医療事故調検討会3
「きちんと方向性が明らかになることが肝心」
前田座長
「21条を変えないと言いすぎても、積極的に刑事訴追しようとしていると誤解されかねない。参加者全員ほぼ同じところを向いていると思うので、あとちょっと距離を詰めてもらえたら。そこで一つ法医学会と病理学会に質問だが、少し温度差があるのかな。一緒にやっていくことでお互いの利益、利益と言っちゃいけないが、うまく一致してまとまることはできるのか」
中園氏
「法医学会は病理学会の1割しかマンパワーがない。既に1人で年間50~100例解剖しているし
法医解剖自体が増えている。行政解剖を入れると年1万3千件になるのでないか。全力で協力はするけれど可能な範囲は法医の方がパワーが低い」
深山氏
「モデル事業に形態が近いのは病理解剖である。法医を排除するつもりはないが、監査の形で関与していただくのが良い。心肺停止で担ぎ込まれるものや在宅死は法医で、診療関連死は病理医が主体になるべき」
福永氏
「監察医は病理と法医が協力してやっており、現在でも1割5分は病理医。もともとは半分病理医だったのだが、腐った死体があるからといった理由で減ってきた。グレーゾーンの解剖は監察医の仕事だ」
深山氏
「法医2人に病理1人で声の大きさが違うので、あえて再度発言したい。診療関連死から切り分けられるものは監察医の仕事ではない」
凄まじいさや当てである。そして、法医学会がどちらかといえば及び腰なのに対して、病理学会の前のめりぶりが目につく。組織拡大には千載一遇のチャンスということなのだろう。前田座長の狙い通りか、21条問題の議論は立ち消えになり、事の本質とはちょっと違うのでないかというところで新たな紛争勃発である。
そして加藤委員(弁護士)が、その中に加わっていく。
「専門家の数を増やすのに学会の努力だけでは限界があるのでは。実は昭和35年から開かれていた医療制度調査会で、死因調査のために解剖体制の充実を図ることが提言されている。しかし、実際にはその提言が活かされていない」
中園氏
「本来は監察医制度を全国に設置してほしいと言い続けているのだが徐々に縮小されてきたのが現実。監察医をほしいと言いたいところだが、遠慮深く剖検センターと言っている」
深山氏
「私どもも監察医の不足は重大な問題だと認識しているし病理医の不足も深刻。学会の努力が限界に達していることは確かなので政策的な誘導を取っていただけるとありがたい」
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