医療事故調検討会3
「法医解剖の欠点は、結果を遺族にも医療機関にも開示できないこと。ぜひとも検察には開示できるようなシステムを考えていただきたいし、そのように学会としても働きかけていきたい。医師を免責することは一般国民の理解を得られない」
論評は質疑の際にまとめて行うとして次に福永氏。
「23区では年間1万2千件の異状死があり、そのうち医療関連のものは200件を超える程度。そのほとんどを監察医務院で解剖・死因解明している。モデル事業へ20体流れたが、ほんの一部。モデル事業へ行ったのが少ないのは、土日だと受け付けられないとか、遺族の解剖同意が必要とか、病院のモデル事業への理解が足りないなどの要因と思われる。その数少ない経験から言うと、臨床医の豊富な情報を受けながら解剖するのは(法医学者単独で解剖するより)有用だと思う。ただし、実際に調査組織を機能させるには人口100万人あたり1人の医師が必要で、24時間対応するには100万人あたり3人ということになる。その他に臨床検査技師や調整看護師も必要。監察医務院に準じる組織にならないといけないが、監察医制度が全国で徐々に縮小してきたのが実情」
続いて深山氏。
「現代の医療は非常に複雑なものになっており、死亡直後に合併症による死亡、事故死、過誤死
を振り分けるのは困難であり、まして警察に振り分けるのは不可能。よって、これらの区別なく診療関連死は全て調査機関へ届け出るべきであり、事故死、過誤死の疑いがある場合、さらに遺族が強く希望する場合、死因究明のための調査へ進むべきである。明らかな過誤に基づくと判断された事例に限って、評価終了後に「異状死」として警察へ届け出る。この際、司法解剖だと情報公開が難しく医療機関が死亡診断書を作成できないのだが、そこは医療機関に死亡診断書を作成できるようにすべきである。この際の解剖は法医解剖ではなく、原則として病理解剖で行うべきである。なぜならば、現代の複雑な診療関連死は、臨床医が参加しなければ評価することは不可能だからだ。臨床医と病理医とは日常的にCPCという形で連携しており、その手法を準用すればよい。法医学専門家と司法関係者に評価終了時点で監査を受けることとする。また医学・病理学の術後や表現は、説明に多くの時間を要するものが多く、それを遺族に解説するような医学アドバイザーの配置が望まれる。これは調査の後に続く裁判外紛争処理にも有用であろう。メディエーションというよりは報告書の解説が主な仕事である。なおモデル事業の実績から推定すると
調査機関へ回ってくるのは当初は年間400件程度で、その後、どこまで増えるのか分からないが
現在全国に病理専門医が1928人いるので、そのうち2割が年に2例解剖すれば最初は回る。調査・分析を行う人材の育成については病理学会が協力できる。今後の課題としては病理医の不足があり、病理医へのリクルートを促す仕組みが必要。いずれにしても、この制度を病理学会は全力で支えていく」
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