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ニュース〜医療の今がわかる

医療事故調検討会3

 非常に刺激的なコメントの数々を長々と失礼した。だが、この飯田氏の発言によって突如霧が晴れるように何かが分かった気がする。

 質問の口火を切ったのは堺委員(神奈川県病院事業庁長)。
「三者に一つずつお尋ねしたい。まずは法医学会の方に。モデル事業を経験してみて、従来の監察医務院での作業に付け加えるできことはあったか」

 福永
「第三者の臨床専門家の立ち合いがあったほかは従来と変わらなかった」

 深山委員が割って入る。
「モデル事業の場合は解剖だけで評価が終わったのでなく臨床の専門家が2名加わって、そちらで評価が行われている。これは行政解剖にはなかったはずだと思っている」
 先ほどのプレゼンの時から気にはなっていたのだが、法医学会と病理学会は、なにやら鞘当てしあっているのか? 一般の方には、法医解剖(含む行政解剖)と病理解剖の違いと言われても???だと思うが)

 堺委員
「病理学会の方にお聞きしたいのは、医療アドバイザーの件。調査結果の説明を考えているのか、調査機関へ患者側になりかわって質問することを考えているのか」

 深山委員
「私どもが考えているのは、ご遺族への解説を主目的としている。モデル事業の経験から言っても、医療者が当たり前に使っている用語の意味が伝わっていないことがあり、その意味を明確に伝えることが重要だと考える」
 これは、まさにごもっともである。『ロハス・メディカル』のような媒体が成立したのも、医療者が当たり前に使う言葉が業界用語ばかりで、そのことに医療者が気づいていない現実があるからだ。

 堺委員
「飯田参考人にお聞きしたいのは、医師法21条の問題は自ずから解決の道筋がつく、と言うけれど、21条も含め整合性のある法体系の整備が必要でないか」

 飯田氏
「21条の問題というのは、広尾病院事件について最高裁判決が出て、法律家の間では見方が決着している。問題はこの後どう処理するかであり、広尾病院まで適用がなかったのだし、どんどん訴追していく考え方なんて元々なかった。調査機関がきちんと機能すれば21条の活用の余地が相対的に低下するので、そのまま置いておいても使われなくなれば問題ない」

 鼻水が出そうになった。要は法律家の裁量に任せよと言っているわけだ。ここまで法律家が一番偉いと思っていて、しかも、それを広言するというのは、ある意味凄い。自然法則に従うよりも、人間界のルールの方が上だというのだから、世の中の見え方が、私なんかとは違うと思わざるを得ない。

 さすがに堺委員も食い下がる。
「置いておいても使われなければ良いでないかということだが、それでは医療者は不安をぬぐえない」

 飯田氏
「置いておいても活用されないような状況を作ればいい」

 堺委員
「明確に区分けしていただけないものか」

 飯田氏
「法律にすべてを書き込むことは不可能であり、ある程度は抽象的なものにならざるを得ない。だから運用という問題が出てくる。おかしな運用をすれば検察も批判を受ける」

 絶対におかしな運用がないようにしたい医療者側と、少々おかしな運用があっても最終的にバランスが取れればよいという法律家の論理が全くと言っていいほど噛み合っていない。

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