札を出した。

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