「交替勤務できる周産期センター体制を」―医師確保・労働のバランスは
■労基法遵守、新生児科が壁
愛育、NICUは年間約700時間の時間外労働で協定締結
[事務局]
愛育病院に関しては、今年1月に労働基準監督署からの立ち入り調査があり、3月に是正勧告を受けた。愛育病院からは、4月の時点で結果的に非常勤医含め、24時間体制で産科医を確保できたという報告を受けており、当時の岡井会長にも相談した上で、総合周産期母子医療センターの機能を継続して頂くということをお願い申し上げたという経緯がある。
[岡井会長]
中林委員、追加があれば。
[中林委員]
皆様には大変ご心配をおかけしたけれども、都や厚労省など皆様のおかげで無事に総合周産期母子医療センターを続けさせて頂くことになった。医局の医師の勤務環境を過酷にならないようにするためには非常勤医にお願いせざるを得なく、月に6、7回は非常勤医2人の当直体制になる。院内で診療責任者をはじめ、「ハイリスクの調整がそれで果たして可能かどうか」とディスカッションが行われたが、非常勤医は実質的には当院にいた経験者。総合センターでの実績のある医師が4名ほどで、ほとんどがOB。診療責任者としてもそれなら総合センターとしてやっていけるということになった。労基署にも「それでよろしいか」と言うと「それでオーケーです」ということになった。各ご指導に沿った運営ができることになった。大変皆様にご心配をおかけした。ご協力いただき、ありがとうございました。
[杉浦委員]
中林先生には、大変なご苦労をされたと思い、心から敬意を表する。ちょっと教えていただきたいのだが、NICUの当直は労働基準法を満たすのが難しい。しかも非常勤医師の確保も非常に難しい。先生のところでその問題をクリアできたのか。
[中林委員]
とても難しい問題。労基署としては「病院全体でクリアするように」と言われた。産科に関しては、今申し上げたような形でおおむねクリアすることができるが、NICUに関してはどうしてもクリアできなかった。ということで、36協定を結び、年間の(時間外労働時間の上限)360時間を超えるということで、720時間ぐらいで締結し、「努力する」ということになった。労基署としても「すぐには無理であろう」とご理解を頂いたというところ。
[杉浦委員]
根本的な問題で、一つの施設で解決する問題ではない。今の社会保険制度は施設にお金が流れるが、個人にはお金が流れないので、この協議会で解決に向けて議論していただければ。
[杉本委員]
日赤の事情も紹介したが、労基署の36協定というのは、医師だけ例外という形で今まで協定していた。しかし、労基署は医師の過重労働を問題にしているので、実際のところ、36協定は結ばれていないというのが現状。時間外労働をするに当たって、労基法を満たしていないという現状の中、各科の事情に応じた勤務体系を調整中。日赤でも一番難しいのは新生児科で、新生児科医の過重労働をどうしていくかというのが一番の難題。小児科がある程度協力するという体制で、研修医もフルに使って何とか埋め合わせようと努力をしている段階。各科の調整ができたことろで36協定を改めて結んで届け出る、という段取りで院内の調整を進めている。
日赤も12月に移転するが、お産の制限はしない。制限をするのは母体搬送で、12月に入ったら行う。NICUもすべて移転するので、負担を少なくするという意味で。スーパー母体搬送に関してはまた相談したい。
[岡井会長]
基本的に「医師不足」というのが医療を日本全体で考える際の一番のポイント。国の方針が180度転換し、医師の数を抑えようとする方向から、増やすという方向になった。将来的に良くなるのは間違いない。産科は入局者は増えてきて、増え始めたら増えると思うが、やめる年代の人が多い。新生児を担当する人が少ないというのは受け入れに関する一番の問題。新生児の方も学会が本気でがんばってやっているし、一つのきっかけは新生児科標榜。これが実現すると志す人が増えるのではないかと楽観的に見ている。もちろん今は大変な時で、すぐ増えるというわけにはいかない。数年のうちに増えてくるだろうと思っているので、皆で頑張っていきたいと思う。